コンテンツマーケティングの現場から #14

バズるコンテンツ。促すコンテンツ。

広告キャンペーンの醍醐味は「話題化する」こと。自分たちの立ち上げたキャンペーンが一度でも話題になると、その味はなかなか忘れられません。けれど、コンテンツマーケティングにおいてはその経験が足かせになる場合があります。コンテンツマーケティングは広告と違って、24時間365日生活者とつながり、やりとりするコミュニケーションです。一つのコンテンツがバズっても、そこでは終わらずバズった後の下降局面にも付き合っていかなければなりません。そうすると、「あのバズはなんだったんだろう」ということが起こります。時には「コンテンツは話題になったけど、それだけだったよね」という声が聞かれることもあります。

バズることそれ自体は悪いことではありませんし、あまり届かないよりは多くの人に届いた方がいいに決まっています。ですので、コンテンツづくりの重要なポイントであることは変わりません。
けれど、ここが難しいのですが、「バズること」を目標にしてしまうと、企画する側がついついwhat to sayよりもhow to sayに力を入れてしまうという現象が起きがちです。昔からクリエーティブの世界で「アイデアに困ったら子どもか動物」と言われてきたのと同じように、ネットでバズりやすいネタというものもあるため、表現のためのネタ探しやネタの見せ方に主眼が置かれてしまうのです。

あるいはバズることを目標に置かないにしても、これまでの広告キャンペーンの癖でついつい無意識に「話題になりそうなアイデアを選んでしまう」といったことも現場では起きてきます。
本来、コンテンツとは「相手にとって有益で説得力のある情報」のこと。コンテンツマーケティングでは相手にとって価値あるwhat to sayを伝えることが重要なのに、いつのまにかhow to sayが目的化し本末転倒になってしまう危険性があるわけです。
結果的に生活者には、絵として見えている「how」の部分ばかりが印象に残り「あれって何の話だったっけ?」ということになってしまいます。広告ばかりが覚えられて商品やブランドが忘れ去られてしまうというのは、広告クリエーティブでも昔からあった問題ですが、デジタルになってもその課題は変わりません。

コンテンツマーケティングにおいて、コンテンツはあくまでも価値を伝えて人に行動を促すための「手段」です。コンテンツによって価値を伝えることで、ブランドのファンになってもらう。コンテンツに価値を感じてもらうことによって、生活者にコメントしてもらったりいろいろなコンテンツを回遊してもらう。その結果として今後のマーケティング活動に役立つVOCやログをストックしていくことができる。そんなふうに人に行動を促すコンテンツを長く発信し続けることによって、最終的に多くのファンや生活者の情報を蓄積していくことができる。それこそがコンテンツマーケティングによって生み出される価値です。

では、そんな「行動を促すコンテンツ」はどんなふうに考えていったらよいのでしょうか。現場の作業で見えてきたヒントを5つほどご紹介したいと思います。

①お役立ち情報

当たり前ですが、「正しいやり方」や「いまどきの選び方」、厳選リストやお店マップなどはどこかにいつもニーズがあるタイプの情報です。その情報をどうコンテンツ化するか。例えば有識者に限らず企業の技術者、開発担当者が、専門家として生活者の役に立つ情報を提供するやり方は、何を伝えるかと同時に「誰が伝えているか」が重視される今、大きな説得力を持ちます。そこに企業やブランドの独自性があれば、検索エンジンのアルゴリズムにも評価されやすくなっていきます。もちろん、「すぐ近くのトイレを探してくれるアプリ」のような必要な情報を手軽に引き出せるコンテンツもユーザーに喜ばれやすいものです。

②ユーザーコメントもセットで

商品やサービスの購入を検討しているときに、他の人がどう評価しているかを調べるのはもはや当たり前の行動になりつつあります。自らの発信だけでなく、他のユーザーからのコメントもセットでコンテンツ化しておくことは、特に最後の判断の背中を押すための大事なポイントとなっていくことでしょう。

③CTAを忘れない

行動を促すコンテンツかどうかを知るには、コンテンツ上に人が動いたことが分かるポイントをつくっておかないとなりません。CTA(Call to action)とも呼ばれますが、問い合わせやダウンロードのボタンを入れるなど、後から行動が計測できるようにコンテンツを仕上げておく必要があります。

④フィクション・憧れ、は微妙?

かつて雑誌や広告が描いてきたような憧れの世界。理想のフィクションストーリー。これがなかなか届きにくくなっているという感じは、雑誌や広告の中でも既にあると思います。ウェブの中でも同じで、美しい写真や美しい風景は必要なのですが、ファクトの無いストーリーや中途半端なフィクションは手応えがあまりないケースが出てきています。コンテンツの中のファクトとフィクション、つまり演出のバランスがマスメディア時代とは変わってきていると感じるのですが、皆さまはいかがでしょうか。

⑤生活者の声を聴く

狙った相手にとって何が有益で説得力がある情報なのか。これを捉えるのが最も難しい作業ですが、ここはやはり原点に帰ってソーシャルリスニングでコメントを拾う、コンテンツにコメント機能をつけて生活者の声を聞くといった地道な作業を繰り返していく必要があります。実際にやってみて分かってきていることですが、ブランドに思い入れのある人ほど多様な言葉でブランドを語ってくれます。その内容の深さはグループインタビューを凌駕することさえあります。コメントしてくれる人はそうたくさんいるわけではありませんが、ここに耳を傾け続けるとたくさんのヒントが見つかります。

 

人に行動を起こしてもらうのは容易なことではありません。データ解析によって、タイトルのつけ方など部分的な手法を見つけ出すことはできますが、そもそも身近にいる家族や仕事仲間でさえ思い通りに動いてもらうのは難しいのですから、基本的には簡単に人を動かせるマニュアルやルールは無いに等しいのです。そこが難しくもあり、コミュニケーションの面白いところでもあります。
いずれにせよ、コンテンツマーケティングではコンテンツは目的ではなく「手段」であるということ。あらためて考えていきたいと思っています。

プロフィール

  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1992年電通入社。クリエーティブ局で、広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。現在は、日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティ向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行っている。
    2014年「コンテンツマーケティング27の極意」(翔泳社)、「エピック・コンテンツマーケティング」(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は、2013年、2014年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internasionalなど。

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