セカイメガネ #33

手を使うのにフットボールなんて

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    Mario D’Andrea
    マリオ・ダ・アンドレア
    電通ブラジル チーフ・クリエーティブ・オフィサー

ブラジルの伝統としてこれまでわれわれと長く情熱的関係が続いていたのに、つい最近ギクシャクしてしまったものがある。サッカーだ。

2014年はブラジルの歴史で永遠に忘れられない年になった。ワールドカップ準決勝でドイツに惨敗した悲劇は、その日だけでは終わらなかった。ブラジルサッカー衰退の明確な象徴になったのだ。代表チームに対する国民の関心、いやサッカーそのものへの関心がすっかり色あせた。事実、わが国のリーグ戦チケットの平均売り上げは毎年10%ずつ落ちている。1試合当たりの観客数は、われわれほどサッカーの伝統を持たない中国、米国より少なくなった。

なぜか?

理由はいくつも考えられる。一番響いているのはスター不在だ。ブラジルのヒーローはいつもスポーツ界から現れた。F1のアイルトン・セナ、全仏オープン3度制覇のグスタボ・クエルテン。サッカー界からはもっと大勢のヒーローが生まれてきた。けれど、今はどうか。われわれのハートを熱くするヒーローの名が浮かばない。サッカーに魅力が足りなければ、人は夢中になる対象を変える。隣の芝生はいつだって青い。

新現象が起きている。ブラジル人がサッカーでなくアメリカンフットボールに心を奪われ始めた。11年と比較してスーパーボウル視聴者は800%増加した。プレーオフ視聴者数も13年から14年に22%増加した。スーパーボウルを放送したブラジルESPNのハッシュタグは世界最多ツイート数を記録した。
ブラジル人は今やアメリカンフットボールのスーパースター、トム・ブレイディを自分の国のヒーローであるかのように語る。トムはブラジル出身のスーパーモデル、ジゼル・ブンチェンの夫でもある。少年たちはごく自然にアメリカンフットボールの試合を語り、ひいきチームを応援している。サッカーを愛する日々に逆戻りすることは、もはやできないような気さえしてくる。

ひとりのブラジル人として言わせてもらいたい。試合中99%の動作を手で行うスポーツを、なぜ「フット」ボールと呼ぶのか。私は非常に困惑している。誰か、米国人に教えてやってくれないか。フット、足というのは身体の下の方にあるものだ。そんなに上の方についてるものの名ではない、と。

(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)

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(イラストも本人)

プロフィール

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    Mario D’Andrea
    マリオ・ダ・アンドレア
    電通ブラジル チーフ・クリエーティブ・オフィサー

    2014年、現在の役職(社長兼務)に就任。08年ブラジルの広告賞で最優秀クリエーティブ・ディレクター、10年ブラジル業界誌でクリエーティブ・プロフェッショナル・オブ・ザ・イヤーに選出。カンヌライオンズでブラジル代表として3回審査員を務め、14のライオンを受賞。現在は自動車、精密機器、食品などのクライアントを担当。

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