次世代型マーケティングを実現する #01

真のデジタル化に向けた「分断」の解消に挑む

  • Kaizuka
    貝塚 康仁
    株式会社電通 マーケティングソリューション局
  • 小林 大介
    株式会社電通デジタル 執行役員
  • Imgabout01
    杉浦 友彦
    株式会社電通デジタル 執行役員
  • Saeki
    佐伯 諭
    株式会社電通デジタル 執行役員共同CDO
D3(電通データドライバー)

10月に誕生したばかりの「Dentsu Data Driver」(略称:D3)。電通、ネクステッジ電通、電通イーマーケティングワンの3社による、電通グループ横断型の次世代デジタルマーケティングの専門チームだ。なぜ今この組織がチームとして始動したのか。そして何をやろうとしているのか。チームの要となる4人が展望を語った。

(左から)電通マーケティングソリューション局 貝塚康仁さん、電通イーマーケティングワン 小林大介さん、ネクステッジ電通 杉浦友彦さん、電通IDSC 佐伯諭さん
(左から)電通マーケティングソリューション局 貝塚康仁さん、電通イーマーケティングワン 小林大介さん、ネクステッジ電通 杉浦友彦さん、電通IDSC 佐伯諭さん

統合マーケティングの実現を阻む壁とは?

──D3の発足の経緯について教えてください。

杉浦:ここ1~2年で企業のデジタルマーケティングは加速的に進化し、大転換期を迎えています。今まで、「マスマーケティング」との対比で語られてきた「デジタルマーケティング」は、「データ」や「テクノロジー」を軸に、マスもリアルも含めたマーケティング活動全体を最適化する概念に変わりつつあります。

つまり、これまで分断化されがちだったマスマーケティング、デジタルマーケティング、広告、オウンドメディア、CRM、DMP/DSPといった領域のデータを串刺しにして、統合的にマーケティング活用、さらにはテクノロジーを用いたマーケティングの一部自動化・最適化を追求する動きがあり、我々のような広告会社だけでなくクライアント、コンサルティング会社、SIerなども含めてこのパラダイムシフトに挑んでいます。

具体的な例で話すと分かりやすいでしょう。自動車メーカーを例にとると、テレビCMやデジタル広告の接触状況、自社/競合社サイトやSNSの回遊状況、ディーラーへの来店記録、メルマガ登録など、顧客への接点情報はこれまでバラバラに管理されていました。しかし今これらのデータを全て統合化することで、一人一人の興味、関心、需要のタイミングなどが把握できるようになり、それらに合わせて、接点ごとに「カスタム化」した適切なメッセージを「自動的」に送るということが技術的に可能になってきています。

統合マーケティングのイメージ

しかし現実を見れば、世の中の企業のほとんどは実現できていません。多くの人がこの絵を描いていますが、目の前の壁に阻まれて進めないんです。その壁の正体は、組織、人の分断です。

電通でも、デジタル広告、オウンドメディア、マーケティング戦略、データ分析などの領域ごとに組織が分かれています。組織が大きくなり、縦割りになるほど専門性は高まりますが、統合化が難しくなるというジレンマがあります。個別バラバラに展開されるマーケティング活動を、「データ」という共通の軸で捉え直し一気通貫でスピーディーにPDCAを回すことができるように横のつながりを強化する、そんな趣旨で、このD3というチームができました。それぞれの領域で最先端を走る専門家が、密度高く、覚悟を持って同じ目標に向かっていくことで、その分断の壁を越えようとしています。

ネクステッジ電通 杉浦友彦さん

小林:テクノロジーのレイヤーでは、これまでバラバラだった領域がどんどんつながってきていますが、それを活用してマーケティングを実践する人のレイヤーはどうなのか。テクノロジーの進化に、組織の進化が追いついていないのではないか、という課題意識が今回の取り組みの背景にあります。そしてこの課題は、クライアント側、我々サービス提供者側に共通のものだと感じています。

クライアントも組織の壁を越えて「統合」や「全体最適化」を実現しようと日々努力されている中で、サービス提供者側である我々はそれをドライブできる存在にならなければなりません。幸い電通グループは、マス広告、デジタル広告、オウンドメディアなど、クライアントと様々な領域で接点を持たせていただいていますので、我々自身が組織の壁を越えた実体のあるチームをつくることにより、クライアントに新たな貢献ができると考えています。

統合的なソリューションをワンストップで提供できる

──なるほど、統合マーケティングの実現のために、組織横断の取り組みを強化していくということですね。それを踏まえて各分野のチーム内での役割を伺いします。まずは佐伯さんからお願いします。

佐伯:私の所属する電通統合データ・ソリューションセンター(IDSC)では、マスマーケティングやデジタルマーケティングのデータ計測、解析、分析、最適化や、それを実現するための電通独自データアセットの構築、テクノロジー基盤整備などを担当しています。

今、データ×テクノロジーでカバーできる領域は、IoTを含め飛躍的に増えており、マーケティングの可能性が指数関数的に増大しているので、解析の観点からチームを支えていきたいですね。これまで普通にやってきた業務を他のチームと統合することで、効率が上がりマーケティングの可能性も格段に上がります。

──データ解析の部分は、オウンドメディアを担当する電通イーマーケティングワンの小林さんとも直結しますよね。

小林:はい。弊社はこれまでウェブサイトの構築・分析・改善、マーケティングオートメーションの活用によるリードマネジメントという領域に軸足を置いてサービスを提供していましたが、そこで蓄積されるデータの活用先(アウトプット)を広告運用最適化やリアルチャネル体験向上に広げたり、逆にサイト上でのコミュニケーション最適化のためのデータソース(インプット)をマス広告接触状況や外部メディア利用状況に広げたりと、アウト・インの両面での拡張が可能になっています。

それを実際に具現化して成果を挙げるためには弊社内部のスキルや経験知だけでは十分ではなく、他領域のプロフェッショナルとの混成チームによって新規性のある取り組みにどんどんチャレンジしていきたいと考えています。

電通イーマーケティングワン 小林大介さん

──これからは、サイトを見に来た人の属性を見て、コンテンツを勧めるといったこともできますよね。

杉浦:これまでは、ウェブメディアはPVのようにどれくらい閲覧されたかを指標にしていましたが、これからはどんな人が何を見に来たのかを把握し、この興味の人にはこのコンテンツ、この販促プロモーションを提供するというように、リコメンドを人軸で最適化し、かつアクションも自動化することが重要になります。

──貝塚さんのマーケティングソリューション局ではどのような役割を担いますか?

貝塚:私たちの部署では、クライアントから高速PDCA環境を構築したい、DMPやMAを導入したいといった明確な依頼を受けることもありますが、「売り上げやシェアを伸ばすにはどうしたらいいのか」というように、漠然としたマーケティング課題を相談されることも多いんです。

結果的に、個別のソリューションを提供するのではなく、有機的にあらゆる手段を駆使してマーケティング課題を解決していくということになります。

クライアントからしてみれば、デジタルマーケティングは個々の専門性が高く細分化され過ぎているため全部理解するのは困難です。だからこそ、全体を把握した上で最適な提案をしてほしいという期待があります。

これまでも個別のケースで、このメンバーと連携しながら課題解決をしてきましたが、D3というチームになることで、統合的なソリューションがワンストップで提供できるというのが、クライアントにも分かりやすく伝えられますね。

電通マーケティングソリューション局 貝塚康仁さん

──杉浦さんはいかがでしょうか。

杉浦:ネクステッジ電通のコアビジネスは、デジタルの集客領域になります。クライアントから予算を預かって、例えばECサイトの売り上げ向上といった目標に向かって、デイリーで広告チューニングをして成果を挙げていくその精度と実行力が強みです。

しかし、成果を挙げる手段は広告だけではありません。広告はお金がかかり続けるので、小林さんの部門と連携して、ウェブ上での接客の場所となるオウンドメディアを改善して、購入転換率をアップしたり、CRMの改善を通じてLTV(顧客生涯価値)の向上に取り組む、といった施策は大前提として必要になります。広告は、成果を出すための手段の1つという前提に立って、そこの実行力を上げるためにも他の部署との連携が不可欠です。

また、データ分析という点でも、我々はシンプルな視点での効果解析はできますが、マス広告とデジタル広告の相関、顧客の購買行動パターンの分析等、複数のデータソースを統合した上で、より複眼的かつ高い精度で最適化の答えを導くためには、ビッグデータ基盤の整備や高度な解析が求められます。そのような局面では佐伯さんの部署、電通IDSCの力が必要です。

一方で、最先端のアドテクノロジーいう専門性の高い領域を、クライアントの現場にとっても分かりやすいストラテジープランニングとどう結び付けていくかのかも大きな課題です。貝塚さんとの連携になります。我々とクライアントの間にはどうしてもリテラシー、言語の部分でのギャップがあるので、そこを分かりやすく貝塚さんのチームに翻訳してもらうことでより良いサービスが提供できます。

プロフェッショナルなチームが集まり、統合マーケティングを実現する

──今後、D3が目指すことを教えてください。

佐伯:プロフェッショナルなチームが集まることで、デジタル時代にふさわしいクライアントのマーケティング進化を加速できればと思っています。我々はイチロー世代。ストイックにコツコツやりながら、いつの間にか大きなことをやっているという方向を目指していますが、今回はその大きなテーマが統合マーケティングです。

電通IDSC 佐伯諭さん

杉浦:D3は何が武器なのか、と聞かれることもありますが、結局重要なのは人です。本当に困っている人たちは、机上の空論やお仕着せのテクノロジーでなく、本気でやりきってくれる人を探しています。やりきるエネルギーをどれたけ持っているか、統合マーケティングの実現の壁はそこにあるんです。

大きな組織のハコを作るわけでもなく、これまでも「いざ」という時には協力し合ってきた仲間がD3というチームになったことに意義があります。分かりやすい枠組みでチーム化したことで、各組織の現場メンバーも含めて同じビジョン、価値観を共有することで連携がスムーズになる。一つのムーブメントを起こしたいですね。


理想として描かれる統合マーケティングを実現するための組織、それがD3だといえそうだ。連載の2回目以降では、それぞれの専門性やD3での活動についてさらに深掘りしていく予定だ。

D3 WEBサイト http://www.dentsu-data-driver.jp
D3お問い合わせ先 d3-info@dentsu.co.jp

プロフィール

  • Kaizuka
    貝塚 康仁
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

    アカウントエグゼクティブとしての豊富なプロデュース経験と、データドリブンなマーケティングアプローチで、国内大手感光材メーカー、飲料メーカー、不動産、メガ金融グループ、外資系玩具流通等、国内外に渡る数多くのクライアントのマーケティング意思決定をサポート。特に、消費者の購買行動データやPOSデータと意識・価値観データを活用したビジネスコンサルティングが専門領域。BIツールやアドテクノロジーを駆使したマーケティングプロセス改善の支援実績も豊富。
    データサイエンティスト協会 広報委員

  • 小林 大介
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1996年、電通国際情報サービスに入社し、メーカーのEコマースサイト構築など企業のインターネット活用支援に取り組む。電通グループ内のデジタルマーケティング専門会社への出向を経て、2004年の電通イーマーケティングワン設立に参加、2014年より同社取締役。企業ウェブサイトやCRMなどのオウンド領域に軸足を置き、戦略プランニング、システム構築、PDCAスキーム構築などの総合ディレクション業務に従事。現在はマーケティングオートメーション、DMP、CMS、BIなどから形成される「各企業にとっての最適なマーケティングプラットフォームの構築・利活用」を主テーマとしてビジネス開発やクライアントサービスに取り組んでいる。
    東京大学文学部思想文化学科卒業。

  • Imgabout01
    杉浦 友彦
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1998年電通入社。2009年コロンビア大ビジネススクール通信情報研究所(CITI)客員研究員。電通フューズ、電通イーマーケティングワンなどの立ち上げに参画し、ウェブコンサルティング、オンライン広告のROIマネジメント業務を担当。主に金融・保険、Eコマース企業の顧客獲得支援や、IT、自動車業界向けのeマーケティング戦略立案・PDCA運用業務に携わる。併せて、マス広告×ウェブ統合分析のメソッド開発や、オンライン広告プランニング最適化、アトリビューション分析など、独自のデジタルマーケティング最適化ツール開発を主導。13年ネクステッジ電通代表取締役社長。

  • Saeki
    佐伯 諭
    株式会社電通デジタル 執行役員共同CDO

    1998年早稲田大学大学院理工学研究科修了。デジタルマーケティング領域のデータ解析、アドテクノロジー支援などを担当。
    前職の電通国際情報サービスではメディア最適化システムやCRMシステムのスクラッチ開発を専門とし、プログラマー&SE歴7年。その後、外資系金融で金融アナリストとして従事。2007年より現職。ad:tech tokyo2012スピーカー、データサイエンティスト協会理事。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ