一緒につくり方をつくる場所。
Dentsu Lab Tokyoが目指すオープンイノベーションとは

  • Furukawa yuya profile
    古川 裕也
    株式会社電通 CDC センター長/ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター
  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長
  • 087
    菅野 薫
    株式会社電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo グループ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト

オープンイノベーションをキーワードに、電通に新しい組織が生まれた。それが「Dentsu Lab Tokyo」だ。ここには、古川裕也氏、佐々木康晴氏、菅野薫氏をはじめとする電通のトップクリエーティブディレクターが名を連ねる。

今までにはなかったまったく新しいクリエーティブの可能性を探る、というこの組織は一体どんな思いでつくられ、何を目指すのか。3氏に話を聞いた。

(左より)古川氏、佐々木氏、菅野氏

 

全ての企業が「変わりたい」と感じているが、その明確な答えが見つからない

 

ーーまず、Dentsu Lab Tokyoは、どういった位置付けなのでしょうか。

菅野:テクノロジーによってメディアの環境や、コミュニケーションの手段が変わる中で、電通のクリエーティブの領域と方法が大きく変わりつつあります。Dentsu Lab Tokyoは、これからの新しいモノづくりの方法論をつくるための電通内の新しい組織です。
新しいプロジェクトを始めるというよりも、社会やクライアントが求めているクリエーティブに対応するための全く新しいつくり方を発明しようとしています。

 

ーーDentsu Lab Tokyoは、そうそうたるメンバーが集まっていますが、お三方のそれぞれの役割を教えてください。

古川:僕だけ場違いなんですけれど、役割としては、言い出しっぺと、Dentsu Lab Tokyoを形にすること、つまり本体から外出しすることで、電通がこの領域でいよいよ本気なんでよろしくと伝わるようにすることです。プレゼンスという、よく分からないけれど実は競争力のあるものを高めるのが仕事です。あと自分のところに来た仕事で今までにない領域のクリエーティブが必要な時のスタッフィング先という意味もあります。

今、電通も含めて全ての企業が「変わりたい」と望んでいますが、なかなか明確な答えが見つかっていない状態です。Dentsu Lab Tokyoは2~3年前から構想し、「これまでとは違う種類のクリエーティブを発明することに、歴史的要請があるのではないか」という考えから始まっています。“Climb up to Another Mountain”のためにゆるやかに結合したチームです。サウンド・オブ・ミュージックみたいですけど。

菅野:組織としては、私が代表のディレクターで現場を担当します。この数年間、個人的に取り組んできたことを、個人に帰属するだけの技能にせず、電通の中で組織として強くするためにDentsu Lab Tokyoがあると思っています。

佐々木:菅野さんが先頭で切り込んでいくとしたら、僕は後ろ側からサポートする役割でしょうか。
広告ではない何か、というのはいろいろな形があり、テクノロジーに限らず、例えば心理学や社会学など、従来の表現制作とは異なる知見が求められることもあるので、これまでとは違う色を出していきたいですね。

 

大量生産を行うのではなく、アイデアをつくり、練るための台所のような場所

 

ーー構想自体は以前からあったということですが、今回発足の発表に至るきっかけは何でしょうか。

古川:はい、3~4年前からラボ的なことをいろいろ考えてきて。組織としては1年前に立ち上げました。準備期間を設けて、チームも整い、スタジオもできたことから発表のタイミングになったということです。

菅野:この1年間はバーチャル、概念的な組織で、物理的な場所もなければ主所属をしている人もいませんでしたが、今回、スタジオという物理的な場所ができて、仕事の軸足を置く所属員も決まり、外部の方々で協業していく専門家であるフェローも決まったことから発表になりました。

佐々木:フォーカスするべきエリアややり方が見えてきて、巻き込んでいきたい方が出てきたというのもあります。

 

ーーやるべきエリアとは?

佐々木:まずはスポーツ、音楽、伝統芸能などがあります。クライアントや外部のアーティストを巻き込むことで、それぞれの知見やデータなどの素材がそろってきた。そして教育や社会貢献など掘るべき方向性も見えて、遊び場、実験場となるスタジオもできた。考え方、人、場所がそろってきました。

菅野:ここで取り組むプロジェクトで特徴的なのは、中長期で研究や検証を重ねてつくるような、時間をかけるプロジェクトです。広告はどうしても短距離走になりがちなので。といっても研究のための研究ではなく世の中に出して意義を問うアウトプットがある前提のものです。

佐々木:メーカーの研究所ではできなかったことをやりたいですね。エージェンシーが得意なのは表面的アイデアだけだと思われていますが、例えば新しいサービスが世に出たときに、どう使われるようになるのか、ユーザーはどういう気持でそれに接するのかということを深掘りしたい。使う人に近い場所でアイデアを毎日考えている人たちが集まることで、これまでとは次元の違うサービスの創造ができればと思っています。

 

ーーこのスタジオという場所の意図とは? またどんな人が来て、どう利用されるのでしょうか。

菅野:Dentsu Lab Tokyoは、「オープンイノベーション」をキーワードにしているように、電通の外部にいる国内外のクリエーター、アーティストなどいろいろな人と一緒にモノづくりする場所、協業する場所です。

元来クリエーティブにおけるアイデアとは、自ら手を動かしながら脳みそを動かして、トライアンドエラーを繰り返し、ディスカッションを繰り返して試行錯誤しながら、つくられていくもの。
デジタルテクノロジーにおいてもその手法は同じですが、鉛筆と紙ではできない高度なものになってきています。やっていることの本質は変わらないけれども、場や設備などが必要になってくるのです。

このスタジオはスチールや映像の撮影もできますし、リアルのライブインスタレーションのテストとシミュレーション実験の場としても使えます。出荷するための大量生産を行う工場ではなく、アイデアをつくり、練るための台所のような場所です。

藍耕平・大来優・小川愛世・越智一仁・木田東吾・後藤萌・菅野薫・菅野了也・田中直基・保持壮太郎(あいうえお順)

 

何をするか分からないなら「一緒に悩もうよ」というところから始まる

 

ーーオープンイノベーション、あるいは協業はなぜ必要なのだと考えていますか?

古川:例えばCMの場合、企画と制作・演出は分離しています。けれど、テクノロジーをベースにした仕事は、初期段階から企画と演出が混交していて、何をやるかからいっしょに悩んでいる。それと、完成度2~3割の段階でも毎日のように“カタチ”にしている。最初少しびっくりしました。どうも、最初から最後まで一カ所でつくった方がいいみたいです。
僕たちが対応すべき種目がずいぶん増えてきて、今までの広告会社のクリエーティブスキルだけでは足りなくなっています。

そこで、新しい方法論として、コ・クリエーション、オープンイノベーションという方法があり、社外の人の才能、知恵との協業で先に進もうとしているのです。さらに、ここに10代の若い才能が寄ってきてくれるといいと思っています。彼らは、いい仕事といいにおいのするところを直観するので。

今までのクリエーティブだと、人から天才とか優秀とか言われるのは若くても20代後半。なぜなら全員社会に出てからこの仕事を始めるから。けれど、デジタル領域は10代、学生の頃から天才が出現します。先にビジネスフォーマットができている種類の仕事では本質的にない、ということで、それに対応できるクリエーティブフォーマットが必要だと思います。

佐々木:作り手だけのコ・クリエーションだけでは足りないと思っていて、プロセスを長く捉え、クライアント、マーケター、ユーザーなども参加する大きなコ・クリエーションを考えていく必要があります。これまでのように広告をつくって終わりではなく、クライアントも「何かをしないといけない、でも何かってなんだろう」と悩んでいるので、われわれも発注・受注の関係を超えて対等な関係で何かを共同開発できたらいいなと思っています。

 

ーー課題のところから一緒に探していく感じでしょうか。

佐々木:何をつくるか分からない、というところから始まるんですよ。そこをすぐに決めるのではなく、一緒に悩もうよ、というところから。そう考えることで、つくる種目が広がることが面白いんです。

ーーデジタルテクノロジーは幅が広いと思うのですが、具体的にやっていく分野は?

菅野:我々が直面する新しく拡大を続けている種目に対応してくためには、社会課題を解決するために必要とされる技術を獲得し、その可能性を拡張していかなくてならない。

最終的なアウトプットの形にはこだわっていなくて、従来の広告とは違う、プロダクトなのか、サービスなのか、はたまた抽象的な概念なのかはまだ分からないです。

例えば、今は、アーティストのビョークとのプロジェクトが進んでいますが、今までのようにミュージックビデオをつくって終わりではなく、その先のアルバム、2年後のコンサートなど、長いスパンでプロジェクトを並走しながらやっていきます。

 

古川:Dentsu Lab Tokyoの仕事は大きく分けると2つあって、1つは、新しい方法によるクライアントの課題解決、そしてもう1つが、誰からもまだ頼まれていないけれど、何もないところに新しい何かをつくっていくことですね。

1つ目はこれまでの広告の仕事と方程式が同じなので想像しやすいですが、2つ目は方程式自体が新しい。アウトプットはパフォーマンスだったり、プロダクトだったり。そこに価値があり予測のつかない収益に結びつく可能性があります。分からない範囲がかなりある仕事だということだけ分かっている。5年後の世の中を予測して戦略を立てるなどということとは全く違う仕事になります。予測がつかないからこそ、期待できるんです。

ーーこれからの活動が楽しみですね。ありがとうございました。

 

プロフィール

  • Furukawa yuya profile
    古川 裕也
    株式会社電通 CDC センター長/ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

    1980年株式会社電通入社。
    クリエイター・オブ・ザ・イヤー、カンヌライオンズ28回、D&AD、One Show、アドフェスト・グランプリ、広告電通賞(テレビ、ベスト・キャンペーン賞)、ACC グランプリ、ギャラクシー賞グランプリ、メディア芸術祭など受賞多数。カンヌライオンズ、D&AD、クリオなど、国内外の審査員・講演多数。2013年カンヌライオンズ チタニウム・アンド・インテグレーテッド部門の審査員を務めた。

  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長

    1995年入社。コピーライター、インタラクティブ・ディレクターなどを経験した後、2011年からニューヨークに出向。帰任した現在もCDCとDentsu Aegis NetworkのExecutive Creative Directorを兼任し、グローバルとデジタルの間で、日々面白いものをつくろうともがいている。カンヌ金賞やCLIOグランプリ、D&ADなどの広告賞を数々受賞し、審査員経験も多い。2011年クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト。

  • 087
    菅野 薫
    株式会社電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo グループ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト

    2002年電通入社。データ解析技術の研究開発業務、国内外のクライアントの商品サービス開発、広告キャンペーン企画制作など、テクノロジーと表現を専門に幅広い業務に従事。
    2014年に世界で最も表彰されたキャンペーンとなった本田技研工業インターンナビ「Sound of Honda /Ayrton Senna1989」、Apple Appstoreの2013年ベストアプリに選ばれた「RoadMovies」、東京オリンピック招致最終プレゼンで紹介された「太田雄貴 Fencing Visualized」、国立競技場56年の歴史の最後の15分間「SAYONARA 国立競技場 FINAL FOR THE FUTURE」企画演出など活動は多岐にわたる。
    JAAA クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2014年)/ カンヌライオンズ チタニウム部門 グランプリ / D&AD Black Pencil / One Show -Automobile Advertising of the Year- / London International Awardsグランプリ / Spikes Asiaグランプリ/ ADFEST グランプリ / ‎ACC CM Festival グランプリ / 東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ / Yahoo! internet creative awardグランプリ/ 文化庁メディア芸術祭 大賞 / Prix Ars Electronica 栄誉賞 / グッドデザイン金賞など、国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で受賞多数。

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