MOM meets MOM Project #01

もしも日本のママが、タンザニアで子育てをしたら。

  • 堂珍 敦子
    モデル
  • Photo0620
    外崎 郁美
    株式会社電通 電通ギャルラボ代表/CDC コピーライター/CMプランナー

世界では妊娠や出産が原因で命を落とす女性が、なんと1日に800人もいます。この状況を改善していくために、女性支援の国際協力NGOであるジョイセフと女性向けコミュニケーションを手掛ける電通ギャルラボは、世界中の妊産婦を守るホワイトリボン運動の一環として、共同で「MOM meets MOMプロジェクト」を立ち上げました。スポンサーとしてサラヤのスキンケアブランド、ラクトフェリンラボが全面的にサポートしています。

世界の妊産婦やママが置かれた状況を日本のママたちにも知ってもらうことで共感しあい、支援の輪を広げていきたい。この連載では、プロジェクトメンバーの筆者・外崎郁美が6月に視察に訪れたタンザニアにおける母子保健の現状を振り返りながら、日本の、そして世界におけるママたちの課題と未来の可能性について考えていきます。

MOM meets MOMプロジェクト バナー

第1回は、MOM meets MOMプロジェクトのアンバサダーとして一緒にタンザニアに訪れたモデルの堂珍敦子さんと筆者の対談。ふたりがタンザニアで見た妊産婦の現実とは? そして視野を広げたからこそわかる日本の出産・育児の課題とは?

5人のお子さんのママでもある堂珍さんと、プロジェクトのトータルコミュニケーションを担当する筆者がそれぞれの立場で語り、ママについて考えます。

堂珍敦子さんと外崎郁美

◆出産はイベント?それとも日常?

外崎:今回、堂珍さんにとってはじめてのタンザニア訪問でしたが、タンザニアのママたちに会ってみたいと思ったきっかけは?

堂珍:もともとジョイセフの勉強会に行って支援先であるタンザニアのお話を聞いていたので、いつか自分の目で見てみたいという気持ちがずっとあったんです。

外崎:初めてジョイセフに出会ったのはいつですか?

堂珍:5年前ですね。ちょうど3回目の出産で双子が生まれて復帰した直後に勉強会に行って、衝撃を受けたんです。なんで国が違うだけでこんなに環境が違うんだろうって。

外崎:今は日本も医療が進んでお産が怖いというイメージはあまりないですが、世界では妊娠や出産が原因で亡くなる人が1日に約800人もいるという事実は驚きですよね。

堂珍:自分自身が双子を妊娠して、医療の助けもありいいお産をしたなかで、タンザニアのママたちはどうなのか確かめたいなと。

外崎:ミルキーハウス(※サラヤの支援金でタンザニアに新しく建設された母子保健棟)でたくさんの生まれたばかりの赤ちゃんやママに出会いましたが、どんな印象でした?

堂珍:すごく元気ですよね。産むことが日常な感じで。わー生まれた!…という感じではなく、ふつうに産んでふつうにいる。

外崎:日本だったら出産は一大イベントで、親戚や友だちも見にきて写真撮ったりするけど、タンザニアではママがひとりで産んで、その日に帰ったりしていましたよね。さっきおなかが痛いといっていた女の子が、2時間後には出産も済ませて家に帰っているという。

堂珍:あれはびっくりでしたね。大声とか聞こえませんでしたよね?

外崎:いつの間にっていう。出産が日常のできごとなのかもしれないですね。日本でも4人目5人目から「わーっ!」という感じはなくなってくるのかも(笑)。

堂珍:そうかもしれませんね。5人目が自宅出産だったんですけど、夜中の1時頃に生まれそうになって、助産師さんに「子ども起こします?」って聞かれても、「いいです、寝かしておいてください」って答えました(笑)。子どもたちが眠くてぐずったり興奮して走り回ったら気が散るから…。

外崎:かっこいい(笑)。

堂珍敦子さん

◆選択肢がありすぎる日本。選択肢がないタンザニア。

外崎:自宅出産は5人目が初めてですか? 決めたきっかけは?

堂珍:双子がいるので5人目のときは4回目の出産で。自分でも誕生学を勉強して、何となく自分の出産パターンのことがわかってきていたから、できるのであれば家で産めたらいいなって。

外崎:自分の出産パターンがわかるんですか!?

堂珍:これくらいの時間で陣痛が本格的になるな、とか。私の場合は痛みに鈍感みたいで。そろそろ痛いかも、と思ったときにはもう生まれちゃう。イタイ!と思ってから病院に行っていたら間に合わないかも、とも思いました。いつ陣痛がくるかわからないので、家に誰もいないときに陣痛がきたら…と考えると、私が家にいて助産師さんが来てくれたほうが安心かなって。下の子4人連れて移動するのも大変で。

外崎:4人連れてタクシーに乗るだけでも大変ですね(笑)。

堂珍:実際、イタイ!と思ったときには動けなくなって、15分くらいで助産師さんに駆けつけていただいて出産しました。あれで病院で産もうとしたら、救急車の中で産む、という展開になっていたかも。

外崎:仕事のムービーの制作でとある助産院にご協力いただいたんですけど、病院じゃなくてふつうのおうちみたいな雰囲気で。そのあとクリニックで分娩室も見たんですけど、それは手術室みたいな雰囲気。全然違ってびっくりです。

堂珍:どっちがリラックスできるかですよね。医師も設備も整っている病院のほうが安心できる人もいるし、おうちのほうがリラックスできる人もいるし。私の場合は産前に病院に検診に行って、最終的には産婦人科医のOKもいただけたので自宅出産を選びました。

外崎:産む場所は選択肢があるけど、医療のバックがあるのはやっぱり安心ですよね。日本でもタンザニアでも大変な状況は起こったりもするけど、日本はいざというときの対処が整っている。でもタンザニアではいざというときに助かる手段がなかったりします。

堂珍:そういう意味では日本は医療が整っている。でも、整っているぶん、選ぶのが難しい面もあるなって。陣痛促進剤とか帝王切開とか、もちろん必要な人もいるけど、それが本当に必要かどうかよくわからなかったり。

外崎:陣痛促進剤についてもいろんな議論がありますよね。日本では医療が進んでいるぶん、選択肢も多様化していて、何を選ぶかで大きく違ってきそうですね。みんなが納得できるものを選べているといいのですが。

外崎郁美

◆ひとりっ子と、子だくさん。どっちの子育てが大変?

外崎:タンザニアのママと日本のママの違いといえば、タンザニアが多産で日本がどんどん少子化になっているところですね。タンザニアのママの合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの平均数)は約5.2人。日本は約1.4人。そんななか堂珍さんは5人のママですね。はじめからたくさん産みたいと思っていましたか?

堂珍:まったく思っていなかったです!(笑) はじめはひとりっ子でいいと思っていたから。

外崎:双子ちゃんが生まれたのが大きかったですか?

堂珍:双子が第3子と第4子なので、2人から一気に4人になるインパクトはありましたね(笑)。実は私も4人兄弟で、母に3番目ができたって聞いたらそれが双子だったんです。

外崎:同じパターンですね。2人から4人っていきなり倍だからすごいと思うんですけど(笑)。

堂珍:そのときはとにかく必死だったことしか記憶になくて(笑)。でも、子どもが増えるごとに見えるものが違ってきたんです。子どもが2人の時は夫婦2人だけでも面倒を見られるけど、子どもの人数が増えると誰かの力を借りないとどうにもならなくなって。見ず知らずの人でも手を借りられるなら借りたいという(笑)。まわらなくなったことで、逆に社会がどんどん広がっていったんです。

外崎:えー!それは面白い。

堂珍:前だったら人付き合いがなかったご近所さんにまでお世話になったりして。そこから見ず知らずの人とも仲良くなったり、そこから機会が増えてどんどん地域社会ともつながっていって。

外崎:その発想はなかったです。子どもが増えれば増えるほど子育ては大変だと思っていました。狭いと、逆にそこだけでやらないといけないっていうプレッシャーもあるのかもしれませんね。

堂珍:そうなの。狭いなかだけで解決しなきゃいけなかったりするから。

外崎:まわりに開いているといろんなところにストレスを分散できそう(笑)。

堂珍:そうかもしれない(笑)。自分ですべてを抱え込まなくていいんだなって思ったらすごく楽だし。あと、子どもの人数が増えて自分の世界が広がったことによって、その世界のことも気になってきたんです。子どもが5人いて、その子どもたちが生きていく世界は私がいなくなってもずっと続いていくと思うと、ちょっとでも良くしておきたいっていう気持ちにもつながって。

外崎:残されていくのは彼らですもんね。

堂珍:しかも今ここにいる自分の子どもたちだけじゃなくて、その子たちが親になってさらに子どもが生まれてくるとなると、3代先、4代先の地球ってどうなんだろうと不安になったりもするし。だったら今この状態の地球を保てるように、何かちょっとずつでもやっていきたいなと。

外崎:産めば産むほど、そこから世界が広がっていったというのが面白い。1人目の子育てに必死になっているときは、なかなかそう思えなそう。

堂珍:逆に抱えきれる量だからそう思うのかも。逆に絶対無理!ってなってから割り切れたのかも。

外崎:開いたなって感じ始めたのは双子ちゃんの出産が大きかったですか?

堂珍:うん、そこは全然違いましたね。人に頼るのが迷惑かけるんじゃないかとか、こっちから頼んでまで子どもを見てもらうのはなんか「ダメな母親」的な罪悪感もあって。「見てあげるよ」って言われても、お願いしますとは言いづらい感覚だったのが、4人になってからは「お願いします」って言えるようになってコミュニケーションも増えて、いっぱい教えてもらったことがありますね。

タンザニア視察を振り返る

◆ひとりで育てる日本。みんなで育てるタンザニア。

堂珍:子どもが4人になってさらに5人になって、たくさん助けてもらっているぶん、まわりのお母さんも助けてあげたいと思うようになって。まわりとのつながりを強く感じるようになりましたね。

外崎:昔は日本も子どもが多かった。まわりとのつながりも多かったこととリンクする気がしますね。少子化になっていくと同時に、1人当たりにかけるお金は増えるけど、閉じていって横のつながりが減って、核家族化していく。

堂珍:小さいときに見ず知らずの人から助けてもらった子どもは、自分が大人になったときに手を差し伸べるのは当たり前って感覚になると思うんですけど、「人に迷惑をかけるのはいけない」という感覚になって、「迷惑かける子どもはいけない」みたいな大人になるのはちょっと寂しい。

外崎:「いい子ちゃん」が本当にいいのかわからなくなってきますね。ずっと我慢して自分の感情を押し殺していい子でいるのって、小さいときは手がかからなくていいかもしれないけど、何かがどこかにたまっている可能性もあるのかな。しかも、それは大人が子どもにそうさせている感じも。

堂珍:そうなんですよね。もちろん迷惑かけっぱなしはいけないとは思うけど、小さいときに見ず知らずの人に助けてもらった経験って、絶対自分が大人になったときに大切になることを学んでいるんじゃないかって思うから。

外崎: 今、防犯のこともあって知らない人に声かけられても話してはいけないっていう雰囲気だし。閉じてますよね。

堂珍:どんどん孤立化して知らない人とは目を合わせないように、みたいな。

外崎:そうですよね。そこもタンザニアとの違いですね。

堂珍:タンザニアではいまだにコミュニケーションがあふれていましたよね。子どもが「みんなの子ども」みたいな感覚じゃないですか。

外崎:村を散歩したときに子どもがたくさんいたと思うんですけど、誰がどこの子どもかわからないっていう(笑)。

堂珍:全然関係ない感じですよね。

外崎:取材した家族の写真を撮るときにも、知らないうちに他の家の子どもも入ってきて家族写真に交ざる(笑)。

堂珍:でも、昔の日本もきっとそういうところがあったと思うんですけど、どんどん少なくなってますよね。

外崎:発展していくたびに、閉じていく。なんで閉じていっちゃったんだろう?

堂珍:やっぱりどこかで人に迷惑かけるっていうのが、育児放棄しているんじゃないかと言われたり、社会からのプレッシャー的なものはたくさんあるような気もしますね。もちろん迷惑をかけろっていうわけじゃないけど、新しい人材を育てていくのはお母さんお父さんだけじゃないし、社会の一員として次の世代をみんなで育てていくという感覚が持てたらいいですよね。

外崎:ちょっと子どもが騒いでいたらまわりの人が注意するわけでもなく、「なんだあの親は」「しつけが悪い」みたいになっちゃう。注意してあげればいいはずなのに、壁があるまま終わっちゃうのはちょっと寂しいですよね。

堂珍:発展するにつれて都会になってきて、大人社会と子ども社会が分けられているのかも。

外崎:大人社会?

堂珍:できあがった大人の社会のなかに子どもたちが割り込んで生活しなきゃいけない っていう。

外崎:なるほど。

堂珍:公園ではボール遊び禁止だったり、保育園ができたらうるさいっていう議論になったり。いろんな制限がありますもんね。でもそれって大人都合だったりするじゃないですか。

外崎:そうですね。

堂珍:そのなかで子どもたちが生きていかなきゃならない。

外崎:けっこう大人優先な感じの社会なのかもですね。じゃあ子どもはどこで伸び伸びしたらいいんだろう。

堂珍:タンザニアの子どもたちってすごく生き生きしてたじゃないですか。制限されるものがない子どもの無邪気な笑顔って本当にかわいいなと思って。逆に都会のなかで子どもたちはいっぱい制限を受けていたりするから。ああいう無邪気な笑顔を取り戻してもらいたいなと思いますね。

外崎:子どもが伸び伸びできない環境っていうのは、子どもを育てにくい環境でもありますよね。社会からの許容がないと、ママたちにどんどんプレッシャーがかかってしまって、妊娠や出産に前向きな気持ちになれなくなってしまいますよね。せっかく医療がこんなに整っている国なのにもったいない。

堂珍敦子さん

◆生まれた場所が違っても、ママの思いは世界共通。

外崎:タンザニアに行った後で子どもに対する気持ち、子育てに対する気持ちが変わったりしました?

堂珍:帰国して、あらためて母親ってどこもいっしょなんだなって。子どもを見るまなざしとか母親としての愛情とか、女性として同じ感覚なのを感じましたね。だからこそみんなで良くしたいと思うし、国や環境が違うからとかじゃなくて、「ママの思い」を共通項にいろんなことが変えられるんじゃないかなってことは思いました。

外崎:「ママの思い」が共通項になるってすごい。そこで世界中つながれると、ものすごい力になりそう。世界を変えられそう。この世界にいる72億人を生み出したママたちを思うと、そのパワーに圧倒されますね。ママについて考えることは、この世界を考えることなんだと思います。

堂珍敦子さんと外崎郁美

【第1回考察】
タンザニアと日本のママ事情を比べてみると、物質的な豊かさと精神的な豊かさがまるで反比例しているようにも思えます。土地も広く自然も豊かで多産だけど、そこには命のリスクがつきまとうタンザニア。一方、土地が狭く子どもの居場所が少なく、安全だけど少子化以前にセックスレスも深刻化する日本。世界中のママが前向きに命を生み出せるようになるには? 連載を通して考えていきます。

出産したばかりのママと赤ちゃん。
出産したばかりのママと赤ちゃん。ジョイセフの支援地域では、産後すぐに赤ちゃんを背負って自力で帰宅するママも多い。
誕生学の講義をする堂珍さん
現地の若者たちに誕生学の講義をする堂珍さん。女性たちはもちろん、男性も真剣に耳を傾けてくれた。
ミルキーハウスにペイントする堂珍さん。
新しく完成した母子保健棟ミルキーハウスに、現地の子どもたちといっしょにペイントする堂珍さん。
 
現地のママと赤ちゃんと、記念撮影する筆者
撮影に協力してくれた現地のママと赤ちゃんと、記念撮影する筆者。タンザニアの女性の笑顔は最強。

プロフィール

  • 堂珍 敦子
    モデル

    1978年、奈良県生まれ。5児の母でありながらモデルとして活躍する。
    2010年から国際協力NGOジョイセフのホワイトリボン運動に積極的に参加し、2015年6月に支援先であるタンザニアの視察へ。
    誕生学アドバイザーとしての資格を生かし、現地では妊婦さんやママに誕生学の講義も行った。著書に『「甘え上手」な子育て論』など。

  • Photo0620
    外崎 郁美
    株式会社電通 電通ギャルラボ代表/CDC コピーライター/CMプランナー

    1983年生まれ。TCC新人賞、日経広告賞部門賞、交通広告グランプリなどを受賞。共著に「世界女の子白書」。2011年から国際協力NGOジョイセフと電通ギャルラボ共同でGIRL meets GIRL PROJECTを続け、2016年3月からI LADY. キャンペーンをスタート。

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