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シンブン!今だからできること。今しかできないこと。No.23

地方創生に挑む地方新聞社(2)
家族のはなし 

2015/06/12

~地方紙は今、読者との絆を財産に、新機軸の取り組みにチャレンジしている~
今、地方新聞社は、地元での強いネットワークを生かし、新たな事業を創出、地域活性化に大きく寄与する取り組みを展開しています。各社は従来の枠を超え、新領域で次々と地方創生につながる成功事例を生み出しています。本コラム「地方創生に挑む地方新聞社」では、そんな取り組みの中からユニークな事例をピックアップし、6週連続でお届けします!


 

地方創生に挑む地方新聞社(2)

 

信濃毎日新聞社

家族のはなし

デーリーメディアならではの驚きの手法に挑戦

信濃毎日新聞社が2013年、創刊140周年記念として企画したのが「家族のはなし」。翌年には第2弾も実施した同企画は地域の人々の思いを集め、紙面だけでなく映像や音楽で共感を誘う趣向だ。それは新たな挑戦の連続で、読者からは「信毎もここまでやったか」との声も寄せられたという。

創刊記念日の13年7月5日の紙面では見開きで家族にまつわるエピソード募集を告知。翌日からは130日連続で1文字だけの小枠広告を掲載した。11月17日の「家族の日」には別刷りを発行し、読者の投稿や、長野県出身のお笑い芸人・鉄拳さん書き下ろしのパラパラ漫画全1918コマを掲載。小枠130日分の文字をつないだメッセージも披露した。さらに鉄拳さんの全1918コマのパラパラ漫画を新聞印刷機で印刷しながら撮影し、その動画をユーチューブで公開。国内外から3カ月間で66万回以上のアクセスを獲得した他、アドフェストなど海外広告賞の受賞、そして文化庁メディア芸術祭「審査委員会推薦作品」選出にもつながった。

元東京支社営業部(現本社広告局広告部)の村松浩司氏は「長年かけて築いた読者とのつながりは強い。信州のさまざまな家族の話を集めたかった。お年寄りから子どもまで多くの応募があった」と振り返る。

村松 浩司氏
村松 浩司氏

14年年末の第2弾企画「家族のはなし2014」では、高齢の読者から募った“明るい遺言”で歌詞をつくり、楽曲を制作。歌詞は紙面や同紙サイトで発表し、ユーチューブでミュージックビデオを公開。楽曲はiTunesで販売している。「長野県は長寿日本一で『ぴんぴんころり』という言葉の発祥の地。明るく生きて死ぬまで楽しく生きようとする信州の元気なおじいちゃんおばあちゃんのメッセージを全国に発信したかった。新聞は家族で読む媒体。実施は家族が集まるお正月を選んだ」と村松氏。

企画の狙い通り反響は大きく1月末には見開きで読者の感想を紹介した。「読者あっての、地方紙ならではの企画だ」と語る村松氏は「強いつながりを若い層に広げることも課題。手探りの部分もあるが、紙面プラスアルファで取り組みたい」と第3弾企画を検討している。