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DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~No.38

私、これなんで買ったんだっけ?『買う5秒前』

2015/08/14

はじめまして。電通関西の川畑(かわばた)です。入社5年目、日々「どうしたら人の心を動かせるのか」「どうしたら人に伝えたくなるか」「どうしたら手に取ってもらえるか」ということを、ぐるぐると考えています。

そんな中で、今朝自分がコンビニで買った水や、週末行った焼肉、なんでそれを買ったんだっけ? なんでそこを選んだんだっけ? と振り返ってみると、何か明確な理由や、確固たる意志があって選んだというよりは、「なんとなく」が答えだったりします。

みなさんも「なんとなく」ものを買っていること、多くないですか?

そんな自分でさえ分からない「これ、なんで買ったんだっけ?」という未知の購買動機を解き明かしたのが、本日ご紹介いたします、草場滋著の『買う5秒前』(宣伝会議)です。

7番目の購買動機=『買う5秒前』

まず、本書の冒頭には、購買動機について以下のように解説されています。

①必要:ないと困るから。
②お得:安いから。
③好み:好きだから。
④流行:みんな持ってるから。
⑤見栄:かっこつけたいから。
⑥義理:いつもお世話になってるから。

ただ、自身の購買動機を振り返っても、単純にこの6つには分類できない動機が存在します。それが「これ、なんで買ったんだっけ?」という未知の“7番目の動機”であり、『買う5秒前』なのです。

本書では、昨今のヒット商品、ヒットコンテンツなどの事例から、62の『買う5秒前』が紹介されています。

なんで俺って、「ぱるる」を応援してるんだっけ?
なんで私たち、「パンケーキ」のためにこんな長い列に並んでいるんだろう?
なんでうちって、「カープ」に夢中になっとんじゃろ?

知らず知らずにハマっていること、引かれていること、そして購入したもの。それらの動機を掘り下げ、解き明かしていきます。

「格安たらこ」より「訳ありたらこ」

本書で紹介されている購買動機の1つ、「理由を知りたい私」。リーマンショック以降、不況のあおりを受けて「格安」「お得」「割引」といったお得ワードが世の中にあふれました。でも、安くすればモノが売れるかというと、そんな単純な話でもありません。

そう、今の私たちは、単に安ければいいのではなく、なぜそれが安いのかという「理由」まで知って、はじめて納得して買うのです。

そのわかりやすい事例が「たらこ」。

単純に値段が安いだけの「たらこ」は、産地や品質、味など「なにかあるのでは…!?」と不安になるけれど、皮が破れていたり、端がちぎれていたりしていることを、あえて押し出した“訳あり”たらこが安ければ、納得して買うし、お得感を感じてうれしく思えたりしますよね。

ただ安いだけではダメ。“訳あり”であることが購入の後押しになるのだということです。

「ひとりの時間」が好きなワタシ

これは、まさに先ほどシルバーウイークひとり旅の予約を完了させたワタシのことです。

「ひとり時間」。

ここ最近、ちまたでも「ひとり飯」「ひとりカラオケ」「ひとり映画」といったワードを耳にする機会も増え、女性の「ひとり時間」への需要の高まりは身をもって感じています。

では、この女性の「ひとり時間」需要の高まりの背景に何があるのでしょうか。

もちろん労働環境の改善により、女性の社会進出が進み、自立した女性が増えてきていることも大きいですが、それよりも大きな要因はSNSの普及により「ひとりでもひとりじゃない」という心のつながりができたことにあります。

「ひとりだけど、ひとりぼっちじゃない」。その安心感により、多くの女性たちは「ひとりの時間」を気兼ねなく楽しめるようになったのです。

確かに。

ちなみに、この書評を書いているタイミングでも、女友達から「ひとり温泉旅行なう」と温泉旅館の食事の写真とともにLINEが送られてきました(笑)。

このように、本書では日常の「あるある」なシーンや事例などから、消費者のインサイト、購買動機を解き明かし、イラストとともに紹介されています。

こちらで紹介したもの以外にも、本書には「なるほど」「確かに」と思わされる事例が多数紹介されています。マーケティングやアイデアを考えるヒントになるだけでなく、自分自身の日々の消費行動や購買動機について、あらためて考えてみたくなる一冊になると思います。