ミレニアルズと「未来のスキル」 #03

6秒でオーディエンスの心をつかむ、
けみお流動画クリエーティブ術

  • 20150415 123
    けみお
  • Web
    能勢 哲司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室
  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員
102
左から、能勢 哲司氏(電通)、けみお氏、天野 彬氏(電通)
 

「高度情報社会における“スキル”のいまとこれからのかたちをミレニアルズの実践から探っていく」ことを目指す本連載。「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今存在していない職業に就くだろう」(Cathy Davidson, ニューヨーク市立大学教授)というこの仕事の未来が不透明な時代に、新世代のデジタル・ネイティブ世代=「ミレニアルズ」の取り組みから“未来のスキル”のかたちを模索します。

今回フィーチャーするのは、一度見たら忘れられないルックスと、ちょっとウザいけど思わず見て笑ってしまうようなあるあるネタが詰まった6秒動画のVineで注目を集める「けみお」さん。女子中高生からの人気も絶大で、Google AndroidのCMにも登場したり、Eテレの「お悩み解決! ベーシック数学」にレギュラー出演するなど、ネット以外にも活躍の場を広げている。今回は、バズる6秒動画を生み出すという新世代のスキルを持つミレニアルズとしてのけみおさんの実態に迫り、そのスキルのあり方を解明していく。

■けみおはSNSをこう使い分けている!

 

天野:けみおさんといえばVineで面白い動画をたくさんつくって配信している人というイメージがありますが、現在はどんな活動をしているのですか?

けみお:メーンは芸能活動で、雑誌モデル、イベント、歌手活動、最近はテレビ番組への出演なども増えてきています。ネットでは、Twitter、Vine、ツイキャス、Instagram、ブログを使って、プライベートのけみお自身を伝えています。

能勢:今メーンとなっている芸能活動との、そもそもの接点は?

けみお:小さい頃から学芸会で主役を狙ったり、目立ちたがりだったんです。目立ちたいの頂点が芸能界でした。
芸能界に入るきっかけは「HR」です。HRは現役の高校生が登場する雑誌で、高校生といえばこの雑誌。自分も出たいと思って、編集長にたくさんメールしたのですが、全部無視されました。こういうキャラは学校では受けても、世間で受けるにはハードルが高いのかなと思ったのですが、その雑誌の取材を編集部の人からTwitter経由で誘われ、それ以降その雑誌の専属モデルとして毎号出るようになりました。HRで評価されて学校の外に出られたというのが自信になりました。これが最初に出た号です。恥ずかしい!

HR
 
 

天野:きっかけにも深くソーシャルメディアが関わっているのですね。Twitter、Instagram、Vineはどういうふうに使い分けていますか?

けみお:みんなに驚いてもらうようなネタはTwitterですね。一番フォロワーが多く拡散しやすいので、たくさんの人に知ってもらいたいものはTwitterで発信します。Twitterのフォロワーは、ぼくのことが好きというよりも、ぼくの動画が好きでフォローしてくれたり、テレビを見て知ってフォローしてくれるライトなファンが多いですね。

050

Instagramの方は、Twitterよりもコアのファンが多くて、けみおのことをもっと知りたい人に向けて発信しています。写真を撮るのが好きなので、Instagramは全部スマホで撮影して、スタンプなどを使って加工してアップしています。Vine動画は最大6秒ですが、Instagramは15秒までアップできるので、Vineよりも長い動画を上げています。Twitterは最近30秒までの動画を直接アップできるようになったのでこちらも試しています。

■女子高生の人気を集める理由は「共感力」と「代弁力」

 

能勢:中高生の女の子から支持を集めて、共感を得ている理由はどこにあると思いますか?

けみお:憧れがあるみたいです。ファンの子たちによく言われるのが「けみおみたく、毎日を楽しみたい」ということ。変なメークをして街に出掛けたり、友達とふざけている動画をアップするといような好きなことを思い切り楽しんでいるところに憧れるみたいです。
あと、動画のネタが「共感」されていて、女の子の気持ち、本音を代弁してくれていると言われます。例えば女の子って胸の大きさとかいろいろ言われるじゃないですか。あれは嫌だろうなと思って、それをネタにした動画を投稿したところ、共感されて、男子に「これ見ろよ!」みたいな形でシェアされたりしました。自分では言えないことをけみおが言ってくれるから好きって言われます。

天野:つまり、「共感力」と「代弁力」が鍵なんですね。

けみお:それにファッションですね。自分は好きなものを着ているだけなんですけど、「自分も着たいけど着れないものを着てる」って言われることも多いです。

天野:ちなみに服はどういうところで買っているんですか? やっぱり原宿?

けみお:実は自分で着たいものを作ってるんです!今日のも自作なんですよ!

■バズるかどうかの命運は、投稿後1分で決まる

 

能勢:女子高生のしゃべり方のまねとか、しぐさとか、どこからインスピレーションを受けるのですか?

けみお:普段から女の子と遊ぶことが多いので、友達のしぐさとか、よく使うフレーズとかがいつの間にか移っちゃって、そのままやっていることが多いんですよ。

能勢:けみおさんの動画は、一歩間違うと「私たちのことバカにしているの!」と反感を買いそうなんですが、そうはならずに共感を呼ぶところがすごいですよね。

けみお:ファンの方からは、全力で女子高生になりきって、しぐさも口調も合わせているからムカつかないと言われます。その場その場でハッピーさ、おもしろさを前面に出して楽しくやっているので、動画を見ると昨日のテストの点数とか嫌なことを忘れられたりできるみたいです。

天野:一人二役の時に、カメラの位置を切り替えたりと、撮影が凝っていると思うのですけど、1本作るのにどれくらいの時間をかけていますか?

057
 

けみお:普段思いつきでやっているので、1本撮るのに大体10分もかからないですね。クオリティーにはこだわっていますが、その場で撮ってつないでというふうにVineの録画機能だけで作っていますし、自分一人で撮っています。

能勢:コンスタントに動画を配信していると思うのですが、いわゆるストック(撮り貯め)はあるんですか?

けみお:いえ、ないです! 全て作ってからすぐに公開するようにしています。

天野:やはり動画は鮮度が重要ということですね。ちなみに、これはバズるな、みたいなのは撮影している時に分かるんですか?

けみお:全然分からないですね〜。でも、アップした後1分の反応でどこまで伸びるかは大体分かります。動画をアップするとフォロワーにプッシュ通知されるので、バズるネタはアップして1分後くらいから拡散し始めて、その後1時間くらいですごく伸びます。逆にその広がる波に乗らないと、いくら時間がたっても拡散せずに終わってしまいます。

■最初のヒット動画は、まさに「ワンチャン」動画

 

天野:1分で反応が分かるというスピード感がすごいですし、今っぽいですね。そもそもVineを始めようと思ったきっかけは?

けみお:最初は、高校の友達に見せたくて作りました。高校でワンチャンスのことを「ワンチャン」っていうのが流行っていたんですけど、自分はその言葉が腑に落ちなくって、それをネタにした動画を作りました。そしたら、ワンチャンは自分の高校だけではなくて、いろんなところで使われていて、同じように違和感を感じていた人がたくさんいたみたいで、すごく拡散しました。それを見て「ほらな!」って思って、共感してくれた人がたくさんいることがすごくうれしかったですね。

能勢:なるほど、本当にワンチャンあったわけですね!

天野:動画配信アプリは様々ありますが、その中でVineのおもしろさはどこにあると思いますか?

007
 
けみお:6秒っていう短さですね。Twitterの140文字と同じで、6秒という制限があるところ。そして、無限のループができるところでおもしろさが生まれます。あとVineだけで編集できる手軽さもいいですね。

Twitterに流した時、従来のYouTube動画埋め込みでは再生までワンクッションありますが、Vineはそのまま再生されるので見てもらいやすいという仕組み上の利点もあります。

能勢:Vineの以前に動画を作った経験はあるのですか?

けみお:中学生のころに、ダンスしている動画をYouTubeにアップしたりはしていました。ジャスティン・ビーバーってYouTubeから人気になったじゃないですか。昔から芸能界に憧れがあったので、自分も動画を上げていけば有名になれるかもと思って上げていました。

天野:へぇ!そのYouTubeの経験で発見はありましたか?

けみお:中学生の時はノリでやってて、ハチャメチャでした。特に何も考えていなかったかも…。あ、でも流行のネタを入れると再生数が上がるとか、タイトルに「現役中学生が全力で踊る」とつけて目を引くとか、やりながら工夫していましたね。

天野:影響を受けたクリエーターとかいますか?

けみお:海外のクリエーターは面白い方がいるので、YouTubeやVineなどをよく見ています。自分は顔だけ映してしゃべっているけれど、海外の方の中にはショートムービーみたいに手が込んでいる作品があるので、いずれ自分もやってみたいと思います。

■けみお流「バズる動画を生みだすスキル」に迫る

 

天野:ご自分のスキルは何だと思いますか?

けみお:スキルなのかは分からないですけど、その場を盛り上げることですね。あとは動画を作ってバズらせるスキルですね。

能勢:普通の人はなかなかバズる動画を作ることはできないですよね。けみおさんならではの工夫は?

085
 

けみお:昔は漠然と盛り上がってノリでやっていましたが、最近は共感してもらえるようなこと、流行、時事ネタを入れるようにしています。
例えば、テレビで話題の恋愛映画が放送されると、みんな見ますよね。最近は見ながらTwitterで感想をツイートしたり、映画が終わった後に、検索してみんなの感想を探す人が多いです。そこでこの流れに入れるように映画にツッコミを入れるような内容の動画をアップすると多くの人に見てもらえます。みんなが見る番組の後に、その番組に関するVine動画をアップするなど、けっこうタイミングが重要なんです!

天野:フローの速度が早いネットの場だからこそ、ネタのピックアップや配信におけるタイミングが重要になってくるんですね。
一方で、最近は敷居が下がったこともあって動画をアップする人たちがたくさんいますが、その中で自分が注目を浴びる理由はどこにあると思いますか?

けみお:最初にアップした時は高校生だったこと、Vineがそこまで浸透していなかったことから話題になったのかもしれません。周りからは男の子なのに女装していたりするところがいいと言われます。

天野:先ほどの話にもつながりますが、マジでやっているのがリスペクトにつながっていると。

能勢:普通の男子高校生はカッコつけたい時期なのに女装したりできるのがすごいですよね。普通、動画をアップしたら明日学校で何言われるかと不安になったりしますし。

けみお:逆に、僕はそれがワクワクするんですよ。何かやった時の周りのリアクションが楽しみなんです。

■ネットとリアルのバランス。その先にある「スーパーアイドル」という理想形

 

天野:今後はどういう活動をしていきたいですか?

けみお:あまり考えていなくて、その時々で楽しいことをやっていきたいです。あと半年で20歳になるので、同世代だけでなく上の世代にも共感してもらえるように、幅を広げていきたいです。ネットの世界を極めつつも、タレントやMCなどテレビやリアルイベントなどで活躍したいです。歌手活動もしていますし、エンターテインメントの活動ならなんでもやりたいです。
先日、ワンマンライブをやってみて感じたのが、生で人を感動させることのすごさです。ネットがあるから自分の感性や世界観を発信できるし、フォロワー数は人気のバロメーターにはなると思うのですが、それで価値判断をされることから脱却したい、そういう指標では測れない領域に行きたいと思っています。ネットで40万人フォロワーがいるのはうれしいけれど、イベントで40万人を生で感動させられる方がかっこいいと思うようになりました。

091
 

天野:20年後どういう仕事をしていて、それはどんな職業だと思いますか。

けみお:20年後は40歳…、想像できない! 動画を作るというのも、20年後は誰でもできることになっていると思うので、いろいろな形で人を楽しませられるエンターテイナーとして生きていたいです。

天野:将来の自分の仕事に肩書をつけるとしたら?

けみお:スーパーアイドル。高校生のころからスーパーアイドルになりたいと言っています。

天野:野暮だとは思うのですが、そのスーパーとは、どうスーパーなんでしょうか。

けみお:スーパーだから、なんでもできます、なんでもありです。ミッキーみたいなスーパースターです!

天野:けみおさんらしいですね!ありがとうございました。

026
 

【取材後記】動画クリエーターの未来形

告白してしまうと、Vineで見せる、けみおさんのとてもコミカルな側面しか知らなかったので、インタビューがどんなものになるのか、実は直前まで心配していました――うまく受け答えができなかったらどうしようと。けれど、そんな不安はまるで杞憂だったと言わざるを得ないほどに、インタビューの始まりから終わりに至るまで、質問の意味をくみ取りとても真剣に回答してくれたのが印象深く残りました。
けみおさんはとてもオープンな人であり、誰とでもつながれるポジティブな力を持っている。芸能界文脈で例えるならば、「毎日がオーディション」という気負いのある姿勢というよりは、「毎日がランウェイ」という自然体でハッピーな自己肯定感にあふれたたたずまいが、きわめてミレニアルズ的だといえるように感じられました。
いまやインターネットの浸透、そしてスマートフォンの普及によって、人々のアテンションの尺はどんどん短くなっているとも指摘される中で、6秒を「最適な尺」として扱いながら、同世代からの支持を集める共感力や代弁力を兼ね備え、「等身大の憧れ」を生み出し続けるけみおさんの活動に、私たちは一つの動画クリエーターの未来形を見ています。
もともと身の回りの友達にシェアするために始めたということ、そして最終的にはリアルに目の前にいる人たちを感動させる立場になりたいということ――ネットを軸に活動しながらも、絶妙にネットとリアルのバランス加減を保つところも、ネットが当たり前にある環境で育ってきたデジタルネイティブとしての感性ではないでしょうか。
私たちは「6秒」という時間で何をなしうるのか?多くの人はその問いに対してフリーズしてしまうかもしれません。しかし、けみおさんにとって「6秒」という時間の長さは、自らの表現力とそのポジティブさを世界中に伝えるだけの最小単位の時間であるのでした。その6秒の間に人の気持ちを動かすコミュニケーションの力を圧縮できる能力こそ、間違いなく次世代=ミレニアルズ特有のスキルなのだと言えそうです。

プロフィール

  • 20150415 123
    けみお

    1995年東京生まれ。高校在学中に、雑誌『HR』にてモデルとして活躍し、卒業後の今でも引き続きレギュラー出演中。6秒動画Vineに投稿した面白い動画がきっかけとなり、世界的に注目を集める。現在は、SNSの世界にとどまらず、テレビ番組のレギュラー出演や広告出演、けみお&アミーガチュというユニット名義でアイドル活動も実践中。テレビでの取材も多数。新しいツールを駆使して多くのオーディエンスの気持ちをつかめる映像がつくれること、高い共感力、新しいツールへの順応性が特筆ポイント。またウェブ上のコミュニケーションに欠かせない「ツッコミビリティー」(突っ込まれやすさ、いじられやすさ)を持ち合わせている点も高デジタルネイティブ感。

  • Web
    能勢 哲司
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 事業開発室

    中国上海市出身。電通で上海万博プロジェクト、自動車メーカー担当営業を経てクリエーティブブティックへ出向。その後、現在の事業開発領域ビジネスに従事。デジタルファブリケーション分野のビジネス開発からスタートアップ企業との協業、異業種とのネットワーキングに注力している。

  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

    1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院・学際情報学府修士課程修了。
    2012年電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から現職。
    スマートフォンのユーザーリサーチを中心に、現在のメディア環境やオーディエンスインサイトを分析している。
    著書に『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)、『情報メディア白書2016』(2016年、ダイヤモンド社、共著)。その他レポート執筆やセミナー講師など経験多数。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ