動画の時代にもう一度「広告」を創出する
クリエーティブ×メディア×PRで臨む~オンライン動画制作チーム「鬼ムービー」始動

  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長
  • C profile
    鹿間 天平
    株式会社電通 MCプランニング局 インタラクティブ・プロデューサー
  • M profile
    根本 陽平
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 シニア・コンサルタント

今、インターネットにおける動画視聴は、私たちの生活に急速に浸透しています。オンライン動画市場は日本国内でも急激に拡大し、広告主からも熱い視線が注がれています。その流れを受け、電通ではオンライン動画制作の専門チーム「鬼ムービー」を立ち上げました。クリエーティブ、メディア、PRの専門家が部門横断的にチームを編成し、生活者の心を動かすオンライン動画を追求していきます。チームのリーダー的な役割を担うエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターの佐々木康晴氏、デジタルメディアのプロフェッショナルとして携わる鹿間天平氏、PRコンサルタントの根本陽平氏に今回のチーム立ち上げの背景と、今後の展望を聞きました。

鬼ムービー
 根本陽平氏(左)、佐々木康晴氏(中央)、鹿間天平氏(右)

 

「鬼ムービー」とは?

オンライン動画市場の広がりと広告主ニーズの高まりを受けて立ち上げた、電通グループの横断組織。オンライン動画制作の経験豊富なクリエーター、メディア活用やユーザーのインサイトに知見の深いメディアの専門家、生活者の間で拡散していくPR設計に長けたPRの専門家などが加わった約30人で構成。オンライン動画を企業の課題解決の新たな手段としながら、メディア開発や次なるコンテンツのあり方の模索にも取り組んでいく。 ちなみに「鬼」は、20歳代のメンバーが発案。「鬼ヤバい」「鬼泣ける」など、オンライン動画を当たり前に楽しんでいる若年世代が使用している「鬼」という言葉を冠して、「鬼○○」な動画を生み出すチームという意味を込めている。

 

~クリエーティブの視点から~
デジタル時代のユーザーを大きく動かす

佐々木康晴氏  電通 CDC エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

佐々木康晴氏
 

オンライン動画では、今年のカンヌライオンズで象徴的なできごとがありました。米自動車保険会社GEICOが、5秒たったらスキップできるという動画広告の特性を逆手に取り、5秒で主要な広告部分が終了するという動画広告を制作。これがフィルム部門でグランプリを獲得した。オンライン動画は工夫次第で皆が見てくれる、かくも明るい場所まで来たのだと感じました。実際、うまくギアを入れて気持ちを動かしたことで、1億ビューを超える動画が現れ始めています。

広大なネット空間におけるオンライン動画は、見てもらえないことがまず前提です。そこが、テレビCMなど、人がメディアに接触する流れの中で見てもらいやすい従来のマス広告と大きく異なる点。単に広告を出す場所が増えたとか、長尺でたくさん商品を見せることができる、というものではない。どうしたら「じゃあちょっと見てみるか」という気持ちになるかを考える必要があります。海外ではそれを分かっていて、やはり去年のカンヌで受賞した米アパレルブランドwrenの「ファーストキス」のような、商品説明を一切することなく、みんなが気持ちとして欲しがっている、あるいはメッセージに共感できるコンテンツで高い反響を得ることで、見事に売り上げにつなげる例も出てきています。

鬼ムービー
同じ動画広告というフォーマットでも、受け取り方が変われば、おのずと中身も違うものが必要です。例えば夜、寝つく直前にスマートフォンでなんとなくネットを見ているときに、どんな動画なら受け入れられるでしょうか。家族で見るには気恥ずかしくても、ちょっと心温まるような動画がいいかもしれません。少なくとも、企業の声高な商品紹介メッセージを届けるのは難しそうです。あるいは、広告がLINE上にあるか、情報の取得が目的のGoogle上にあるかでも受け取られ方が変わってきます。そんな距離感が分かっていることが、非常に重要になってきます。

ものすごいスピードで拡張し続けるネット空間では、表現だけ、メディアだけ、で考えるのでは限界がある。今回「鬼ムービー」には、各分野でデジタル領域におけるユーザーの気持ちの動かし方を探ってきたメンバーが、一緒に知見を合わせることでもっと面白い、パワーのあるものができるはずとの思いで結集しました。発足直後から反響がすごくて、約30人のメンバーがすでにフル回転しています。

今、かつてテレビCMが生まれたのと同じくらい大事な時期にいると感じています。ユーザーとブランドの新しいつなげ方を発明して、動画広告は確かに効くとクライアントに思ってもらえる場所、そして質の高いクリエーティブなチャレンジができる場所にしていきたい。多忙なメンバーがそろって集まるのは至難の業ですが、ばらけないで活動していきたいですね。


~メディアの視点から~
メディアと一緒に創る、これからの動画あり方 
 

鹿間天平 電通 MCプランニング局 インタラクティブ・プロデューサー

鹿間天平氏
少し前から動画の時代が到来したといわれてきましたが、今、それがようやく確かなものになっています。スマートフォンの普及と通信環境が整ったことで、今やあらゆるコンテンツが動画化してきている。新しいメディアも次々に登場し、ユーザーからの発信も当たり前になった。まさに機が熟した、と感じています。

この春、米ニューヨークで開催された「デジタルコンテンツ・ニューフロント」に行ってきました。元々はテレビネットワーク各社が次のシーズンの番組編成をプレゼンして広告枠を先行販売する「アップフロント」にならって、2008年にデジタルメディアのアピールの場として始まったものですが、そこではYahoo!やYouTube、Huluといったデジタルメディアにとどまらず、米紙ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナル、雑誌のコンデナストや金融情報のブルームバーグなどが、一斉にテレビ番組に引けを取らない高品質の独自オンライン動画コンテンツを打ち出していて、オンライン上のコンテンツが質量ともに、既にここまで充実しているのか、と驚きを覚えました。

そしてそのコンテンツは、媒体の枠を超えて、どのデバイスで、あるいはどこで視聴しようと、同一の価値があるとして評価されている。その広告枠も同様です。日本とアメリカとでは、そもそも環境が違うので、全く同じ道をたどるとは限りませんが、民放各社合同のキャッチアップ配信の流れが強まったり、Netflixがオリジナルのコンテンツ開発に注力していくというアナウンスがあったりと、日本のネット上にも、いわゆるプレミアムな動画コンテンツが増え始めていて、ついに流れが大きく変わってきたなと感じています。

鬼ムービー
そんな動画コンテンツの浸透とともに、単に“バズればいい”という考え方から、本当にその動画が、生活者の心をつかんで動かしているのか、本来のコミュニケーション課題の解決につながっているのかを見極めることが非常に重要になってきています。

ただし、そこに正攻法が存在しているわけではなく、日々新しいテクノロジーやメディアが生まれくるため、それぞれが抱える課題を解決するための動画のクリエーティブや、新しいメディアを活用しての広げ方の開発は無限の選択肢から正解を探してくるような仕事です。

だからこそ、既存の広告枠をどう使うかを考えるだけではなく、別の視点を持つプロたちとチームとして動くことによって、思いもよらない新しい伝え方が生まれたり、メディアそのものを開発していく事も十分あり得ると思っています。

混同されがちですが、動画自体はメディアではなく、フォーマットにすぎません。デジタル化にともない、生活のあらゆる場面に動画が溶け込んできている。ハリー・ポッターじゃないけど、遠くない未来では、新聞で動画が流れるかもしれない。あるいはウエアラブルデバイスで、ホログラフのように至近距離で見る動画が当たり前になるかもしれない。当然、そこで展開される広告にとっても、とてつもない可能性が広がっています。

ここでもう一度、異なる専門性を持つ者が一堂に集まり、あらためて「これからの動画のあり方」を探求するために「鬼ムービー」は立ち上がりました。知見が蓄積されたトラディショナルメディアでは分業が効率的となる部分もありますが、同じように今の段階で、動画「広告」だけを切り離して見てしまうと、コスト効率だけにとらわれるなど、どうしても視野が狭くなってしまう。コミュニケーションを全体で俯瞰しながら、複数の専門分野の視点から「動画」の新たな可能性を見つけ出していけるのが、このチームの最大の強みだと思っています。アメリカンドリームさながらの「皆が夢を見られる場所」として、メディア各社と手を取りながら、未開の地を開拓していきたい。それがこのチームのミッションでもあると考えています。


~PRの視点から~
情報流通経路を設計し、生活者の文脈に寄せて“自分ゴト化”を

根本陽平 電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 シニア・コンサルタント

根本洋平氏

PRの領域でも、動画はデフォルトになりつつあります。映像は、テキストや静止画よりも直感的に、多くのことを伝える力があると思います。一方で、動画の制作や公開・発信までのハードルが非常に低くなっているのを感じます。企業自身がメディアとなって周辺の人たちの心を揺さぶるコンテンツを発信していく昨今のブランドジャーナリズムの流れとも合致し、伝播しやすい映像の形での情報の展開は今後増えるでしょうし、重要性も高まると捉えています。

そもそもリーチがない状態を前提とするオンライン動画をどう人々に見てもらうかを考えるのは、もともとやってきた活動に近いところがあります。PR会社は情報を流していくというイメージが強いかもしれませんが、PRというのはもともとパブリックリレーションズの省略語で、一方的な情報発信ではなく、世論の構築や合意の形成などmpように、相互の関係を築く戦略的コミュニケーションのプロセスのことをいいます。メディアや生活者が“語りたくなる”視点をもって価値の高い情報を仕立てていくことがなりわいのひとつです。なので、生活者との距離が近いオンライン動画とは、生活者の文脈に寄り添って“自分ゴト化”するという視点の部分で親和性があるといえます。

根本洋平氏

「とにかくバズらせたい」というリクエストを受けることが増えています。そもそも「バズる」ということが目的なのか、手段なのかを明確にしたいところはありますが、仮に“バズ”を狙うのなら、偶然を待っているだけでは始まりません。

バズるものには理由があります。世の中でバズっているものを研究・分析することで、どんなコンテンツで、どこに火をつけるとどのように広がっていくのかということを、戦略的に設計できると考えています。

生活者に対して何が刺さるのかを考えた場合、「乗り物」(=コンテンツ)が魅力的なのか、「乗り場」(=メディア)が特徴的なのか、あるいは、「ルート」(=情報流通経路)が効果的なのか、という視点が重要です。車なのか、飛行機なのか、トラックなのかスポーツカーなのか、羽田から出るのか東京駅から出るのか、それが高速を走るのか一般道を通るのか、生活者に届くまでの最適な方法を考慮することが必要です。

「鬼ムービー」発足により、クリエーティブとメディアとPRが、始めからワンテーブルで企画できる環境が整ったので、この“最適な方法”を探しやすくなったと思っています。コミュニケーションの目的も、好意度や認知の向上、あるいはエンゲージメントの構築など多様ですが、三者がスタートから一緒に考えることで、より効果的なクリエーティブや情報経路の設計が可能となるのではないかと思っております。

また、日々変わっていく世の中やメディアの流れに対応する更なる一手を打つためにも、知見が一つの場所に蓄積されていくことも重要だと感じます。

今、動画という一つのフォーマットが、新しい何かになっていく瞬間だと感じています。それが市場なのか、メディアなのか、スタイルなのか分かりませんが、「鬼ムービー」をモデルケースとなる場所にしていきたいです。

プロフィール

  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長

    1995年入社。コピーライター、インタラクティブ・ディレクターなどを経験した後、2011年からニューヨークに出向。帰任した現在もCDCとDentsu Aegis NetworkのExecutive Creative Directorを兼任し、グローバルとデジタルの間で、日々面白いものをつくろうともがいている。カンヌ金賞やCLIOグランプリ、D&ADなどの広告賞を数々受賞し、審査員経験も多い。2011年クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト。

  • C profile
    鹿間 天平
    株式会社電通 MCプランニング局 インタラクティブ・プロデューサー

    大学を中退後、渡米。ハリウッドで映像制作を5年間学んだ後、2011年、電通に入社。デジタル領域のプロデューサーとして様々な案件に携り、メディアとコンテンツを活用したデジタルコミュニケーションを数多く手掛ける。最近では、オンライン動画を中心とした新領域の開拓に夢中。

  • M profile
    根本 陽平
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 シニア・コンサルタント

    根本陽平(ねもとようへい)
    2008年電通パブリックリレーションズ入社、日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。企業や地方自治体のコーポレートブランディングから商品サービスのキャンペーンプランニングなどを手掛ける。受賞歴に、グローバルSABREアワード、PR WEEK アワード・アジア2年連続受賞、WOMMYアワード日本事例初受賞など。メディア掲載は2014年、朝日新聞「ひと」など。

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ