マーケティングROI最前線 ~アナリティック・テクノロジーが切り開く未来~ #02

Karl Weaver × 中川 健 (第2回):
D2Dが推進するクライアントサービス
とコラボレーション展開

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    Karl Weaver
    Data2Decisions グローバルCEO
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    中川 健
    株式会社電通 データ・テクノロジー・センター
Data2Decisions(データ トゥー ディシジョンズ、以下D2D)とは?
イギリス・ロンドンを拠点に、電通イージス・ネットワーク(DAN)の一員としてデータ分析に基づくマーケティングコンサルティングサービスをグローバル展開。クライアントのマーケティング投資効率(ROI)を最大化するために、 Marketing Mix Modeling (マーケティング・ミックス・モデリング、以下MMM)などのエコノメトリクス(計量経済学)をはじめ、最先端のアナリティック・テクノロジー(分析技術)の開発と運用を行っている。
 
*MMMは、売り上げデータとメディアなどのマーケティング活動データを用い、売り上げに対する効果とROI を分析するエコノメトリクスモデル。

 

前回に続き、このたびD2DグローバルCEO、カール・ウィーバー氏が来日したのを機に、クライアントのマーケティング投資効率を最大化するアナリティック・テクノロジーの最先端と今後の動向について詳しく聞きました。聞き手は、統合データ・ソリューションセンターBI推進部の中川健部長。

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迅速なデータ分析で、年間2億ドルの増収予測をはじき出す

 

中川:D2Dのクライアントサービスについてですが、どのようなクライアントと、どのように作業を進めているのか、事例を交えてお伺いできますか。

ウィーバー:D2Dは、エネルギー、金融、エレクトロニクス、衣料、飲料など、さまざまな業界のアカウントを持っていますが、いずれの企業もビジネスを成長させる適切な手段を模索しています。どの領域の成長が期待できるのか、成長を左右するのは価格なのか流通なのか広告なのか、といったことは常に重要なテーマになっています。
FMCG(日用消費材)の大企業の例ですが、その会社のCEOは成長速度が十分ではないことを懸念していました。さっそくリサーチをしてみると、比較的大きなマーケットにおいて5つの主要ブランドの成長が鈍化していることが判明しました。そこで第1ステップとして、全世界ではなく、このマーケットの1~2の特定のエリアにフォーカスし、この5ブランドについて分析を行いました。前回触れたPoleStar(ポールスター)というツールを使ったのですが、売り上げデータを用いてどのマーケティングチャネルが機能しているか、価格、流通、商品ラインによってどのような影響があるかを素早く分析し、どの程度の成長が見込めるかを予測しました。結論として、年間約2億ドルの増収が見込めることを確認でき、加えて、その潜在的収益増を実現するためのアクションプランも示すことができました。

中川:D2Dがグローバルにコラボレーションする場合は、ロンドン本社とクライアントの本社が直接やりとりをするのでしょうか。

ウィーバー:クライアントがどこに拠点を持っているかで異なりますが、重要なクライアントはほとんどの場合ロンドン本社が関係しています。例外的に、本社がアメリカにある企業の場合にアメリカのオフィスが主導することもあります。もちろん、ローカルなプロジェクトもあり、例えばスカンジナビア市場で仕事をする際には、ロンドン本社が必ずしも関わるとは限りません。

Karl
 

クライアントニーズに応える“フルカスタマイズサービス”

 

中川:D2Dのクライアントポートフォリオの中で、どのようなクライアントを獲得するのかといった点でポリシーはありますか?

ウィーバー:我々は、積極的に変化に取り組もうとする意欲のあるクライアントには、常に興味を持っています。 最優先にしているのは、クライアントを最良の意思決定に導く ことです。クライアントもD2Dのそういう姿勢を評価してくれています。メディア環境が複雑化しクライアントのニーズも激しく変化する中で、我々分析する側もクライアントの変化に合わせていくことが要求されます。我々のツールを進化させることにもなるので、そういう意味ではたえず積極的にこのような変化に取り組もうとするクライアントは我々にとって貴重な存在です。

中川:個々のクライアントに対してサービスをどのようにカスタマイズしているのですか?

ウィーバー:我々のサービスは、言ってみれば、フルカスタマイズサービスなのですが、特に多くのカスタマイズを必要とするクライアントとは、直接ミーティングを何度も重ねます。ファッションブランドなどは、創造性が重視されるので、一見過去のデータとは無縁のように思われるかもしれませんが、データはけっして創造性の邪魔をするものではありません。むしろより良い仕事ができるようにサポートするものだということを理解してもらっています。あるクライアントにとっては、FacebookやYouTube、オンライン動画サービスなどの利用やその影響力が課題になり、また他のクライアントではROI に関心が集中します。複雑な消費者の購買プロセスを理解する必要があるほど、カスタマイズが必要になります。また、我々は、MEP(前回記事)のようなソフトウエアのカスタマイズも行います。クライアントが望めば、クライアントの所有するソフトのようにカスタマイズすることも可能です。使用するソフトが独自開発したものであり、知的財産権を所有しているので、そのようなカスタマイズも可能になるのです。

中川:電通イージス・ネットワークの一員として、他のエージェンシーとはどのようにコラボレーションしているのでしょうか。

Nakagawa
 

ウィーバー:ケースバイケースですが、メディアプランニングでは主にCarat(カラ)、Vizeum(ビジウム)とコラボレーションしています。その際にPoleStarのようなツールはプランナーの意思決定プロセスでとても役に立ちます。また、プランナーとクライアントがビジネスの成果について議論する機会を提供します。メディアコストだけでなく、ブランド認知の向上や売り上げに対するキードライバーは何かといった議論をします。他のエージェンシーとは時間をかけて適切な関係を築く必要がありますが、CaratやVizeumとコラボレーションする場合は、まず初期の計画立案の段階でサポートし、また実施段階では予測と対比して結果データを検証し、最終的にメディアなどマーケティング活動の効果を評価するといった、すべてのプランニングサイクルでサポートしていきます。マーケティングを最大限に活用してさらに収益性の高い方法を探すことによって、クライアントのビジネスが成長できるよう、協力するわけです。
OOHの分野ではPosterscope(ポスタースコープ)とコラボレーションして、様々な面白い開発をしています。この領域ではデジタル化が進み、より詳細なデータが扱えるようになっています。このようなデータを使い、クライアントにとってより最適な屋外スペースをより早く買うためのアルゴリズムを開発するといった形でサポートしています。我々はバックグラウンドで、彼らのサービスの改良やイノベーションに寄与しているわけです。
他の電通イージス・ネットワークの関連会社とも、様々な形でコラボレーションを始めています。電通イージス・ネットワークにThe Story Lab(ストーリーラボ)という、クライアントのためにコンテンツを開発するとても重要な事業領域があります。コンテンツをどう評価するかは、とても複雑な要素がからんでくるので、現段階ではまだ明確な答えが出ているわけではありませんが、いずれクライアントからもコンテンツ評価に関する質問をされるときがくるはずですから、それに備えて現在は準備を進めているところです。

様々な分析テクニックのコンビネーションが鍵となる

 

中川:コンテンツマーケティングの評価指標はどのように考えていらっしゃいますか?

ウィーバー:今後、様々なメディアを横断した指標が新たに出てくるのではないかと思います。一つは、ブランド認知、購入・利用意向、第一想起など消費者調査がベースの指標です。今も、特定のマーケティングが機能しているかどうかを判断するためには必要なものです。ただ最近は、ウェブの行動データが豊富にあります。ウェブ上では、個々人の反応のスピードが速くより詳細なデータが得られますが、一方で解析が非常に複雑になり、実際に利用するのは容易ではありません。しかし我々は、デジタル分野におけるウェブ上での人々の反応を、他メディアの指標と関連づけることに成功しています。どちらの指標を用いるかは、コンテンツマーケティングが何を目指しているのかによります。もちろん最終的に重要な指標は売り上げですが、今は、ウェブ行動データもしくは消費者調査をベースにした指標のどちらかフィットする方を選べばいいと思います。

Karl2
 

中川:デジタルメディアやデジタルマーケティングの方がデータ分析に向いているように思うのですが、どうお考えですか?

ウィーバー:D2Dのようなビジネスでは、デジタルは大変大きな意味を持っています。今、市場分析は、マーケットデータを利用する方法と、個人レベルのデータを利用する方法の2つに大きく分かれます。メディア環境や消費者の行動が複雑化するほど、明らかに個人レベルのデータが中心となってきます。ただし問題は、最初からその分野に飛び込むわけではないということです。気候や経済などのインパクトを理解するためにマーケットデータが果たす役割もまだまだあります。方向性としては、デジタルデータを分析の枠組みに利用しつつ、エコノメトリクスや消費者調査といったテクニックと組み合わせて提供することが、クライアントの今と将来をサポートすることになります。どれか一つのテクニックを選ぶのではなく、様々なテクニックのコンビネーションが鍵となるはずです。

※第3回は6/12(金)に公開予定です。

プロフィール

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    Karl Weaver
    Data2Decisions グローバルCEO

    2003年にData2Decisions入社以来、数々の世界トップ企業のポートフォリオを組み立て同社の事業拡大に貢献し、2012グローバルCEOに就任。
    前職はMindshare’s Advanced Techniques GroupのManaging Partnerで、特に自動車、流通・小売業、家庭用品、金融・保険、メディアなどを専門とする。
    IPA(イギリス広告業協会)にて金賞を受賞。ほか、2015年に発足したカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルのCreative Effectiveness Advisory Schemeのアドバイザーや、英国Warc社が主催するThe Warc Prize for Connection Strategyの審査員に選出されている。

  • Nakagawa profile
    中川 健
    株式会社電通 データ・テクノロジー・センター

    1993年入社。
    マーケティング局、メディア・マーケティング局、経営企画局、電通ホールディングスUSA、電通イージス・ネットワーク事業局などを経て現職。電通イージス・ネットワーク(DAN)と電通本社のデータ・ソリューション領域でのシナジー創出を担当。

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