「マス富裕層」をつかまえろ! #03

富裕層女性との付き合い方。~「セレブ」「エレ女」の生みの親が語る【後編】

  •                 2
    十河 ひろ美
    そごう
    ハースト婦人画報社 『ヴァンサンカン』『リシェス』編集長
  • Prof 01
    小山 雅史
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 チーフプランナー
  • 20150730 015 2
    石井 香織
    株式会社電通デジタル シニアコンサルタント

富裕層の“マス”化によって生じるビジネスの可能性を探る連載企画。

今回は、富裕層の女性から絶大な支持を受けるファッション誌『25ans』『Richesse』の編集長を務めるハースト婦人画報社の十河ひろ美さんと、電通の小山雅史さん、石井香織さんによる鼎談・後編をお送りします(前編はこちら)。

両社が共同で行った日本の富裕層女性の意識・消費行動を探る調査の結果を踏まえて、ビジネスチャンスや彼女たちを動かすためのコミュニケーションの方法について語り合いました。

     左から、ハースト婦人画報社・十河さん、電通・石井さん、小山さん

消費の鍵を握るのは「しっとり・大和撫子タイプ」

小山:今回の調査では、富裕層女性を5つのクラスターに分けて紹介しています。十河さんが気になるクラスターはどれですか?

十河:クラスター1の「しっとり・大和撫子タイプ」が気になりますね。おしゃれが好きというより、代々受け継がれてきた着物や、資産価値として後世に残せるダイヤを所有していたり。

クラスター1:しっとり・大和撫子タイプ

石井:クラスター1はファッションよりも、旅行に興味を持つ傾向にあります。

十河:海外のイベントに招待されるとビジネスクラスに乗ることがあるのですが、乗り合わせた高齢の方を観察してみると、登山スタイルみたいな服装の方もいて、旅先ではおしゃれよりも、動きやすさや機能性を重視しているのかもしれません。

小山:もし、彼らが動くと消費も動きますよね。

十河:はい。かなり動くと思います。潜在力がありますから。

小山:どのようなコミュニケーションが考えられますか。

十河:きっかけを作ることが重要ですね。特に女性は、きっかけがあればいくつになっても目覚めます。

実際、クラスター1のような知り合いの女性から、「役員になったので服装に気を使いたいが、どうしていいか分からない」という相談を受けたことがありました。

そこで、プロのスタイリストにコーディネートを指南してもらったところ、後日メールが来て「朝着ていくものに迷わなくなって、新しい自分が発見できた」と喜んでくれました。

小山:絶対に自信になりますよね。

十河:そう思います。女性は服装で気分も変わるし、自信にもつながる。クラスター1は目覚めていないだけで、ポテンシャルは高いと思いますよ。

小山:気付きを提供することが大事ですよね。具体的には、どのようなきっかけが響きそうですかね。

十河:時間に余裕があって、内面磨きにも興味があるわけですよね。セミナーやイベントに招待するのはどうでしょうか。

宝石に興味があるけれど服装には興味がない人や、でもメークは少し変えたい人など、色々なタイプがあると思うので、その人たちに合わせた企画の会を開くとか。

石井:美容や健康に気を使っている人は比較的多いクラスターなので、それをさらに一歩すてきにする提案とか。マイナスをゼロではなく、ゼロからプラスにしてく提案は響きそうですね。

十河:やっぱり人生のクオリティーにはこだわっていると思います。でも華美で派手なものはきっと好きじゃない。ファッションであれば、上質で年齢にふさわしい地に足のついたシックなものに触れていただく。値段は高いけれど、鏡の前で絶対に違いが出ますからね。

小山:いいものが1点あると、今度はそれにどう合わせていくかというふうに展開もできますよね。

十河:そうなんです。全てがつながっているので、気付きを与えることができたら、そこから色んな分野に展開するチャンスがありますよね。

◆外見も武器に。「全力投球・人生謳歌タイプ」

小山:クラスター2の「全力投球・人生謳歌タイプ」はいかがでしょう。先ほど話にあった、戦っている人たちですかね。

石井:共働きで、仕事にもファッションにも社会貢献にも全力投球。教育や資産運用にも積極的です。

クラスター2:全力投球・人生謳歌タイプ

十河:働く女性はこれからもっと増えるし、それに応じて女性のキャリアも増えていきますよね。男性ばかりの役員会にぽつりといるときはまだしも、そういう場に女性が増えていくと、きっと互いに外見を意識し合うようになると思います。

小山:競争心が生まれるわけですね。

十河:もちろん、そういう場では中身が大切だけれど、外見の印象も武器になりますよね。服装に気を使うキャリア女性はもっと増えていくと思います。

小山:少し話がそれますが、東南アジアで「あなたにとっての美しさは?」と聞いたところ、「成功のパスポートだ」という答えが多かったんです。すごく正直ですよね(笑)。

十河:思っていたとしても言葉にしないのが日本人ですよね。正直に言うことは下品と思われる文化。そういう点では、コミュニケーションもガツガツやり過ぎると引かれてしまうので、加減は必要だと思います。

◆「無自覚・隠れタイプ」の心を動かせ!

小山:実は5つのクラスターの中でいちばん動かすのが難しいのは、クラスター5の「無自覚・隠れタイプ」だと思っています。

石井:本人に富裕層という自覚がない方です。経営者のお嬢さんにこのタイプが多いですね。                                              

クラスター5:無自覚・隠れタイプ 

十河:社長令嬢だけれど、キラキラした感じは好まないのですね。

石井:ご自身にお金持ちの自覚がなくて、所持しているカードが外商カードであることも知らないという。自分で購入するものは至って普通です。高価なものは親やおばあさんからもらっている。ここの消費を動かすのは大変そうですよね。

十河:自立するタイミングがないですからね。でも、親が死んだらどうしようという不安は抱えていると思います。

小山:自信をつけるためのコーチングとの相性はよさそうですね。

十河:娘の将来が心配な親に集まってもらって、コーチングを紹介するとか。

小山:このままいくと世間知らずのまま、悪い男にだまされるかもしれない。だから、意識を変えていきましょうと。

◆「ふんわり・守られ」「キラキラ・ミーハー」は男っぽさを消す演出?

石井:クラスター3の「ふんわり・守られタイプ」、クラスター4の「キラキラ・ミーハータイプ」はまさに『25ans』の読者という感じでしょうか。キラキラしていて、お姫様スタイルで、かわいらしい感 じ。                                                                          

クラスター3:ふんわり・守られタイプ

                

                                            

クラスター4:キラキラ・ミーハータイプ

十河:実は、クラスター3、クラスター4の人たちの方が性格は男っぽいですよ。サバサバしているからこそ、服装で甘さを演出したり、髪を巻いて、男っぽさを消しているんです。

石井:だからこそ、肉食男子に守られたいという気持ちがあるんですかね。

十河:自分を姫として扱ってくれるような頼れるタイプは好きでしょうね。見た目は肉食系だけれど、常に妻を優先する人。キラキラしている人を受け止めるには、懐の広さが必要だと思います。

石井:草食系は合わない?

十河:キラキラしている人には合わないと思います。クラスター2のキャリア系なら、年下の草食系が合うかもしれません。女子会にもすっと参加できて、酔っぱらった妻をそっと支えてくれるような人。

小山:いずれにせよ、懐の広さが男性には必要ですね(笑)。

お金持ちになる人は数字に強い

小山:十河さんは数多くの富裕層の方々と接してきたと思うのですが、彼らの消費行動について何か気付いたことはありますか?

十河:『Richesse』の読者寄りの話なのですが、富裕層のマインドは2桁引いて考えると理解しやすいということ。

たとえば、富裕層の方が1000万円のジュエリーを買うとき、私たちにとっては1桁差し引いて100万円にしても高額な買い物じゃないですか。でも、2桁引いて10万円だと考えたら、即決できなくもない。それだけに、気に入らなければ1000万円でも買わないし、本当に気に入れば1億円でも買います。

小山:富裕層の方々にインタビューをしていて驚いたのは、お金持ちの人たちは購入したものの金額をきちんと覚えているということ。

十河:お金持ちになる人は数字に強いですよね。何が得で何が損かをしっかりと勘定できるから、裕福であり続けられるのだと思います。

それに、余裕のある範囲内でおしゃれやぜいたくをして、元本は絶対に減らさない。お金持ちゆえの不安もあると思うし、色んな人が近寄ってきますからね。

ホームパーティーに招待されたとき、残った食べ物をラップに包んで保存していました。そういう日々の生活の堅実さがないと続かないですよね。

小山:浪費家ではないですよね。

十河:特に富裕層女性は、ほとんど浪費しませんね。自分にプラスになることや納得がいくものにはお金は惜しまない。

小山:どんなビジネスにも言えることですけれど、やっぱり彼女らの求める理想像や価値に見合うものを提供することが重要ですね。

十河:ひと口に富裕層と言っても、そのライフスタイルはさまざまなので、ビジネスの幅はたくさんあると思います。

小山:それこそ教育だったり社会貢献だったり、旅行もそうですよね。高齢化しているということは、逆に言えばシルバー市場における富裕層ビジネスの可能性も広がるということですよね。

十河:間違いなくあると思います。特にクラスター1のようなまだ磨かれていない人に対して、潜在的に求めているものを提供するチャンスはいくらでもあるのではないでしょうか。

少し話はそれますが、今はハイジュエリー業界が盛んで、あるブランドが催しものをしたとき、ご高齢の婦人が数億円のダイヤを買ったそうです。これは、資産を現金以外の形で後世に残していくための買い物ですよね。

今後、相続税などの法律が変われば、ジュエリー業界はさらに資産運用目的のお客さまが増えるでしょう。

小山:一部の富裕層に対しては、そういうコミュニケーションも可能性があるでしょうね。

マス富裕層を動かすのは、「あなたは特別」という気持ち

小山:一方、今回の調査でマス富裕層には、「自分たちをちゃんと見てほしい」「マスとして扱って欲しくない」という意識が見られました。

十河:それはけっこう重要なポイントだと思います。「あなたは特別です」と言われることは、誰だってうれしいですし、向上心のある富裕層女性ならばなおさらのこと。

先ほどの話にもありましたが、コミュニティーの中で輝きたいという意識は少なからずあると思います。勉強会やお稽古、スポーツクラブに通うのも、主目的の裏側にお友達づくりがあります。

石井:ペットにもそういう側面がありますよね。散歩をしながら飼い主同士であいさつを交わして、コミュニティーが生まれる。

小山:欧米のクラス・コミュニティーに近いのかもしれませんね。クラスという概念自体が日本だとあまり意識しにくいですけれど。

十河:一般的にはクラスは意識しにくいですけれど、実は多くの女性がそういう意識を持っています。だからこそ、自分が一番に見られているということは、とってもうれしいことです。

小山:そこを刺激することですよね。

十河:外商さんとの関係は、その最たる例ですよね。洋服だけでなく、食事の予約も取るし、人によっては人生相談にも乗ってくれる。そのくらい、自分を一番に見てくれていること、気を使ってくれることが、信頼関係にもつながっているのだと思います。

逆に若い世代の人は、ガツガツ来られる外商さんは苦手だったりする。対面が苦手な人も多いですからね。

小山:コミュニケーションの方法は変わってきているのかもしれないですね。

十河:それこそ、若い世代にはネットやSNSを使ったコミュニケーションの可能性も大いにあるでしょう。

小山:間違いなくあるでしょうね。今後はそのあたりの調査も進めて、富裕層ビジネスのあらゆる可能性を探っていきたいと思います。

プロフィール

  •                 2
    十河 ひろ美
    そごう
    ハースト婦人画報社 『ヴァンサンカン』『リシェス』編集長

    1986年、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社、
    ヴァンサンカン編集部に配属。
    1995年mcシスター編集長、97年ヴァンサンカン編集長を経て
    1999年日経コンデナスト(現コンデナスト・ジャパン)に移り、
    ヴォーグ創刊編集長に就任。
    2001年世界文化社にてミス編集長を務めたのち、
    2006年ハースト婦人画報社に再入社し、2度目のヴァンサンカン編集長に。
    2012年ハイエンド季刊誌リシェスを創刊し、
    現在はヴァンサンカン&リシェス両編集長を務める。

  • Prof 01
    小山 雅史
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 チーフプランナー

    1995年電通入社。イベント、PR、マーケティング部署などを経て、
    2010年から3年間リージョナルプランニングディレクターとしてシンガポール駐在。
    2013年に日本に戻り、食品、金融、飲料、化粧品、家電、薬品などの事業開発、
    グローバルマーケティングプランなどうを担当。
    現在、慶応義塾大学非常勤講師も務める。

    「富裕層」を絶賛深掘り中。
    海外の桁違いの富裕層が気になる今日この頃。

  • 20150730 015 2
    石井 香織
    株式会社電通デジタル シニアコンサルタント

    2002年電通入社。衛星メディア局でBSデジタル放送・CS放送の担当を経て、2009年マーケティング部門へ。飲料、酒類、食品、ファッションなどのメーカーから官公庁まで、国内外の様々な業種のプランニングを担当。
    「ジセダイ育成委員会」「ママラボ」プロジェクトメンバー。加えて、富裕層を絶賛研究中。
    母として、女性として、一個人としての感性を大切に、日々精進しています。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ