変貌するアジアのクリエーティビティー ~スパイクスアジアに見る電通グループの進化~

今、アジア全域で広告業界が変貌を遂げつつある。デジタルテクノロジーがもたらす世界的な環境の変化の中で、従来型のキャンペーンだけに頼ってきたアジアの広告主もまた、生活者とのつながりを強めることができる新たな手法を模索し始めている。

9月に開催されたアジア最大級の広告祭「スパイクスアジア」では、例年通り本社が電通グループによる受賞の過半数を占めた一方で、インドのタプルート電通がフィルムクラフト部門でグランプリを受賞したのをはじめ、海外の電通グループ各社が過去最高となる計25の受賞を獲得。躍進が注目された。

DANアジア全域でクリエーティブを担うテッド・リムCCO(チーフ・クリエーティブ・オフィサー)は「テレビCMの領域で新次元を切り開いたタプルートも素晴らしいが、一方で従来型のプリントやOOHを得意としてきたアジアの拠点が、今回初めてメディアやプロモーション、PRのカテゴリーで受賞したことは注目に値すると感じている。例えば、ドメスティックバイオレンス(DV)対策に映画館という空間を意表を突く形で利用した、タイ・電通プラスの「THE ANTI-ABUSE SOUNDCHECK」や、多くの女性が糖尿病を自覚していないインドネシアで、映画やドラマを見て流す涙で糖尿病の有無をチェックする検査の新たなプラットフォームを提案した電通インドネシアの「DIABETEST」(ショートリスト入選)などの作品は、新たな躍進が確実に始まっていることを示唆している。各オフィスの規模は決して大きくないが、クライアントのソリューションとして現地が必要とするイノベーションを身の丈に合った形で生み始めている」と説明する。

スパイクスアジア
ムンバイミラー紙「I AM MUMBAI」(インド・タプルート電通)/フィルムクラフト部門でグランプリ、プリント部門でシルバーなど計6受賞
強姦や臓器売買、少女売春など、同紙が取り上げたことで問題が表面化した事例を犯罪者の視点から描く(画像をクリックすると公式サイトにて動画をご覧いただけます)
スパイクスアジア
Foundation for Women「THE ANTI-ABUSE SOUNDCHECK」(タイ・電通プラス)/メディア部門でシルバー、PR部門でブロンズなど計3受賞
映画館で上映前の音声チェックの代わりに流れたのは、壮絶なDVの音声。社会による「音声チェック」の重要性を訴え、近隣から聞こえてきた場合は通報するよう促す(画像をクリックすると公式サイトにて動画をご覧いただけます)
スパイクスアジア
セブン-イレブン「7 LESSONS ABOUT SINGLELI FE」 (台湾・DENTSU K)/ブランデッドコンテント&エンターテインメント部門でブロンズ受賞
台湾では独身者が人口の4割以上を占める。妻との死別を乗り越えようとする男性や一人暮らしを隠そうとする女性など、店舗を訪れる独身者にまつわる実話がベースの7つのエピソードで、その気持ちに寄り添う(画像をクリックすると公式サイトにて動画をご覧いただけます)
スパイクスアジア
花王「CLASSROOM/SKYTRAIN/THEATRE」(タイ・電通タイランド)/プリント部門でゴールドなど計3受賞
一見きれいな衣服を着た男の子の周囲には強烈な臭気を放つごみの山。タグラインは「いい香りがしなければきれいと言えない」。上記はCLASSROOM編
スパイクスアジア
ヤマハモーター「5 PERCENT」(フィリピン・電通フィリピン)/アウトドア部門でブロンズ受賞
中央の小さなバイクの照明の先には「日中もライトを点灯していれば5%の事故が防げた」。データを視覚化し、フィリピンのバイク社会に提言した
スパイクスアジア
小林製薬「BOOK」(インドネシア・電通ストラット)/アウトドア部門でブロンズ受賞
ズラリと並んだ洋書のタイトルを読むには首をかしげなければならない。右端の本には「首と肩の痛みをやわらげる〈アンメルツ〉」

長年アジアのクリエーティブ人材の育成に携わり、現在は電通本社グローバル・ビジネス・センターでクリエーティブ・アドバイザーを務める中山幸雄氏は「ヤマハモーターや花王、小林製薬など、日系企業の商品をアジアの各地域の文脈で語って評価されたこともまた、今年の重要な成果。真のグローバリゼーションは徹底的にローカライズするところから始まる。各拠点は、日本のブランドが地域の消費者に受容される突破口を見つけ始めていると感じる。さらにはお互いに密に連携し、広域戦略を共有するケースも出てきている」と語る。今回デザイン部門の審査委員長を務めた電通CDCの八木義博氏も「現地でアジアの一体感をものすごく感じた」と証言する。

八木氏や佐々木康晴氏、菅野薫氏など、数々の国際広告賞で頂点を極めている本社のトップクリエーターも、拠点の育成に積極的だ。八木氏は「後進を育てるのは日本企業ならではの文化。クライアントや生活者にとって『正しい』と思える作品が、きちんと受賞している。僕らから学べるところはぜひ学んでほしいし、僕らもアジアの仲間から多大なインスピレーションを得ている。これからも高め合える関係を築きながらお互い前進していきたい」とエールを送り、「今、電通グループ全体として、海外のグローバルクライアントから声を掛けてもらえる機会が増えている。受賞は、自分たちを新しく知ってもらう絶好のチャンス。未来のビジネスに、そして電通が本当にグローバルなネットワークになることにつながっていくと思う」と、アジア拠点のさらなる活躍に期待を見せた。

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