Dentsu Design Talk #61

IoTとテレビ(後編)

  • Boku
    朴 正義
    株式会社バスキュール 代表取締役/クリエーティブディレクター
  •     2
    野添 剛士
    株式会社SIX 代表取締役/クリエーティブディレクター
  • Hiroki
    中村 洋基
    PARTY クリエーティブディレクター/ファウンダー

IoT(モノのインターネット)という言葉が注目を集め、デジタルクリエーティブがその姿を大きく変えている。
テレビ×インタラクティブをテーマに、4年で20 以上の参加型番組企画を実現してきたバスキュールでは、日本テレビとスマートテレビ、スマートデバイスを事業のメーンフィールドにする合弁会社「HAROiD」を設立。
博報堂からスピンオフして生まれたクリエーティブエージェンシーSIXでは、次世代型スピーカー「リリックスピーカー」を開発し、今年の SXSW エンターテインメント・コンテンツテクノロジー部門で、アジア初の受賞企業に選出された。
インタラクティブ、デジタルを起点にしたクリエーティブを追求してきたPARTY でも、IoTコンテンツの開発が進行中という。

従来のクライアントワークにとらわれず、新しい取り組みを進めるデジタルクリエーティブ3社からバスキュール朴正義氏、SIX野添剛士氏、PARTY中村洋基氏の3名が集まり、IoT 時代のクリエーティブについて話し合った。その内容の後半をお届けする。

(左から)朴正義氏、中村洋基氏、野添剛士氏

 

テレビを情報端末と捉えて

新しい広告サービスを発想する

中村: HAROiDでは、この先どんな事業を展開していく予定ですか?

朴:今、ネットに接続しているテレビは20~30%といわれていますが、近い将来、50%を超えるのは間違いないと考えています。テレビ番組を見ている時に、子どもが駅にSuicaをかざしたことが表示されたり、宅配便があと10分で届くと表示されたり。テレビがネット接続されていれば、スマートフォンのようにパーソナルな情報をタイムリーに表示することが可能になります。

料理番組とテレビ通販をセットにして「みんなでカレーを食べよう」という企画にすれば、事前に通販で材料を注文してもらい、当日は番組を見ている1000万人が同時にカレーを作って食べる、なんてことも考えられます。テレビをネット接続された大画面情報端末として捉えると、色々なサービスが考えられるんです。

HAROiDではそういった時代を見据えて、ショーケースになるような企画を準備しています。15秒のテレビCMとは違う、インタラクティブな新しい広告サービスを実現できればと考えてます。

中村: バスキュールはこれまでテレビと一緒にやってきた実績があるからこそ、こうやって周りを巻き込めていけるんでしょうね。

野添:こういう座組みを作ったことで、これまでよりも実現の敷居は下がりそうですか?

朴:テレビ番組って、たいてい直前で制作を始めるので、放送2週間前になってもワードかパワーポイントの企画書しか存在しない、ということが多々あります。

当初はそれに本当に驚いて。以前、テレビとスマホを連動させた生放送番組を企画した時は、やりたいことを説明するために、60分のVコンを作ったんですが、逆にテレビ業界の人にびっくりされて、そのVコンが出回ったほどでした(笑)。スケジュールが確保できないと、やりたいと言っても実現できないので、こちらである程度のフレームワークを用意して、「安く」「早く」インタラクティブな企画が実現できるようにする。そうすれば実現可能性も高まり、僕らのようなインタラクティブ業界の人間にもチャンスが増えるんじゃないかと思ってやっています。

 

ビジネスをスケールさせられる

人材がもっと必要だ

中村: お2人は新規プロジェクトを始める時、どういう準備が必要だと思いますか? 小さなエージェンシーなら「面白そうだからやろうぜ!」でできるけれど。

野添:そういう感じって大事なんじゃないでしょうか。スタートアップが手掛けるIoTは、これまで効率化のためのものが多かったと思うんです。ごみ箱にセンサーをつけることで中身の量を把握できて、無駄な回収を減らせます、とか。

それも必要ですが、僕らは人がワクワクしたり楽しい気持ちになったりするIoTを作ることが大事なんじゃないかと思っています。ただし、それをビジネススケールできる人材が広告界にいるのか。それが大きな問題ですね。

中村: PARTYでは、「OMOTE 3D SHASHIN KAN」(3Dプリンタを使った立体フィギュア制作サービス)を発表して、あっという間に世界中にパクられたという過去がありまして。意匠のことを全然考えていなかったんです。広告の人間は、その辺がすごく甘いというか。

野添:アイデアをスケールさせて、もうかる仕組みを作れる人材が必要ですよね。

朴:そうですね。既存の枠の中でクリエーティブを競うのも楽しいのですが、隙あらば、そのコンテンツフォーマット自体を新しくするようなことをやってみたいですね。同時に数百万人参加とか、家でもどこでも参加できるネット時代の恒例のお祭りのようなものを作ってみたいです。

中村: SIXが今後やっていきたいことは何ですか?

野添:音楽の次はファッションの分野でやってみたいですね。もうひとつは、音楽やスポーツなど、ライブイベントの楽しみ方を追求してみたい。そうやって「カルチャーをアップデートする」視点で考えていけば、可能性が広がっていくんじゃないかと思います。

朴:スポーツ中継は、届ける側にも見る側にもアップデートの余地がたくさんありますよね。

野添:まさに研究が進んでいる分野ですよね。このまま発展すれば、東京オリンピックでは世界一深い中継ができるようになるかもしれない。

朴:今はほぼ全員が高性能ネット端末を持っている時代です。
IoTというより、IoE(Internet of Everything)、つまりコトのインターネット化というような形で、自分がしたいことが瞬時に伝わり、それに対応するサービスがすぐに提供される、という方向に時代は進んでいくと思っています。

中村: ちなみにお2人は、これからどんな人材が欲しいですか?

朴:有無を言わさず欲しいのはエンジニアやプロデューサー。プロトタイプを作れる人材が欲しいですね。

中村: プロトタイプを作れる人間はPARTYでも探しています。ただ、人数が少ないとクライアントワーク優先になってしまうのが悩みです。組織を分けるしかないかもしれないですね。

野添:アイデアはいっぱいある。でも、プロトタイピングを進めるられる人間も、ビジネスを進められる人間も全然足りない。それが僕たちが抱えているジレンマですね。

 

こちらアドタイでも対談を読めます!

企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀

 

プロフィール

  • Boku
    朴 正義
    株式会社バスキュール 代表取締役/クリエーティブディレクター

    株式会社HAROiD チーフクリエーティブオフィサー。
    2000 年にバスキュールを設立後、15 年にわたりトヨタ、コカ・コーラ、ユニリーバ、ソニー、パナソニック、ポケモン、JRAなど、 数多くの企業やブランドのデジタルプロモーションの企画ディレクションを担当。これまでに担当した100以上のプロジェクトで、カンヌ、クリオ、One Show、ADC、Adfest、文化庁メディア芸術祭など、国内外のクリエーティブ賞を受賞。
    ここ数年は、テレビ×ネットという領域で多くのチャレンジを行うとともに、既存の枠を飛び越える次世代クリエーターの育成活動であるBAPAに注力している。

  •     2
    野添 剛士
    株式会社SIX 代表取締役/クリエーティブディレクター

    2000 年博報堂入社。デジタル関連部門、マーケットデザイン部門で経験を積んだ後、クリエーティブへ。
    2013 年に SIX を設立し、代表取締役社長に就任。2013年カンヌ審査員。
    主な仕事は「SPACE BALLOON PROJECT」「JIM BEAM」「adidas サッカーW 杯日本代表」など。
    受賞歴は、 2011 年度クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、文化庁メディア芸術祭グランプリ、カンヌ、ACC マーケティングエフェクティブネス部門グランプリ、SXSW での受賞ほか。
    現在は、トヨタ、サントリー、グーグルとともにマス・デジタルを横断したキャンペーンを行うとともに、リリックスピーカーなどによる商品開発を通した「コトづくり」にも注力している。

  • Hiroki
    中村 洋基
    PARTY クリエーティブディレクター/ファウンダー

    電通に入社後、初期はバナー広告で大量の作品をつくっていたが、その後、インタラクティブキャンペーンを主として手掛けるテクニカルディレクターとして活躍。
    2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。
    人と人とのコミュニケーションに「遊びのルール・しくみ」をひとつ足すことで、単なる日常がエンターテインメントに変わる、という手法に興味を持つ。エンジニア出身であることから、プログラミングやデータが持つ面白さと、SNSなどのコミュニケーションを利用したアイデアを組み合わせてつくる、新しいエンターテインメントを模索している。国内外250以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。TOKYO FMのラジオ「澤本・権八のすぐに終わりますから。」毎週ゲストパーソナリティー。

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