ミレニアルズと「未来のスキル」 #02

イケメン読モ・夏川登志郎に、
イケメンなツイキャスの使い方を
教えてもらいました(後編)

  • Natsukawa profile
    夏川 登志郎
  • Web
    能勢 哲司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室
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    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員
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左から、能勢 哲司氏(電通)、夏川 登志郎氏、天野 彬氏(電通)
 

「高度情報社会における“スキル”のいまとこれからのかたちをミレニアルズの実践から探っていく」ことを目指す本連載。「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今存在していない職業につくだろう」(Cathy Davidson ニューヨーク市立大学教授)というこの仕事の未来が不透明な時代に、新世代のデジタル・ネイティブ世代=「ミレニアルズ」の取り組みから“未来のスキル”のかたちを模索します。

前回に引き続き、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)に在籍しながら、読者モデルや自らのアパレルブランドや音楽活動など多彩に活動する夏川登志郎氏にスポットライトを当てます。
いかにして、普通の読モだった夏川さんはツイキャスをはじめとするソーシャルなツールで数々のチャンスをつかみ、現在のポジションへと駆け上がってきたのか。後編では、その方法論を深く掘り下げつつ、自らの活動の今後の展開に向けての考えを聴きました。

■路上ライブはもう古い。ツイキャスライブこそ至高。

 

天野:ファッションの分野でも、ツイキャスをはじめとするソーシャルな活動が功を奏してきたとうかがいました。一方で、夏川さんはライブ動画配信サービスのツイキャスで音楽をやったりしているんですよね。その理由は?

夏川:これまで、無名の人が音楽を他の人に聴いてもらうには路上ライブという手法がありました。でも路上ライブで実際に足を止めてもらうには、よほどうまくないとだめですよね。それに警察の取り締まりもあるので、なかなか公共の場で演奏をしにくくなっていますし、天候なども影響するのでデメリットが多いです。
だから今、不特定多数の人に音楽を聴いてもらいたいなら、絶対にオンラインでライブをやったほうが多くの人に届きますし、効率的です。ツイキャスなら思い立った時、移動や場所取りの時間もゼロですぐに始められますし、視聴者とダイレクトにつながれます。
路上では音楽がうまくないとだめですが、ツイキャスのほうは演奏以外に自分のキャラクターも見てもらえるので、マルチタレント向けです。もちろん音楽を本気でやっている人もツイキャスを使えばいろんな人に見てもらえますし、自分の音楽を発信してファンを増やしていけます。

天野:確かに様々なメリットがありますね。具体的にはどんなことを配信しているのですか。

夏川:アコギで弾き語りをしたり、視聴者のメッセージを読んだり、答えたりということをやっています。ツイキャスはチャット感覚でファンと気軽にコミュニケーションできる点が優れていて、見に来てくれるユーザーのうち8割くらいが10代です。TwitterやFacebookでログインできて、そのアカウント名が表示されるので、常連さんはすぐわかりますし、距離が近いです。

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■読モ×音楽というムーブメント

能勢:音楽はどれくらいのキャリアなのですか?

夏川:実は去年の6月にギターを本格的に始めたばかりです。最初は、読者モデルの仲間とユニットという形でやっていて去年の6月に原宿のThe Sad-Cafeで50人くらい人を集めてイベントをやりました。
その時のイベントを手伝ってくれた人がイベントプロデューサーだったので、また別の人を紹介してくれてテレビのタイアップが決まり、その3ヵ月後には渋谷のO-EASTでライブをすることになりました。

能勢:始めて3ヵ月でO-EAST! それって普通はありえないですよ。

夏川:当時は、読者モデルの音楽ユニットというのが珍しかったからですね。それまでは読者モデルが音楽をやるということがなかったんですが、自分たちが1つのブームを作ったと思っています。これをきっかけに、後輩の読者モデルも似たようなことを始めています。当時は読者モデルのイベントというとファッションショーだけでしたが、今はイベントの中に音楽というコンテンツが加わるようになり、イベントの形が変わったんですよ。

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天野:ファンとのエンゲージメントがあってこその展開ですね。今後は?

夏川:某大手レコード会社さんからお話をいただき、資金や場所を援助してもらいながら活動を続けています。そのプログラムの中で、公式のYouTubeチャンネルも作りました。

能勢:業界大手のレコード会社さんから話が来るというのもすごいですよね。

夏川:その企業としては、読者モデルがYouTuberとして成功できるのか、というところに関心があるんだ思います。
ぼくは、自分発信のブランドやイベント運営、ツイキャスやYouTubeでの音楽活動などの自分がやっていることが体系的に整理されて、後輩の読者モデルがまねをしてくれたらいいと思っているんです。ぼくが成功するルートを作ってあげたら、他の人も入っていきやすいですから。読者モデルというだけで、いまいち伸びきらない人が、伸びていけるような道を作りたいと思っていて、その考えに大手レコード会社さんも共感して手伝ってくれているんです。

■夏川流・動画配信メディアの使い方

 

天野:YouTubeも含め、さまざまなメディアで発信を行っていますよね。そこで留意していることなどがあれば教えてください。

夏川:ツイキャスに似たアプリとしてDeNAのSHOWROOMがありますが、後発なだけあって機能が充実しています。でもSHOWROOMはコメントしにくいところがあって、ツイキャスより閲覧数が多くてもコメントは少なく一方向になってしまうんですよ。実際ファンの人たちもツイキャスのほうがいいと言ってくれるので、ツイキャスのほうを重視しています。

天野:ニコ生もやられていますよね。

夏川:ニコ生は「読モぱぁりない!」という番組に、作る側と出演する側の双方の立場で関わっていました。タイトルも自分の意見を反映させてもらってつけました。内容は名前の通り、いま読モで熱い人を呼んで話をするトーク番組です。だけど、ニコ生を見る層と読者モデルのファン層は違っていることもあって、いまいち試聴回数が伸びませんでした。コメントも匿名でどんどん流れていってしまいましたし。
そのことにも関係しますが、ニコ生への導線が作りにくかったのも試聴回数が伸びなかった理由だと思っています。TwitterでURLを告知しても、リンクをクリックした先でニコ生のユーザー登録が必要になるので、そこで離脱してしまう人が多かったです。また番組を平日の夜7時にやっていたんですけど、その時間もよくなかったなと。ぼくの肌感覚ではツイキャスは夜の8時半から10時くらいがゴールデンタイムですね。

能勢:メディアによって反応が違うということですね。ちなみにFacebookやInstagramなどは活用されていますか?

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夏川:Facebookは完全に実際の友達限定にしていてファン向けには使っていませんね。大学関連の連絡などもFacebook上で行っているので。Instagramは日常の発信というよりも、イベントのこと、モデルの仕事など、作品をきちんと見せる場所として使っています。同じくファン向けの発信をしているツイキャスやTwitterではファンとの距離の近さを大事にしていますが、それとは使い分けています。

■ “芸能界という団体戦”を勝ち抜くために

 

天野:本当にいろいろ多才な夏川さんですが、他の人にはないスキル、得意技を改めて言うと?

夏川:「コミュニケーション」「ソーシャルメディアを活用したファンとのエンゲージメントづくり」「新しいものを生み出すこと」の3つですね。あえてまとめるとするなら、“コミュニケーショナル・ソーシャルメディアイノベーター”でしょうか(笑)。

能勢:コミュニケーションがうまい、ソーシャルメディアを使いこなすというのは他の人にもあるかもしれないですが、夏川さんの場合「あきらめない力」があるのかなと感じました。

夏川:それはイノベーティブなことをやるには必須の力ですよね。自分はこのままではもう伸びないと限界を感じた時に別の方法を探すようにしています。

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天野:つまり、ピボット(方向転換)がうまいということかもと思いました。そのピボットの結果として、やりたいことのために挙げた3つのスキルがうまく組み合わさっていますよね。今っぽいなと思ったのは、夏川さんが自分だけ目立とうと思うのではなくて、周りの読者モデルだったり、若い世代だったりが活躍しやすい事例を作っていこうというコミュニティー志向の部分ですね。

夏川:一般的に個の力で戦うものというイメージがありますが、芸能界というのは団体戦だと思っていて、例えばアイドル、アーティスト、芸人などいろいろな分野がありますが、1人だけ目立ってもだめで、読者モデルという団体として知ってもらう必要があると思います。

天野:20年後はどんなことをやっていると思いますか?

夏川:いまある言葉でいうと、プロデューサーが近いです。コミュニケーションの仕組みをデザインするプロデューサーだと思います。広い意味でのファンビジネスなど、事業のプロデュースですね。

能勢:そういう仕事をした時、自分の仕事の職業はなんと呼ばれていると思いますか?

夏川:コミュニケーショナリストとか?(笑)将来はロボットが人間の仕事を奪うという話もありますが、コミュニケーションやそれを通じたコミュニティーづくりは人間にしかできないことですし、最大の利点ですから、そのプロになりたいですね。


■取材後記:新世代のコミュニティー・ビルディングのかたち

 

今回登場してもらった夏川氏は、ツイキャスをはじめとするソーシャルメディアをそれぞれの特性を踏まえて活用し、ファンとのコミュニケーションを通じて新たなファンをつくっていける稀有な才能の持ち主だった。そうして築いたものの先に、今へとつながるチャンスがあったのだろうと感じられた。
取材当日、実際に夏川氏のツイキャスを見せてもらったが、子どものようなはっちゃけぶりと、まじめに自分の音楽表現をする一人の青年との、二つの顔が見えたのが印象的で、若い子たちに人気が出るのも強くうなずけたのだった。

ボトムアップ的にファンとの絆を構築し、少しずつその数を増やしてコミュニティー化していくこと。これは生活者が発信者にもなる高度情報社会におけるマーケティングモデルとして企業がビジネスを行う上でも大切になる視点そのものではないだろうか。それが個人にもできる――そして時に企業よりうまくできてしまう――という事実。夏川氏が企業以上の動員力を持つケースなどは、そうした時代の到来を明確に告げるものだと思わされる。

セルフプロデュース力を生かしたコミュニティー・ビルディングの実践。これが夏川氏の持つスキルだと感じる。そしてそのためのメディアの使い方を夏川氏は身体知として体得している(だから、教えられたとしても誰もがまねできるものではない)。さらに秀でているのは、ファンだけでなく、読者モデル達のロールモデルにもなり、コミュニティーを盛り上げていくという両面性ではないだろうか。まさに、連載初回で紹介した「ミレニアルズの資質」(デジタル、コミュニティー志向、クリエーティブ、プロモーション体質…etc)をそれぞれ満たす、新世代感あふれるミレニアルズだった。大人が組織化しようとも思ってもなかなか成功しない若者のコミュニティーに、自らの魅力を持ってうねりを生み出していく。個人的な印象論になってしまうが、夏川氏を一言で表現するならば、「デジタルな感性を持った、エンタメ業界における山崎亮さん(コミュニティー・デザイナー)のような人」ということかもしれない。

プロフィール

  • Natsukawa profile
    夏川 登志郎

    1992年生まれ。現在は慶應義塾大学院に在学中。読者モデルとしても活躍しながら、ソーシャルメディアを駆使してファン層を拡張。ツイキャスなどの映像配信も巧みに駆使して、若いファンとのエンゲージメントを築いている。自らのブランドプロデュースやソーシャルな課題についてモデルを集めたトークイベントを実施するなど、新世代的な活動を行っている。

  • Web
    能勢 哲司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室

    中国上海市出身。電通で上海万博プロジェクト、自動車メーカー担当営業を経てクリエーティブブティックへ出向。その後、現在の事業開発領域ビジネスに従事。デジタルファブリケーション分野のビジネス開発からスタートアップ企業との協業、異業種とのネットワーキングに注力している。

  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

    1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院・学際情報学府修士課程修了。
    2012年電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から現職。
    スマートフォンのユーザーリサーチを中心に、現在のメディア環境やオーディエンスインサイトを分析している。
    著書に『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)、『情報メディア白書2016』(2016年、ダイヤモンド社、共著)。その他レポート執筆やセミナー講師など経験多数。

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