現地レポート カンヌライオンズ2015 #02

孤独と交流のカンヌ

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

ビジネスクリエーションセンターの廣田です。
今回、電通報チームの一員として、カンヌのレポートを書くミッションを持って現地入りしたのですが、開幕から4日、この街の独特の熱気にのまれ、いろいろな刺激を受けすぎて、どうまとめて良いか分からず、最初のレポートがなかなか書けずにいました。

今年の作品の傾向や、新設された部門、セミナーについては、もう少し消化に時間がかかりそうなので、今回は、カンヌに行ったことがない人に向けて、書いてみようと思います。

さて、この原稿を読んでいる方のうち「実はまだカンヌって行ったことないんだよね」
という人は結構いるんじゃないでしょうか?
そもそも、 カンヌといえば、まずクリエーターたちのお祭りだと思っている(=自分には関係ないものだと思っている)人がたくさんいるのではないでしょうか?

実は、去年はじめてカンヌに訪れるまで、正直にいえば、僕もそのように思っていました。
クリエーティブ局にいない自分にとっては関係ない場所だと。
しかし、それはカンヌの一面しか捉えていない、ということが、来てみると分かります。

まだ2回目の参加ではあるのですが、カンヌに来る意味、価値とは(少なくとも僕にとっては)、「孤独に自分の仕事と向き合う場」であり 「次のビジネスにつながる交流の場」 にあると思います。

どういうことか?

まず、カンヌに来ると、世界中の最高峰のクリエーティブワークを一挙に見ることができます。これは圧倒的です。今年は、3万7千に上るエントリーがあったと発表されていますが、それを全て見ることができます。
これは、最高の勉強の機会です。

いわゆる、「CM」や「グラフィック」だけでなく、多種多様なクリエーティブワークが集まっており、広告会社で働いている人なら、クリエーターでなくとも、必ず何か自分の担当領域に関係する作品があるはずです。

会場には、地下にクリエーティブワークをまとめて見ることができる場所が設置されており、日がな一日、世界中の人たちが、ショートリストに入った作品などをひたすら視聴し、勉強しています。
いろいろな国の広告会社で働く人たちが、真剣に、いろいろな国の人の作品を見て、必死でそこから何かを学ぼうとしている。

どのような作品が、どのような狙いで、どのように表現されているのか?
この作品は、どのような課題を、どのように解決しているのか?
なぜこの作品は賞をとり、こっちはダメだったのか?
評価のポイントはどんなところにあるのか?

膨大なエントリーの中から、ショートリストに入ったものや、ゴールドやシルバーなど、入賞したものを選んで見ていると、ぼんやりと全体の傾向や、今年のトレンドが見えてきたり、自分の普段の仕事にも応用ができそうなことや、反省点も多々見つかります。

それは、とても孤独な作業です。

会場はたくさんの人でにぎわっていますが、クリエーティブワークを視聴する場所には、ヘッドフォンとPCがあるのみ。
図書館で本を読むかのように、ひたすら黙々と吸収し続けるわけです。

僕も、日中はひたすらショートリストに入った作品を、メモを取りながら見ているのですが、ずっと孤独に見ていると、ふと良い作品にあたった時「これも、クリエーターという生身の人間の頭から絞り出されてきたんだ」ということに、奇妙な感動を覚える瞬間がありました。
それは、映画「ジャッジ!」のワンシーンで、妻夫木聡演じる主人公の太田喜一郎が、仕事で落ち込んだ時に、一人で好きなCMを見直している姿に近いかもしれません。

当たり前ですが、アイデアは人間が出すものです。
応募エントリーは、どこかの国の誰かが、一生懸命考え、一生懸命形にし、一生懸命表現したから存在しているのです。

僕は、そのクリエーターと、今、作品を通して一対一で対話している。

ショートリストを真剣に見ていると、広告会社で働いている者同士にしかわからない温かい気持ち、少しでも良いものを作りたいという作り手の熱い思いを感じることができます。

良いアイデア、強いアイデアは、人の心を激しく揺り動かします。

誰にでも分かりやすく説明するためのプレゼンテーションのビデオではあるけれど、作り手の息遣いが感じられるものがある。

こういう作品を作る人はきっと良いやつなんだろうな、とか、
こいつはきっと楽しいやつなんだろうな、とか、
そういう息遣いを感じることができると、とても感動します。

会場には何万人もの人がいますが、エントリーの作品を視聴する時、僕たちは自分と向き合うことになります。
「じゃあ、今の僕には、何ができるんだ?」と。
それは、自分の普段の仕事を見直す機会でもあり、次の仕事への想像力を膨らませる機会にもなります。

言葉でうまく説明できないのですが、「作り手のボイス」を聞き、自分でも、聞いてしまったその「声」に対して答えたくなること、僕にとってそれはカンヌに来てもっとも価値のある体験です。

そして、カンヌに来るもうひとつの価値は「次のビジネスにつながる交流の場」にあると考えます。

カンヌに来ると、普段は会えないような一流のクリエーターやエグゼクティブと、レストランなどでご一緒する機会に恵まれます。
日本では普段忙しい人も、カンヌでは授賞式以降はだいたい時間があるので、ゆっくりと議論をすることができます。
日常を離れているからこそ、仕事の深い話をしてくれることも多々ありますし、アドバイスをもらうこともできる。

また、普段はライバル関係にある企業の人たちも、ここでは腹を割って、会社の垣根を越えて話すことができます。
普段考えていることや、これからどんな仕事をしていきたいか、いろんなことを話すことができます。

これは素晴らしいことです。

また、日本人だけでなくて、当然、世界中の人たちが集まっていることも大きなチャンスです。
日本人はそこまでまだできていないのかもしれませんが、実は海外のエージェンシーは、このカンヌという場を、実にうまく(巧妙に?)ビジネスの場にしていることがわかります。

カンヌの会場はビーチサイドにあるのですが、海沿いにはさまざまなエージェンシーが商談スペースを構えて、クライアントを招き、一緒に次のビジネスを画策している姿がちらほら目に止まります。

そう、カンヌは広告のクリエーティブの場だけでなく、ビジネスのクリエーティブの場でもあるのです。
つまり、営業やクライアントこそ、この場に来て、新しい刺激を受け、次のビジネスを考える大きなチャンスなのです。

実際、今年は僕も、海外の企業のエグゼクティブとお話をする機会に恵まれたのですが......
そろそろ授賞式の時間が近づいてきたので、次のレポートにまた書くことにします!
今夜はどのエントリーが受賞するのか.....楽しみです。

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プロフィール

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    2009年に電通入社。企業のソーシャルメディアの戦略的活用コンサルティングから、デジタル領域における戦略策定、キャンペーン実施、デジタルプロモーション企画、効果検証を担当。社内横断組織「電通ソーシャルメディアラボ」「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」などに所属。著書に『SHARED VISION』(宣伝会議)。

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