コンテンツマーケティングの現場から #19

突然成果を問われる前に準備しておくこと

コンテンツが話題になって大喜びしていたら、いきなり上層部から「で、売りにつながったのか」と問われた、どうしたらよいだろう?というケースに、先日出合いました。

デジタルの仕組みは知らないけれど、デジタルだといろんな数字がとれてユーザーの反応や販売への貢献が見えてくることは知っている、という幹部が増えてくると、私たちがこんなケースに出合うことも増えてくると思われます。

何を成果として見るか。それ自体がコンテンツマーケティングにおいては難しい課題ではあるのですが、そもそも大事なのは「何を成果として見るかを、コンテンツをリリースするより前に考えておかなければならない」ということです。この「成果=このコンテンツをリリースすることによって何を獲得するのか」を事前にプロジェクトチームで共有しておかないと、いきなり「売りにつながったのか」という話になってしまったりするわけです。

それでは、この「成果」とはどのように考えていったらよいものなのでしょう。

①PV・UUは「成果」になるのか。

一つ一つのコンテンツを全力で企画してきた経験のある人間からすると、コンテンツの成果と言われたときに無意識に思い浮かぶのは、「コンテンツがどれだけ多くの人に見てもらえたか」という成果です。これは「コンテンツやサイトの閲覧者を増やす」という成果の獲得を目的としている場合には重要な指標になります。

けれど、冒頭のような「売りにつなげたい」といった目的がある場合は、PV・UUの獲得だけでは足りません。目的を達成するためにはどんなコンテンツ企画が機能するのか、を考えていかなければならない中で、PV・UUからは「どんなふうに売りにつながっていくのか」の示唆がなかなか得られないためです。

実際、目的が「売りにつながること」でなかったとしても、複数の多様なコンテンツを運用していく上で人気の高いコンテンツばかり繰り返しつくるようになるとコンテンツの種類が偏ってくる、興味を持つ人が限られてくる、場合によっては商品やブランドとは関係の無い話ばかりになる、ということが起きかねません。運用しているとその不均衡には直感的に気が付くことが多いですが、偏ってはいけないのだというところまで分かったとしても、PV・UUを見ているだけだと「次はどんな企画であるべきなのか」というところまではなかなか分かりません。コンテンツマーケティングにおいてPV・UUでは成果にならない、PV・UUは中間指標にすぎないなどといわれるのはそのためです。

②成果を見るには、シナリオが要る。

Eコマースやデータ解析の経験がある方にとっては当たり前の話ですが、「コンテンツに接触した人が商品を買ってくれた」といったような結果を導き出すには、ある人がコンテンツを見てから商品を買うまでのプロセスを追いかける必要があります。どんな情報に触れたらその商品に興味を持つのか。さらには買いたくなって詳しく商品情報を調べたりするのか。人によってさまざまな購買検討のプロセスをある程度予測し、そのプロセスでどんな情報を必要としていくのか。購買にまでつながるような行動シナリオの仮説を用意しておかなければ、プロセスを追いかけることができません。しかも実際に追いかけるためには、そのシナリオ上のプロセスを計測していくための技術的な方法も同時に整備する必要があります。

そもそも現時点において、あるコンテンツが、売り、つまり購買につながったかどうかを正確に計測することは、Eコマースのようにウェブ上に購入実績が残らない限りまだまだ難しく、技術的にもコスト的にも高いハードルが多く残されています。これは、デジタル領域のマーケティング作業をしている人の間ではよく知られている話ですが、プロジェクトのリーダーやオーナーが知らないケースもあるので丁寧な説明が求められます。

③シナリオは、コンテンツの企画時に考えておかなければならない。

コンテンツの企画はとても楽しいもの。どんなアイデアにするか、どんな写真にするか、どんな人に出てもらうかなど企画に熱中していると、「成果」とか「指標」といった言葉は忘れられがちです。けれど企画の盛り上がりが一段落したら、成果をどう測るのかを議論することも忘れないようにしなければなりません。まず目的を確認し、目的に向かうためには、そのコンテンツを見た後にどういう行動をしてほしいのか。シナリオの仮説を立てながら、情報の文脈づくり、リンクなどサイト内の動線づくり、レコメンドエンジンの活用などさまざまな方法を駆使して、行動を促せるよう準備しておく必要があります。これらは、コンテンツをリリースする前にやっておかなければなりません。

 

コンテンツに求められる成果はさまざまです。コンテンツマーケティングというプロジェクトに求められる成果もさまざまです。「成果」は必ずしも「成功」と同義ではありません。本来的には、「そのコンテンツを世の中に出すことによって獲得したもの」が成果なので、仮説通りにうまくいかなかったとしても、その事実とそこから推定される理由自体がまさに「獲得したもの」になります。その「獲得したもの」に学びながら改善をし続けていくことにこそ、コンテンツマーケティングを続けていく意義があります。

コンテンツマーケティングのプロジェクトを意義あるものにしていくためにも、成果のことはコンテンツを世の中に発信した後ではなく、企画しているそのときに同時に考えていかなければならないのです。

プロフィール

  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1992年電通入社。クリエーティブ局で、広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。現在は、日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティ向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行っている。
    2014年「コンテンツマーケティング27の極意」(翔泳社)、「エピック・コンテンツマーケティング」(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は、2013年、2014年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internasionalなど。

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