対談 「ビジネスとクリエーティブは、よく似たゲームだ」 #03

「幸せから生まれる幸せ」

  • 村上 太一
    株式会社リブセンス 社長
  • Furukawa yuya profile
    古川 裕也
    株式会社電通 CDC センター長/ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

リブセンス社長  村上太一氏 × 電通コミュニケーション・デザイン・センター長 古川裕也氏

  

 

 

第3回 ビジネスとクリエーティブにとっての“for good”

21世紀の新たな価値観の指標となる“for good”。対談に臨んだ若き経営者・村上氏の経営思想も、クリエーティブ・ディレクターとして手がけた古川氏の作品にも、根底のところで通じていたのはその“for good”。 対談終盤は、日本のポテンシャルとしての“for good”に話が及んだ。

 

「あたりまえ」をつくることを常に大事に

村上 古川さんは、クリエーターとしてのお立場でいうと、企業にとっての“for good”はどのように受けとめて、クリエーティブにつなげていくんですか?

古川 まずは、その企業やブランドの究極の価値、存在意義を発見することが何よりも重要だと思っています。企業やブランド自体がどういう価値によって“for good”たり得ているかというのを解明すること、発見することですね。

村上 古川さんが手掛けたCMで私が一番印象に残っているのは、JR九州の「祝!九州」で、まさに企業のコアバリューが何かというのを定義したというか、表現したものだなとすごく感じました。

古川 「祝!九州」キャンペーンは、リブセンスの理念である「幸せから生まれる幸せ」と全く同じ考えからスタートしています。鉄道は巨大インフラですから、新幹線が開通することで地元の人々の幸せに寄与するのは当然ですが、それだけでなく、九州の人たちの“幸せ”がスプレッドして、より普遍的な“幸せ”を獲得できるように考えました。

経済的には当時の日本はデフレのどん底で、日本全体が元気をなくしていた。最初のプレゼンでJR九州の社長に申し上げたのは、これは「『九州から日本中を元気にする』というキャンペーンなんです」ということです。

村上さんは、企業が成長してきた今も、自分たちの存在価値は何だろうかと、常にそれを突きつけられているわけですよね。ご自身のメッセージを対外的にも発信しなければいけないし、あるいは社内にも浸透させていかなければいけない。その点、普段からどのようなことを意識していますか?

村上 私は、経営者個人としてだけでなく、企業のあらゆるアウトプットは、企業のアイデンティティーを表現するものだと思っています。会社のロゴマークはもちろんですが、例えば、どんな椅子を置くのかといったことひとつとっても、企業の意思が表出する。だから、あらゆるものに対して「なぜそれなのか」という理由を説明できるような意識を持つことが、非常に大切だと考えています。 

古川 普段の社員スタッフの意識の共有はどうしているんですか。

村上 やはり、「あたりまえ」をつくるぞ、という点を大事にしています。そして、その下のレイヤーで、例えば、アルバイト求人サイトとしての「ジョブセンス」の「あたりまえ」って何だろうとかっていうのをみんなで共有できるようにする。当社の場合、採用決定の人数が日本一ってことだよね、「あたりまえ」ということは。じゃ、日本一って何だろう、数値だよねと。この数値を達成するためには何がいい、みたいな感じで、みんなで議論をするわけです。

古川 それは、リブセンスのロジック、コンテクストをみんなで何度も共有することで、ある種の「リブセンス筋肉」みたいのがついていって、それが同時にエデュケーションになっているみたいな感じですか。

村上 「あたりまえ」の、その人数を達成するにはどうすればいいだろうかというのを、みんなでガッと議論していって、ここはまだいけるんじゃないかとか、ここをまだ考えてなかったねという気づきがあると、それが教育にもなっている側面はありますね。

古川さんの場合は、クリエーターとしては、コンテクストをつくり上げていくときはどのようにしているんですか?

古川 先ほどの「祝!九州」のキャンペーンでいうと、九州の人をみんな幸せにする、そのために、みんなが参加できる“お祭り”を創るというコアアイデアとゴールイメージをまず最初に提示することですね。あれは、半世紀前の有名な“I LoveN.Y.”キャンペーンの構造をヒントにしています。市民全員参加の“お祭り”を創り、その地域をまるごとハッピーにするという。参加型と地域限定が実は大きなモチーフになっています。 

村上 ゴールは、明確に持っていた上でスタートしているわけですね。

古川 そうですね。ゴールイメージを明快にシェアすることは、コアアイデアを確定することと同じくらい重要ですね。それがないと、中身の良しあしが判断できない。村上さんはどうですか? ゴールが明確にあって、そのプロセスの中で柔軟性を持っていくのか。むしろゴールはあえてボワンとしておいてスタッフを早めに巻き込んでカタチにしていくのか。

村上 私が経営的な観点で常に大前提にしているのは、答えは企業成長のステージによって変わるものだということです。例えば10人のときだったら、どんな議論にも私が入るようにすると思います。ただ、ある程度の企業規模になった時点でいうと、私が細かく入るより、みんなでやった方が正しい答えになると思っています。そのステージに応じての変化を前提に、ゴールをすり合わせていけばいいのではないかと。

 

日本には世界を良くするポテンシャルがある

村上 今回、古川さんのお話を伺っていて、アイデア起点の課題解決のあり方が企業の新たなサービスにつながることや、その企業活動の根底に“for good”という思想がいかに重要かということを、あらためて認識しました。 

古川 アイデアが先にありきという点でいえば、それは結局、アイデアを考える方が、より強い主体性を持たなければならないということなんですね。このアイデアはきっとこういうふうに世の中を良くするはずだと。広告の世界でも今後、そういう“新しいゲーム”が重要になっていくと思います。

“for good”という意味でいうと、僕が今、ブランディングで興味があるのは、「日本」なんです。日本には、あるいは日本人には、世界を良くする力があるということを、世界中の人に認識してもらいたい。東京へのオリンピック招致を決めたIOC総会でのプレゼンテーションも素晴らしかったですが、2020年前後には、われわれ日本人には世界をもっと良くする力がある、ということを、世界中が認識する。そういうパースペクティブで仕事できたらと思っています。

村上 日本人は世界を良くする力があるというのは、僕も本当にそう思いますね。世界のどの国よりも、日本人にはその意識が常に強いと。自己中心的ではなくて、調和を大事にするとか、AKBの総選挙じゃないけど、ほかの人を応援するとか、もてなすのがとても好きな国民性ですよね。そういった文化を持つ国ってそうそうない。日本は、そういった世界をより良くしていくパワーとポテンシャルをすごく秘めているなと。

私も一企業の経営者として、あるいは企業としても、ジャパンパワーの発信に少しでも貢献していければと思っています。

古川 ご活躍をお祈りしています。今回は、私にとっても非常に刺激的な対談でした。ありがとうございました。  (了)

プロフィール

  • 村上 太一
    株式会社リブセンス 社長

    1986年生まれ。小学生の頃に「将来は社長になる」と決意し、早稲田大在学中の2006年にリブセンスを設立。成功報酬型のアルバイト求人サイト「ジョブセンス」を開設。創業2年目で黒字化を達成。11年、東証マザーズに史上最年少の25歳1カ月で上場。12年には東証1部への市場変更を果たす。

  • Furukawa yuya profile
    古川 裕也
    株式会社電通 CDC センター長/ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

    1980年株式会社電通入社。
    クリエイター・オブ・ザ・イヤー、カンヌライオンズ28回、D&AD、One Show、アドフェスト・グランプリ、広告電通賞(テレビ、ベスト・キャンペーン賞)、ACC グランプリ、ギャラクシー賞グランプリ、メディア芸術祭など受賞多数。カンヌライオンズ、D&AD、クリオなど、国内外の審査員・講演多数。2013年カンヌライオンズ チタニウム・アンド・インテグレーテッド部門の審査員を務めた。

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