前に進め、30オトコ。 #09

30オトコ、どう生きる?(後編)

  • Shiraiwa gen profile2
    白岩 玄
    作家
  • 141014 pr
    大貫 元彦
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 コミュニケーションプランナー/「THINK30」主宰

前編に続き、「THINK30」の大貫元彦が作家・白岩玄さんにインタビュー。同世代の二人が30オトコの等身大の本音を語り合います。社会における男性の立ち位置は?
そして、30オトコの行く末は? 30オトコのこれからの生き方を探っていきます。

 

社会との新しい折り合い方を見つける

大貫:男性だから享受できているものがあるならば、それを手放すのは簡単なことではないですよね。見栄とか、プライドとか世間体とか色々なものが邪魔をしたり…。

白岩:とことん自分を問い直して、手放してみることで、「男性って、実はそういうことで悩んでいたんだ」といったように、初めて理解してもらえることや得られるものもあると思うんですけれどね。

大貫:過去の女性たちがそうだったように、でしょうか。

白岩:そうです。今の社会にある、いわゆる男性性というものが中和されて、社会との新たなる折り合いのつけ方も見つかるのではないでしょうか。今持っているものを手放さずにもっと欲しいっていうのは、ずるいし、男の甘えだと思う。
だから僕は、これから機会があれば男性ならではのずるさとか、内面とか、そういったあまり語られていない部分を書いてみるのもありかなと思っています。

 

手放した先にあるもの

大貫:白岩さんがおっしゃる「手放す」ことは、30オトコの新しい生き方にもつながっていくと思いますか?

白岩:昔なら考えられなかったけれど、主夫になる男性も今はいますよね。
従来の男性像をくつがえしていると思うし、僕はそういった男性を否定したくない。男性の生き方に多様性があるとするならば、そういった道もあって然るべきですから。
男だからといって、決して企業戦士にならなくてもいい。それよりも、自分と戦うべきなのかなと思います。

大貫:男性の男性たる生き方、つまりは従来のステレオタイプな男性のあるべき姿みたいなものは、どうしても根深くあるのだと思います。
でも、そこを開かずして「男にも新しい生き方があるのだ」と、周知させるまでにはいかないんですね。

白岩:だから30オトコには、実はまだまだ開拓できる余地があるんですよね。新しい男性像が広がるまでには相当の時間がかかるけれど。

大貫:社会から共感を得られたり、30オトコを軸にしたうねりも生まれる可能性があるということですか?

白岩:そうですね。大貫さんが先ほど「30オトコはマーケティング的に取り残されている」と言っていましたが、世間の見方が変われば、そこに消費も生まれると思いますし。消費のあるところに人々は注目するわけですから。

大貫:広告・コミュニケーションに従事する立場から見て、30オトコは世間から相手にされにくいという面は、事実としてあります。企業のマーケティングも現状そういうことなのでしょう。
しかし定量的なリサーチで導かれた結果は「現状」なのであって、リサーチ結果の少数派の方に「今後のヒント」が隠れているような気がするんです。
だから30オトコにはもっと盛り上がるポテンシャルが潜んでいると思っていますし、「THINK30」では、その糸口を見つけて、うねりを生み出していきたいと思っています。

 

30オトコ、自分のあり方を見つめ直す

大貫:「THINK30」の調査では、「30オトコにはロールモデルがいない」という結果が出ています。白岩さんのお話を聞いていると、ロールモデルを見つけてその生き方をなぞるのではなく、個としてどうすべきかを問われる時代が来ているのかもしれないと感じます。

白岩:だから今、男性のロールモデルなんて、いてもいなくてもいいとどっちでもいいと思うんですよ。自分には何ができるのか、どうしていきたいのかを見つけることの方がずっと大切。
ただ、男って、世間から認められて初めて自信が持てるようになるから、ちょっと厄介で。

大貫:たしかに認めてもらいたいという願望はありますよね。認められたいと強く思うのなら、そこに向けて必死に努力しなくてはいけない。何かを犠牲にしてひとつのことに努力し続けるには覚悟が必要です。
けれど、その覚悟を持つべきかさえ決められない30オトコもまた、多いような気がします。
正解の無い時代にいったいどうやって生きていったらいいのだろう、と葛藤する様子も、THINK30の調査からは見えてきます。認められれば次のステップに進めるのに、と。

白岩:本当にそう。僕もどうしたらいいのか、教えてもらいたいですもん(笑)。

大貫:仕事をしていると、うまくいかないことや結果が出せないことがありますよね。
でも、「一所懸命」という言葉があるように、そういうときほど目の前にある課題に集中して、じっくり向き合い続けることが必要なのかもしれません。かなりしんどいですけれど。というのは、しばらくはうまくいかないことが続いたりすると、つい「ここではないどこかへ行きたい…。」「方向転換をすればうまくいくはずだ!」と思ってしまうから。
でも、なんとかしようとして慌てていろいろなことに手を出しても、何も実らないというか。

白岩:ああ、そうかもしれませんね。

大貫:とはいえ、上司や仲間など、一所懸命っぷりに気づいてくれる人もいるわけで、その懸命さを見て声がかかり、次のチャンスにつながることもある。根性論のようになってしまうけれど、一つのことに取り組んでいれば、自分が最初に考えていたものとはまったく違う方向から認めてもらえる可能性もあったりするのかな、と。

白岩:それから、自分がこれまでいかに生きてきて、何ができるのか・したいのかをあらためて問い直すことも大切ですよね。自分が蓄積してきたものを生かした方がうまくいくことって、あるはずですから。もしかしたらそれは「男としてどうなの?」って思われることかもしれないし、従来からある男の見栄やプライドを横に置かなくてはならないかもしれない。
社会進出し始めた女性が「どうして女性なのに働くの?」と言われた時代があったように、ネガティブに思われることであっても、ポジティブになるまで考えなきゃいけないんです。
30オトコが戦うべき相手がいるとするならば、社会じゃなくてまずは自分自身。それから始まることが、たくさんあると思うんですよね。

<了>

プロフィール

  • Shiraiwa gen profile2
    白岩 玄
    作家

    1983年、京都市生まれ。
    2004年『野ブタ。をプロデュース』でデビュー。第41回文藝賞を受賞。
    05年、同作は芥川賞候補になるとともに、日本テレビでドラマ化され、70万部を超えるベストセラーとなった。他の著書に『空に唄う』『愛について』『R30の欲望スイッチ〜欲しがらない若者の、本当の欲望〜』『未婚30』。

  • 141014 pr
    大貫 元彦
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 コミュニケーションプランナー/「THINK30」主宰

    2008年電通入社。自動車会社担当営業として、企業ブランド戦略策定やコミュニケーションプランニング業務を担当後、電通総研で、生活者インサイト分析を起点とした事業戦略策定や商品開発コンサルティングを担当。
    2013年からリクルートホールディングスと電通の共同事業である株式会社メディア・シェイカーズに出向。30オトコを応援するプロジェクトチーム「THINK30」を立ち上げ、現職。

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