新規事業を成功させる秘訣とは #05

Airレジの将来と今後の戦略:リクルートライフスタイル 大宮英紀氏インタビュー (前編)

  • Oomiya profile
    大宮 英紀
    株式会社リクルートライフスタイル 執行役員
  • Profile hirakawa
    平川 健司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室 室長

Airレジ対談の最後は、リクルートライフスタイルの大宮英紀氏をお迎えし、Airレジの将来像や今後の戦略、リクルートライフスタイルと電通で今後行っていきたいことなどについて、電通の平川健司氏と対談します。(第1回目対談はこちら→前編後編/第2回目対談はこちら→前編後編

 

Airレジの今後の展開と期待されるサービス

平川:Airレジが誕生して約1年半。多くの支持を得ている中で、今後はどのような展開を行っていこうと考えていますか。

大宮:国内と海外という2つのテーマがあります。国内ではリクルートが持つ多数のアセットのシナジーを出しながら、当たり前のサービスとして広く使われるためにもっと浸透度を上げていく必要があります。マネタイズがなければ継続性は生まれないので真剣に考えていますが、Airレジというプロダクト自体は無料でいこうと決めています。

現在は日本ほどアセットがない海外でも、リクルートグループは、2020年までに人材サービス領域でグローバルナンバーワン、2030年までに販促領域でグローバルナンバーワンというターゲットを設定し、海外売上比率も引き上げていきたいと考えています。
その販促領域では、Airレジの海外展開によって、決済や支払いの分野で目標達成への貢献に挑戦していきます。とはいえ、海外のお店の皆さんが喜んで使いたくなるサービスにするのがどんなことを差し置いても第一であることには変わりません。

平川:飲食や美容などの生活に根ざしている領域には良いサービスが非常に多いのに、これまでは十分なアクセスができておらず、リクルートさんも送客を行っているだけの状態だったと思います。
それがAirレジで根本的に変わって、ベースとなるサービスにどのようなサービスを付加していくかというところまで整備されてきました。
これからナショナルクライアントがキャンペーンをかけていく際は、中小小売業のデータをトラッキングでき、彼らと連携してより適切なターゲットに、適切なタイミングで商品を出すことができるようになります。販売促進とマスマーケティングの中間のような領域ができている中で、電通としてもリクルートさんと一緒に、次のフェーズの新しいプロモーションを考えていきたいですね。

電通 平川健司氏

大宮:おっしゃるような可能性はあると思います。ウェブの世界とリアルの世界を分けたときに、ウェブの世界では、Cookieを使ってどのサイトを訪れたかなどのトラッキングが当たり前のように行われています。個人が特定されない形でサイトの訪問履歴などから趣味嗜好を見ることができ、加えて、「じゃらんnet」のようなウェブサイトのログイン情報からも、過去の宿泊情報や購買履歴などのより詳細な情報を得ることができます。

一方で、リアルの世界ではトラッキングなどが行えません。
しかし、ウェブとリアルは基本的には境目がなくなってきていると考えていて、やり方によっては、リアルで何を見て来店して物を買ったかがある程度わかるようになってきています。
たとえば、テレビでトレンドやニーズを喚起したのに合わせて、店舗側でそのトレンドやニーズに合わせた商品を用意しておくような場合、そこにAirレジがあれば、もっと深いプロモーションを作っていけると思いますね。

平川:大規模な流通業では、チェーン展開の中でプロモーションを計画し、メッセージを発信し、店頭で伝えることができます。しかしこれまでは、中小規模の個々のお店に情報をしっかりと到達させることができなかったため、リテールの現場で日常の中の一般消費者の興味を受けとめることは難しい状況でした。Airレジでリテールのお店に情報を出せれば、それに反応して売り方を考えてくれるお店が出てくるようになると思います。

 

日本文化や地方の魅力を伝えるプラットフォームになり得るか

大宮:個人的には、非言語化ということを、もっと推進していきたいと考えています。言語化していけばいくほど、機械に取って代わられていくようになります。感性や、おもてなしなどのコミュニケーションは非言語的なものなので、それをやれれば、日本が他と差別化でき、面白い世界ができていくと思いますね。しかし、おもてなしに注力するためには、それ以外の業務を楽にしなければなりません。チェーン店なら仕組み化を行うことで業務負荷を低減して接客の向上を目指すことができますが、単体店舗がそれを行うのは、ほぼ無理です。
もっと日本が多様性を広げるためには、単体店舗がもっと元気になる必要があると我々は考えていています。Airレジによって、これまでチェーン店しか持てなかった仕組みを圧倒的な安価と導入のしやすさで単体店舗に利用してもらうことができるのです。

平川:Airレジチェーンのようなものができるということですね。

大宮:仮想的には、そうですね。フランチャイズの場合は、ブランド貸しやシステム貸し、ノウハウといったさまざまなものがありますが、ある程度それに近い形でバーチャルにつながることができるようになることを想定しています。業務の負荷をなくし、メディアとの組み合わせで効果を出したり、成功事例などを共有して、非言語的なおもてなしなどの人間らしいコミュニケーションを含めたところに注力できるように支援していきたいと思いますね。

平川:気配りやカワイイといったものは、日本を訪れる外国人の人たちに言葉では表現しづらく、カワイイをどこで体験できるのかを示さなければならないし、気配りに感動したコメントをさまざまなところに残していただく必要があります。
このようなデータがたまっていくと、データを抽出してランキングを付けたり、コメントを拾って特集を作ることができます。外国人の方々にお店に行ってもらえるように情報をちゃんと作ってアクセスできるようにして日本のお店でちょっとした日本の文化に触れて喜んでもらえるようになればいいですね。2020年や2030年に向けて、もっと幅広く、さまざまな形で日本を体験してもらわなければならないと思います。
一方で、地方創生の課題もあり、商店街単位や観光地単位でどのように元気にしていくかを考えていく必要がありますが、我々も協力していくので、ぜひやっていただきたいですね。

大宮:地方の課題は、リクルートが得意にしているところでもあり、他の会社よりも大事にしているところなので、やっていきたいですね。

先日、海外のカンファレンスに出席し、はかまを着て発表を行いました。20人くらいのスピーカーの人たちがいて、はかま姿の自分を見て「おお、日本カルチャー!なんてクールなんだ!」と言っていましたが、スピーカーのアメリカ人やオーストラリア人は、経済は発展していても歴史はまだ浅い国なので、改めて、日本は歴史が積み重なった国なんだと感じることができました。そのような文化を海外の人たちは非常に喜ぶし、丁寧な対応や日本らしさについて、地方も含めてどのように協力できるかを考えていきたいと思います。

一方で、日本の国力が弱っている気がします。昔は、アメリカに日本の工場が数多くあるなどの形で存在感を示せていましたが、今は中国などに取って代わられて、日本の存在価値が相対的に薄れていることを感じます。規模の経済を追うことは資本主義の中で大事なことですが、文化的な豊かさでも差別化していかないと、国としての認知度も高まっていかないですよね。我々の仕組みや営業力とともに、電通さんに協力してもらうことによって、こういった部分も支援していければ非常に面白いと思います。

リクルートライフスタイル 大宮英紀氏

 

Airレジの普及と電子決済の可能性

大宮:経営者の人たちは、Airレジを入れることでコストダウンでき、将来的に売り上げも上がると説明すれば理解してくれますが、店長やスタッフなどの現場で日々働いている人は売り上げが上がると説明しても、忙しくなるからうれしくないと言われてしまうことがあります。その人たちには、使いやすさや、便利になって日々の業務が楽になるというメリットを説明しなければなりません。経営者と現場の方々は違う視点を持っており、そのどちらもこのサービスで解決できることをアピールしなければ、Airレジが当たり前に使われている世の中の実現はできないと考えています。マネタイズに先立ち、まずは使いやすさや導入しやすさを磨いて、サービスとして育てていきたいと考えています。本来はもっとたくさんの可能性を秘めているサービスだと信じてやっていますね。そうでないと、日々のプレッシャーの中で、新たなことにチャレンジするモチベーションになり得ません。

平川:便利になって、使いやすくなるためには、現在の日本の電子決済比率が低いことが課題となると思います。電子決済や会計管理をどう提供していくのでしょうか。Airレジを使えば中小規模の店舗でも簡単に電子決済や会計管理が行え、結果的に来店者が増え、売り上げの管理や報告が行いやすくなるように、今後5年でどうしていくのか、その中で我々がどう協力できるかをしっかりと考えなければなりません。

大宮:決済というか金融はテクノロジーととても相性がよくて、貨幣が担う役割は何も硬貨や紙幣である必要は全くなく、電子化して手軽に貯めたり、引き出したり、交換したりできればいいのです。日本だとおサイフケータイがそうですし、海外では話題になっているApple Payもそうですし。
ただ、一般消費者が便利になる一方で、お店側は電子マネーやクレジット用の端末をサービスが増えるたびに購入しなければならず、小規模な店舗では置く場所がない、電源コンセントがないという問題も発生します。やはり1つの仕組み、1つの端末でどんな支払いも受け入れられるようにし、オンラインでソフトウエアのバージョンアップができるようにしないといけないと思います。
だからこそ、クレジットカードや電子マネーなどを毎回手間をかけてアドオンしていくという現在の考え方ではなく、全てを受けられる決済サービスを入れて必要ない支払い方法を外していく仕組み、つまりオプトアウトにして、増えた場合は自動的に増えていくという仕組みにしないと、営業効率も生産性も悪くなります。そのようなサービスを作っていきたいと考えています。

 
※後編は6/16(火)公開予定

プロフィール

  • Oomiya profile
    大宮 英紀
    株式会社リクルートライフスタイル 執行役員

    1979年生まれ。大手SIerへ新卒入社し、約4年後にリクルートへ転職。じゃらんnetを担当し、2010年に共同購入サービスポンパレを数名で立上げ。その後、ポンパレモール、リクルートID・ポイント、リクルートカードなどのサービス立ち上げに関わり、約2年前にAirレジを有志数名で立上げ。現在は、Airレジをスモール向けグローバルプラットフォームへ成長させることに夢中。趣味は読書とランニングとワークアウト。

  • Profile hirakawa
    平川 健司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室 室長

    新規事業開発およびアライアンスを担当。
    2000年~2009年にかけて、東日本旅客鉄道株式会社担当アカウントプランナーとしてモバイルsuica導入、電子マネー導入、企業提携支援作業実施。2009年には、政府エコポイント事業のプロジェクト・マネージャーとして事業設計からコンソーシアム運営までの業務推進を実施。省エネルギー等事業の推進も行う。最近では、中小企業・小規模事業者支援ポータルサイト「ミラサポ」にて中小企業支援施策のバリュー・チェーンを繋ぐことで中小企業のビジネス創造を支援。

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