鍛えよ、危機管理力。 #02

拝啓、危機管理担当者様。ペンタゴンモデルで危機対応力を測りませんか?

  • Dpr pr sakai kanji
    阪井 完二
    株式会社電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略室 室長/企業広報戦略研究所 副所長

7月から始まりました「鍛えよ、危機管理力。」

同じ時期に始まったフジテレビの「リスクの神様」でも、西行寺室長率いる危機対策室がさまざまな難局を乗り越えています。

電通パブリックリレーションズの企業広報戦略研究所でも、企業の危機管理力向上に貢献するためには、経験も重要だがデータも必須だと考え、東京大大学院情報学環総合防災情報研究センターと共同で「企業の危機管理に関する調査」を実施しました。

第1回連載記事でも書きましたが、392社の危機管理担当者から回答を得ることができました。回答数の多さからうかがえる注目度の高さに驚いています。

これからこの連載を通して、調査結果をベースに企業の危機管理力の現状と課題を考えていきたいと思います。

■拝啓、危機管理担当者様。

調査を実施するに当たり、調査票を「危機管理担当者様」という宛先で企業に送りました。「危機管理担当者様」という宛先で送った調査票が、いったい企業のどこの部署にたどり着くのか? これも一つの興味関心事でした。

●図1危機管理担当セクション一覧

結果は、やっぱり総務・人事、経営管理が危機管理担当のトップ2なんですね。半数以上を占めています。次いで危機管理の専門セクションが3位に。そして広報・IR・CSR系部門。ある意味、「危機管理」は担当部門が明確でないということも読み取れます。

ドラマのように「危機対策室」などの専門セクションがあればいいですが、そうではない企業が大多数。だからこそ、緊急時にはどこが対応すべきか曖昧になり、対応が後手になるのかもしれません。

■危機管理力がひと目で分かる「ペンタゴンモデル」を開発

多くの企業の危機管理に関する活動を評価するために、「危機管理ペンタゴンモデル」を開発しました。

独自に設定した5つの力「リーダーシップ力」「予見力」「回避力」「被害軽減力」「再発防止力」を数値化し、五角形(ペンタゴン)にその数値をプロットすることで、企業の危機管理の強み・弱みがビジュアル的にも、分かりやすく評価できるようになりました。

図2 危機管理ペンタゴンモデル

それぞれの力は、次のように定義をしました。

①リーダーシップ力:組織的な危機管理力向上に対するトップなど経営陣のコミュニケーション・実行力。

②予見力:将来、自社に影響を与える可能性がある「危機」を予見し、組織的に共有する力。

③回避力:危機の発生を未然に予防・回避、または、危機の発生を事前に想定し、影響を低減する組織的能力。

④被害軽減力:危機が発生した場合に、迅速・的確に対応し、ステークホルダーや自社が受ける被害を軽減する組織的能力。

⑤再発防止力:危機発生の経験と向き合い、より効果的な危機管理や社会的信頼の回復を実現していく組織的能力

「予見力」「回避力」は、事件や事故などが発生する前の平常時に行う活動。「被害軽減力」は危機発生時に、「再発防止力」は事後に行う活動。そして全体をけん引する「リーダーシップ力」と位置付けられます。

■あなたの業種の危機管理力ランキングは?

それぞれの力ごとに、10問の具体的な活動などを聞いた調査により、15業種の危機管理力ランキングを算出しました。

概要はこちらhttp://www.dentsu-pr.co.jp/csi/csi-research01.html

図3業種別危機管理力ランキング

1位は圧倒的に「電力・ガス」、2位は「食品」、3位は「運輸・倉庫」、4位は「金融・証券・保険」と、ある意味、危機に直面することが多い業種が並んでいるようにも感じます。

この調査の後、さまざまな回答企業を訪問してお話を伺いましたが、やはり危機を経験したことがある企業は、危機管理活動をしっかりしているという印象でした。過去に経験した危機事象を踏まえた対応策がとられているのです。

データ上でも、危機遭遇経験のある企業は、ない企業と比べて圧倒的に危機管理力が高いのがお分かりかと思います。

図4 危機遭遇経験のある企業・ない企業の危機管理力比較

■危機対策を左右するトップのリーダーシップ力

しかし、危機に直面してみないと、危機対策に投資をするのがままならないというのは、多くの経営陣が「危機管理」を、いまだにコストとして捉えていることが多いからなのかもしれませんね。他社などで発生した危機事象を、自分ごと化し対策がとれるかは重要な経営判断といえるでしょう。

ランキングに話を戻すと、危機管理力が平均以下となったのは8業種でした。なかでも「卸売・小売」(69社)、「情報・通信」(19社)、「その他」(17社)、「機械」(21社)の「リーダーシップ力」は、1位「電力・ガス」の半分以下のスコアに低迷しています。

リーダーシップ力は「組織的な危機管理力向上に対するトップなど経営陣のコミュニケーション・実行力」と定義しているように、社長やCRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)などの危機管理担当役員が、自社の社員をまとめ上げる力です。組織が一丸とならないと、危機対策はうまくいきませんよね。他社で発生した危機事象を、自分ごと化し対策がとれるかもリーダーシップによるところが大きいといえます。

第3回では、この危機管理における「リーダーシップ力」についての考察をお届けします。
ご期待ください!

 

企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称CSI)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーション内の研究組織です。

 

 

 

プロフィール

  • Dpr pr sakai kanji
    阪井 完二
    株式会社電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略室 室長/企業広報戦略研究所 副所長

    企業ブランド・広報戦略のコンサルティングと実践を主に提供。企業ビジョン開発や経営戦略発表会実施、トップマネジメントのためのメッセージづくりやメディアトレーニング、KPI分析、また、危機管理体制構築支援・緊急時広報活動支援などを数多く実践。ICT、ヘルスケア、エネルギー企業などへのさまざまな実務経験をもとに、幅広いPRコンサルティングを提供。 一方で、「東日本大震災時の企業広報実態調査」や「2013年ネット選挙解禁による投票行動の変化」などソーシャルイシューの調査研究を実施・発表している。 日本PR協会「09年PRアワード」グランプリ受賞、国際PR協会2010 「Golden World Award」コミュニケーション・リサーチ部門最優秀賞受賞。アジアパシフィックPRアワードBusiness-to-Business部門受賞。2010・2011 PRアワードグランプリ審査員、日本PR協会認定PRプランナー。
    執筆:販促会議別冊「インターネットマーケティング完全ガイド」、広報会議「評判を調査分析する方法~レピュテーション調査を有効に活用するには」「今年のイシューを予測する」、経済広報「東証一部上場企業の企業広報力調査2014」など。

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