位置情報ビッグデータで見る人の流れ #03

ブルーボトルコーヒーを位置情報データから見てみた─その3

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員

電通「人の流れラボ」研究員の秋元です。「ブルーボトルコーヒー清澄白河店の集客状況を、携帯電話の位置情報ビッグデータを活用して見てみよう」シリーズの3回目となります。
1回目と2回目の記事はこちらを参照下さい。

ブルーボトルコーヒーを位置情報データから見てみたその1
ブルーボトルコーヒーを位置情報データから見てみた
その2

なお本シリーズは、「コーヒー3.0」を連載中のNewsPicks編集部さんと共同で作成しております。
NewsPicksさんのブルーボトルコーヒー関連記事は、こちらからご覧ください。

【スライドで見るデータ】ブルーボトルはどこから人を集めたのか?
https://newspicks.com/news/1036877

【スライドで見るデータ】ブルーボトルはどの年代に響いたのか?
https://newspicks.com/news/1034236

【スライドで見るデータ】ブルーボトルに人は何曜日に行く?
https://newspicks.com/news/1038927

【スライドで見るデータ】ブルーボトル人気は本当か?
https://newspicks.com/news/1033380

これまでの2回の記事では、「オープン〜2カ月経過の間に、集客構造がどのように変わったか」という視点のもと、人の流れの変化を見てきました。

最終回の今回は「ブルーボトルコーヒーは狙った通りにブランディングできたのか?」という視点で、人々のブルーボトルコーヒーへの評価を中心にデータを見ていきたいと思います。

 

北は北海道から、南は沖縄まで。全国各地から人が訪れる

 

改めてブルーボトルコーヒーに関するPR露出量を見てみますと、多様なメディアに相当数取り上げられています。

その成果として、オープンから2カ月の間にブルーボトルコーヒー清澄白河店エリア(※詳細はその1を参照下さい)に来訪のあった居住地を県レベルでまとめますと、北は北海道から南は沖縄まで、実に30都道府県に上り、全国レベルで人気が高まったことが分かります。

 

「味へのこだわり」「洗練されたデザイン」に高い評価

 

どのような点が評価されたのか、Twitterの投稿を見てみましょう。

 

「味へのこだわり」「洗練されたデザイン」という文脈で評価されています。また「日本文化の影響を受けている」点が親近感を生んでいるようです。行列に関する投稿も多く、人気に拍車をかけていました。

全日本コーヒー協会の統計情報によると「若年女性のコーヒー摂取量は他の世代に比べて最も少ない」そうですが、前回の分析によってオープン当初に20代女性が数多く訪れていたことが分かりました。

ラテやフラペチーノのイメージが強いスターバックスコーヒーに対して、ブルーボトルコーヒーはブラックコーヒーのイメージが強いです。ブラックコーヒーに縁の薄そうな20代女性を引きつけてしまうほど、「おしゃれアイテム」として評価されていたのだと思います。

なお、ブルーボトルコーヒーのブランドステートメントは「Delicious / Hospitality / Sustainability」だそうです。また創業者のこだわりとしてミニマルデザインを心がけていることが語られていました。

このうち「Delicious」と「デザイン」は狙い通りに受け入れられたと思います。
一方「Hospitality」については、以下のような投稿が見られました。

 

店員さんの頑張りは評価されているものの、行列の長さや座席の少なさに対して不満が上がっています。ここまでの行列騒ぎになることは、ブルーボトルコーヒー側にとっても予想外だったようで、創業者は「清澄白河店は焙煎所としての役割を重視していて、立地的にスロースタートになると思っていた」という趣旨の発言をしています。

2号店の青山店は店舗の規模が一回り大きいため、清澄白河店に比べて行列・混雑が緩和された時期が早く訪れたようで、「すんなり入れました」「思ったよりも待ちませんでした」という投稿が多く見られました。

 

「ローカル」に溶け込み「コミュニティー」に貢献する

 

「Hospitality」「Sustainability」に関連して、「ローカル」「コミュニティー」という言葉が創業者インタビューなどで語られています。「店舗が立地する土地そのものの個性やそこに集う人たちの個性を生かし、地元に愛され続ける空間を提供することで、コーヒーショップとしての価値を提供し続けよう」とする考え方だと思います。

過去2回の分析ではオープン前とオープン後の変化量を確認するために、あえて地元江東区を除外して分析しましたが、実際に店員さんにお聞きしたところ、当然ながら地元の常連さんも数多くいらっしゃるとのことです。

また夕方帯は江戸川区・墨田区といった隣接区居住者の来訪が増えており、近隣を巻き込んで浸透していく兆しが確認できます(集計条件につきましては、前回記事をご参照下さい)。

今後、さらにローカルとのつながりを強めるために、米国で実施している店舗単位でのローカルイベントを日本でも展開するとよいのではと思います。

お店が比較的すいていて、かつ地元・近隣居住者の利用が多い時間帯(朝帯・閉店間際帯)に実施すると、より強固なコミュニティーが形成されていくと思われます。

 

「清澄白河」再発見の起爆剤に

 

ローカルという観点でもうひとつ特徴的ことがありました。それは清澄白河という街の魅力を全国規模で広くアピールするきっかけを作ったことです。

Google Trendsで「清澄白河」と「ブルーボトルコーヒー」の人気度動向を見てみると、両者が連動した動きになっていることが確認できます。

また雑誌やウェブ上で、数多くの清澄白河特集が組まれており、Twitter上でも地元の方が清澄白河を誇っている投稿が上がっていました。

 

休日のブルーボトルコーヒーエリア来訪者の推移と隣の清澄庭園エリア来訪者の推移を比べると、相関性の高い動きが確認でき、ブルーボトルコーヒーをきっかけとした街の探索につながっていそうです。

こうした動きを地元商店街も巧みに捉え、フリーペーパーと一緒に見所マップを作成し、地元商店で配布しています。

様々なお店の個性が蓄積された結果だと思いますが、ブルーボトルコーヒーの誕生が起爆剤になり、清澄白河という街の価値を押し上げたのは非常に興味深い話であり、ブルーボトルコーヒーが目指していることがかたちになり始めているのではと思います。

 

今回のまとめ

 

位置情報ビッグデータで見る「ブルーボトルコーヒー」、いかがでしたか?
以下、今回のまとめです。

 

今後、より期待値を高めてそれに応えていくために、米国ウェブサイトで展開中の「おいしいコーヒーを飲むための啓発コンテンツ」のローカライズやローカルイベントの実施が挙げられると思います。

また前回確認した、市川市・船橋市居住者のような少し離れたところからの来訪者に対しては、清澄白河という街全体を楽しんでもらうような回遊を促進できると、地域コミュニティーと自社ブランド双方の価値を上げていく活動につながると思います。

 

3回を通じて展開してきました、「位置情報ビッグデータで見る『ブルーボトルコーヒー』」シリーズは、今回で終了となります。

位置情報ビッグデータを活用することで、来訪者の「行動導線」と「モチベーション」が推測しやすくなり、仮説立案の精度向上、施策実行の高速化につながるものと考えています。

引き続き「位置情報ビッグデータで見る人の流れ」という連載タイトルで、テーマを変えながら続けていきますので、ご期待ください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

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モバイル空間統計は、NTT ドコモの携帯電話ネットワークの仕組を使用して作成される人口の統計情報です。「モバイル空間統計」はNTTドコモの商標です。

お問い合せ先:電通 人の流れラボ
contact@hitononagarelab.jp

プロフィール

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員

    大手自動車メーカーのマーケティング子会社を経て2001年に電通に入社。
    以来、多様なクライアントに対してデータドリブンなマーケティングサービスを提供。
    「Samurai Purchase」「DecoMarket」「;Dcloud」の事業開発を経て、
    13年から「人の流れラボ」に参画。
    位置情報ビッグデータなど各種データを組み合わせたソリューションの開発に挑戦している。

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