新規事業を成功させる秘訣とは #06

2020年に向けたプラットフォームとしてのAirレジの可能性:リクルートライフスタイル 大宮英紀氏インタビュー(後編)

  • Oomiya profile
    大宮 英紀
    株式会社リクルートライフスタイル 執行役員
  • Profile hirakawa
    平川 健司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室 室長

第5回に引き続き、第6回も大宮英紀氏と平川健司氏の対談でAirレジの今後の戦略を探っていきます。2020年に向けて、Airレジはどのような可能性を秘めたプラットフォームとなっていくのか、外国人観光客に向けた日本のよさを伝えるためにどのようにAirレジが単体店舗をサポートしていかなければならないかなど、興味深い話題が続きます。
(第1回目対談はこちら→前編後編/第2回目対談はこちら→前編後編

2020年という目標で多くの人が目線をそろえてチャレンジできる

平川:前編の最後では、アドオンで電子マネーを追加するのではなく、まとめて提供して必要のないものを外すほうが営業効率や生産性が高まり、電子マネーの普及につながるという話をされていました。一方で、東京オリンピックのある2020年に向けては、さまざまなことをまとめていっぺんに提供しなければならないタイミングとなるので、Airレジにとっても最大のチャンスになるかもしれないですね。

大宮:人間は、期限が決められていないとなかなか動けないものなので、2020年という目標があることで多くの人と目線がそろいやすくなると思います。このタイミングでできなければ、次のチャンスはずいぶん先になってしまいますね。今、世の中こうなったほうがいいよね、と言いながら、国もアクションできず、企業の足並みもそろわない中で、2020年は皆で共通認識を持って行えるチャレンジになると思います。

平川:リクルートグループさんが2030年までに販促領域でグローバルナンバーワンを掲げている中で、外国人の方にリクルートのサービスやAirレジを最もよい形で体験してもらえる瞬間が2020年ですね。非常に多くの外国人が訪れる中でいいサービスであることを実感してもらえば、自分たちも使ってみたいという気分になるだろう思います。
そして、Airレジのような日本らしく便利で、使いやすいサービスを海外に持ってくチャンスもあるな、と今話しながら感じています。

大宮:海外展開するには、文化などのさまざまな課題があると思います。2011年くらいから毎年ラスベガスで「Money 20/20」という金融関連のカンファレンスが行われていますが、そこには政府や大学教授、スタートアップ、大企業の経営層などのさまざまな人が、同じセッションに集まって話しています。
たとえば、ビットコインや暗号通貨といったものに政府はどのような規制を行うかや、スタートアップはどのようにしたいとか、大企業はどう動くなどを一堂に会して何度もディスカッションしています。このような場は、日本にはありません。政府や企業が一緒になって、仕組みや制度をワンパッケージにして海外に輸出することがアメリカの強みだと思うのですが、我々も文化なども含めてワンパッケージで輸出できるものができれば本当にいいですね。

平川:そのためには、ディスカッションできる場をまず作ることから始めなければなりませんね。

大宮:Money 20/20の場では、誰も知らないようなベンチャーのCEOが質問するとメガバンクのCEOが真面目に答えるような、日本では絶対に起こり得ないような状況が生まれています。
このままでは、ビットコインや暗号通貨の規制をアメリカが決めてしまって、日本はそのルールの上に乗っかるしかなくなるという危機感を強く感じましたね。2020年に向けて、日本も一致団結してディスカッションできるようになればいいと思っています。

 

2020年は日本の文化をしっかりと売り込むキッカケとなる年

平川:2014年の外国人旅行者が1300万人を超え、企業の経常収支にもインパクトを与えて、これまで落ちていたところをリカバリーできたことを体感していると思います。
これからは、モノを売るのではなく、文化や食べ物、カワイイや気配りといった日本というものをしっかりと売っていく必要があります。2020年がそのキッカケになればと思っています。

大宮:日本にスキーやスノーボードをやりに来た外国人は、信じられないと言いますよね。ガーラ湯沢のように、東京から新幹線に乗って1時間で駅直結で日帰りできて、パウダースノーで滑れるというのは魅力です。海外では、車で何時間もかけて雪質の悪いスキー場に行く必要がありますから。自分は当たり前のことだと思っている中に、まだまだ発信できていないことやアピールできていないことがあるのだと思います。国としての強みを国力に変えていかないといけないと感じます。

平川:一つひとつのお店や地域、商店街や観光地が自らの良さを発信できて、これまでのデータを見ながら、来訪する外国人の属性が偏っているなどの発見ができれば、もっと効率的に自分たちの強みを発信できるようになると思います。何となく勘や感覚で考えるものではなく、理由をしっかり把握して情報発信し、PDCAを回すというのは、リクルートさんが最も得意としているところですよね。
それぞれの強みを自分たちで見つけるのは難しく、本人たちは強みに思っていないところが外国人から見たら魅力的だったりします。クールジャパンをやっていても、日本人のクールと外国人のクールは違っていて、千差万別なクールジャパンをどんどん見つけ出して日本各地を元気にしていく必要があります。
Airレジは、もっとさまざまなインタフェースで情報を出してフィードバックがもらえる仕組みを作れると、属性に応じた情報を出すことができ、これまでとは違った送客や集客ができるようになるのではないでしょうか。

電通 平川健司氏

大宮:地方には英語がしゃべれない人が多いですが、見知らぬ人に物を売ってコミュニケーションすることは好きな人は多いと思います。言語の壁がコミュニケーションの邪魔をしているのであれば、翻訳するようなサービスを提供すればいいし、それによって外国人を受け入れる体制が強くなっていくと思います。
2020年には、時計やコンタクトレンズなど、どのようなウェアラブルデバイスが登場してきているかがわかりません。いつでもどこでも、簡単にインターネットにつなげられる世界の中で、どのような環境整備をやっていくのか、どう支援していくかを考えながらサービスを作っていきたいと思います。

 

レジという領域を飛び越えて採用から教育までも支援

平川:Airレジは、自前で独自のサービスを作るのではなく、他サービスとの連携も推進するなど、新しいリクルートらしさが出ているような気がします。

大宮:リクルートライフスタイルの事業はこれまで、飲食、美容、旅行といった領域で分けていたため、全領域をまたがるサービスという概念があまりありませんでした。レジをやろうと言い出した時に考えたのは、リクルートが領域をまたぐサービスを作れば、他社にまねできないユニーク性が生まれるということです。
数年前、ネットだけでなくリアルな接点があるものをやりたいと、レジの前身となるようなものを起案しても、まったく通りませんでした。何度も出して、小さくR&Dもやってきた中で風向きが変わり、数人で立ち上げたものを見てもらって、使えそうだという評価をもらったところから広がってきたと思います。生み出してからは、リクルートの営業力を使わなくてもテクノロジーで広げられることを考え、Airレジは無料で提供し始めました。

リクルートライフスタイル 大宮英紀氏

また、他のクラウドサービスと連携したのも、リクルートでは珍しいやり方でしたが、考え方としては、ホットペッパーグルメもアライアンスの1つくらいにとらえて運営しようと考えています。

以前、ポンパレを立ち上げたときに、組織が大きくなっていく中で、0から1のフェーズ、1から10のフェーズ、10から1000のフェーズでは、求められる組織体制と人材要件が異なることを経験しました。Airレジでは、急ぎすぎずに組織を作ることに気をつけています。

リクルートの持つアセットは、メリットにもなり、ビジネス上の制約にもなります。どのような状態を作りたいかを考えて、そこから逆算してアセットは最大限活用し、アセットのないところは自分たちで生み出すようにしています。リクルートではあまりやらないメディア向けの1周年イベントなどをやったり、さまざまな工夫を行っていることもあり、今までのリクルートとは違うと周りの人が思ってくれるのだと思います。これらを許容してくれるリクルートはいい会社だと思うので、その中で1プレイヤーとして頑張っていきたいと思います。

平川:Airレジで今後やっていきたい領域などはありますか。

大宮:教育の機能ですね。飲食店では、アルバイトを採用するのも困難で、採用しても仕事を覚えてもらうが大変で、覚えてもらってもすぐ辞めてしまうという課題があります。
リクルートグループ全体で、採用を支援するだけでなく、採用後の教育まで支援することができれば、もっとビジネスチャンスが生まれ、店舗にも大きく貢献できるでしょう。
Airレジを含めたワンパッケージで、教育するところまで支援できればと考えていますし、自分の中のテーマだと思っています。

平川:お客さまの声を聞きながらAirレジのサービスをよりよくし、最後にコミュニケーションを支えるものになっていければ、レジという概念を超えたサービスになっていきますよね。そうなれば、リクルートさんがAirレジというプラットフォームに投資してきた意味がわかってくるような気がします。

大宮:基本的には、そこを意識していますね。
最終的に、Airレジをそこまで成長させていきたいと考えています。我々は、Airレジを広げることが社会的な貢献につながると考えています。その中で、カード会社やカードブランドと一緒にワンパッケージにすることもやっていきたい。リクルートは、今まで独自でやり続けてきたので、他社とのコラボレーションが不得手な会社ですが、Airレジはオープン性を大事にして、既存のクラウドサービスなどとも連携してきました。今後は、これらの他社とのコラボレーションも電通さんと一緒に学びながらやっていければと思っています。

 

<完>

プロフィール

  • Oomiya profile
    大宮 英紀
    株式会社リクルートライフスタイル 執行役員

    1979年生まれ。大手SIerへ新卒入社し、約4年後にリクルートへ転職。じゃらんnetを担当し、2010年に共同購入サービスポンパレを数名で立上げ。その後、ポンパレモール、リクルートID・ポイント、リクルートカードなどのサービス立ち上げに関わり、約2年前にAirレジを有志数名で立上げ。現在は、Airレジをスモール向けグローバルプラットフォームへ成長させることに夢中。趣味は読書とランニングとワークアウト。

  • Profile hirakawa
    平川 健司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室 室長

    新規事業開発およびアライアンスを担当。
    2000年~2009年にかけて、東日本旅客鉄道株式会社担当アカウントプランナーとしてモバイルsuica導入、電子マネー導入、企業提携支援作業実施。2009年には、政府エコポイント事業のプロジェクト・マネージャーとして事業設計からコンソーシアム運営までの業務推進を実施。省エネルギー等事業の推進も行う。最近では、中小企業・小規模事業者支援ポータルサイト「ミラサポ」にて中小企業支援施策のバリュー・チェーンを繋ぐことで中小企業のビジネス創造を支援。

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