DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ #33

即興コメディをビジネスに生かす7つの方法

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    京井 良彦
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター  プランニング・ディレクター

今回は、昨年の全米ベストセラー「Yes, and」の翻訳本である『なぜ一流の経営者は即興コメディを学ぶのか?』(ケリー・レオナルド、トム・ヨートン著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を取り上げましょう。

本書は、シカゴの名門コメディ劇団「セカンド・シティ」の即興コメディをビジネスに生かす方法を解き明かしたもので、ツイッター社CEOのディック・コストロ氏や作家のダニエル・ピンク氏らが絶賛しています。

もはや従来のビジネススクールで学べるスキルだけでは、経営に対応できない

セカンド・シティが誇る即興コメディは、日本のお笑いでいう、アドリブコントやフリートークのようなものでしょう。
セカンド・シティでは、劇場での観客の状況によって次々と笑いを生み出していくこの手法を、「Yes, and」というビジネスに応用できるトレーニングプログラムにしているのです。

ビジネスの世界でも「即興」の手法が注目されるのは、グローバル化やテクノロジーの進化で、世の中の環境変化があまりにも速くなっているからでしょう。
もはや従来のビジネススクールで学べるスキルだけでは、経営に対応できなくなってきているというわけです。

これらに伴い、僕たち一人ひとりがビジネスシーンで求められるアウトプットも変わってきています。
例えば、本書ではグーグル社が人事採用の際に求める資質について触れられています。
それらは「臨機応変に仕事ができる能力」「権力を譲ること」「他者が貢献する機会を作ること」「失敗から学ぶことができること」だといいます。
そしてこういった資質は、即興のスキルを学ぶことで身に付けることができるというわけです。

即興コメディをビジネスに応用するには

本書では、即興コメディのスキルをビジネスに応用する手法が、以下の7つで解説されています。

1.Yes, and(イエス、アンド):
誰かのアイデアをノーと否定せず、肯定した上で、必ず次のアイデアを付加していくというスキル。これこそが即興スキル全体の基礎になっているもの。

例えばコメディでいえば、誰かが
わあ!こんなに星が出ている空って、今まで見たことないな
と言えば、次は
そうだね。月から見る風景って、やっぱり違うねえ
(p.55)

などと、初めのアイデアを肯定したうえで、次に展開していく。この手法によって、始めは誰も思いつかなかった予想外のアイデアにたどり着くことが可能になる。

2.アンサンブル:
チームの目標を個人の目標より優位におき、チームアンサンブルの中で活躍することで個人がスターになるスキルをビジネスに適用する。

3.共創:
観客との対話からストーリーを展開させるスキルを、ビジネスで共創が最も必要とされる現場、例えばコンテンツや製品開発、マーケティングやプロモーションに適用する。

4.真実性:
「権威に物申す」ことを笑いに変えるコメディのスキルを、ビジネスに適用する。現状の問題を偽ることなく、チームに明らかにしながら、次の一手を生み出していく。

5.失敗:
創造性にとって一番の脅威は、失敗することへの恐れ。これを攻略しなければチャレンジはできない。そのためには失敗に役目を与えることが大切だ。コメディでは失敗は当たり前。そして失敗を次の笑いに変えるスキルがある。これをビジネスに適用していく。

6.フォロー・ザ・フォロワー:
チームに所属するものであれば、誰がリーダーシップをとっても良いと認めること。おのおの固有の専門知識をチームに提供するナレッジワーカーたちが、必要なタイミングでチームを指揮することで成功は実現する。

7.話を聞くこと:
過去を振り返ったり、未来へ行き急いだりするのではなく、現在何が起きているかに耳を傾ける。即興コメディの担い手はみんな良い「聞き手」である。自分の意見をはさむチャンスを狙いながら聞くのではなく、相手を理解しようとして話を聞くことで次の創造につなげる。

以上の7つで、実際のビジネスに活用できる「即興」のテクニックが理解できるというわけです。

「何もないところから何かを創造する」ことが期待されている

今、僕たちエージェンシーは、名刺の肩書が何であろうと、従来型の戦略立案や課題解決だけでなく、「何もないところから何かを創造する」ことが期待されるようになっています。
しかも、より効率的にコミュニケーションを取りながら、スピーディーにアイデアを出すことを求められています。

そんな環境では、クライアントから相談を受けて持ち帰り、企画を組み上げて提案するだけでは、期待に対応できなくなっているのかもしれません。
僕の周囲でも、クライアント、あるいはクライアントの顧客の中に入っていき、その場で一緒になって、次に進む道を見つけていくようなスタイルが求められる場面も増えています。

「何もないところから何かを創造する」
その要望に応えていこうとするならば、本書で学べる即興コメディのスキルには、何らかのヒントがあるように思います。

【電通モダンコミュニケーションラボ】

プロフィール

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    京井 良彦
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター  プランニング・ディレクター

    1969年生まれ。大手銀行でのM&Aアドバイザーを経て、2001年電通入社。
    営業局でグローバルブランドや官公庁など多岐にわたるクライアントを担当し、現在はソーシャルメディアやデジタル領域を中心とする戦略プランニング、コミュニケーションデザイン、共創マーケティングを手掛ける。東京都市大非常勤講師。著書に『ロングエンゲージメント』(あさ出版)、『つなげる広告』(アスキー新書)などがある。

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