生体信号が拓くコミュニケーションの未来 #05

「脳波計を付けて、耳が動くんです」って、私たちには考え付かなかった

  • Kamiya
    神谷 俊隆
    株式会社電通サイエンスジャム
  • Mitsukura
    満倉 靖恵
    慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科
  • なかの かな
    株式会社電通 CDC クリエーティブ・テクノロジスト/コミュニケーション・プランナー

前回に続き、慶応義塾大学の満倉靖恵准教授と、電通サイエンスジャム神谷俊隆さんの対談をお送りします(途中から、なかのかなさんも参加し、てい談となります)。今回は、脳波を研究するきっかけから、necomimiチームとの出会い、今後の展望を語っていただきました。

脳波から人の心って分かるかな

神谷: そもそも満倉先生が研究を始めたきっかけは?

満倉: 大学で研究を始めた頃は、ガンダムを作りたいと思っていました(笑)。ガンダムを作るって一体どういうことなのかな、「人間があんなに大きいものを動かすってどういうことだろう?」と考えて、これは制御だと。これからは制御だと思った。

神谷: ガンダムを作るには、制御が欠かせないと?

満倉: はい。大学卒業後は徳島大学に助手で入りまして、そのときの教授が画像認識や音声認識を研究していました。音声というのは今でこそSiri(iOS向け音声認識ユーザーインターフェース)とかで認識できるけど、当時はまだ「あ」「い」「う」「え」「お」すら認識できない状態でした。音声認識も画像認識も制御も波で、その波から特徴を抽出してパターン化する。これは今の脳波の考え方の一つにもなっています。

その波をコントロールするという研究をしているとき、教授から「脳波で人の心って分かるかな」という投げ掛けをされました。そのときに、大きなヘッドギアみたいな脳波計を見せられて、この先生は危ないのかなって思ったんですけど(笑)。それでも興味がわいて実験に加わり、ひたすら小豆の移動をやっていたわけですよ。そうすると波のパターンが出てくるようになるんです。「なんか昨日と違うな」とか「今日は体調悪いな」とか。

パターンが見えてくると、数式に置き換えられるんじゃないかなと思うようになって、そうするとまたどんどんパターンが見えてきて「集中してるときはこのパターンだな」とか見当がついてくる。パターンを見ていく方法が正しいと閃いたのが、脳波を含む生体信号に取り組むポイントでした。

神谷: それまで先生と同じようなことをやっていた人はいなかったんですか?

満倉: そうですね。皆さん、ずっとアルファ波とかベータ波をやっていました。

神谷: 今は脳波から感情を類推していますが、それ以外に、信号処理を利用した研究はありますか?

満倉: まず、信号を使った画像処理があります。例えばアバターシステムという物まねシステムがあるのですが、画面上のキャラクターを、ウェブカメラを通して動かすというものです。

神谷: 同じ動きをすると。

満倉: はい。人物をウェブカメラで撮影し、映像に8点のポイントを付けることで、キャラクターがその人物の動きや表情を追従するという研究をしています。あとは音声が発せられた場所を特定して、例えばロボットが音の方に向かっていくとか、「おいで」と呼ばれたらそっちに向かっていくとか。

神谷: BCI(Brain Computer Interface)も?

満倉: はい、やってます。先ほど脳波のパターンの話をしましたが、まばたきにもパターンがあります。普通のまばたきのほか、ウィンクや目をつぶるという目の生体信号パターンを用いて動かす車いすを開発しました。ウィンクした方向に車いすが動いて、両方閉じるとまっすぐ行くというように、パターン付けすることで車いすを動かすことができます。

「necomimi」チームとの出会い

神谷: 僕らは「necomimi」のあと、「集中とリラックス」以外のアルゴリズムを探していて、ちょうど満倉先生が五感の研究をされていると知って、お話を伺おうと研究室に押し掛けていったのですが、同じように来る方は多かったのではないですか?

満倉: そうですね、週に5、6件「見学させてください」というようなお話がありました。神谷さんとなかのさんが来られたときは、すごくモチベーションを感じたんです。なんか、物を作るということに対する貪欲さというか。そのモチベーションを感じたときに、これはコラボレートするとやりがいがあるなって直感的に思ったんですよ。これまで直感で動いた事で失敗は無かったので、これもそうだと瞬間に思いました。通常だと、共同研究は時間をかけて決めるんですけど、皆さんにお会いしたときには、私から「一緒にどうですか」と言ったんですよ。

神谷: そうでしたね。

満倉: 結構いろんな会社さんが来られていたんですけど、やはり皆さんが来られたときの衝撃はなくて。

なかの: 衝撃的だったんですね。初めて知りました(笑)。

神谷: どんな衝撃たったんですか?

満倉: 「necomimi」はもちろん知っていましたが、「この次これをやって、こういうことも考えてて、こういうことがやりたいんですよ」というストーリーがすごく斬新で貪欲で。でも、ちゃんと道筋立ててそのお話をしてくださって、これはいけるかなと思いました。本当に直感ですね。

神谷: 何かやれそうだと。

満倉: 「脳波計を付けて、耳が動くんですよ」って、私たちには考え付かなかったです。「え、そこ?」って(笑)。

神谷: 普通はちょっと思い付かないですよね。それを大真面目な顔をして話しました。

満倉: 耳がどういうふうに動くとか、今度はしっぽがとか、necomimiを付けた神谷さんが、大真面目な顔をして説明するのを見たときに、これはすごいなと(笑)。

なかの: そこだったんですね、きっかけは。

満倉: なかのさんも、今日もそうだったんですけど、街中で脳波計を付けていろんなことをやるんですよ、大真面目に。

なかの: ちょっと実験しながら来たんです。歩いている時間が惜しかったので。

満倉: 最初に私の研究室に来られたときも、脳波計を付けてましたよね。

なかの: 実験してたんです、そのときにも何か別の(笑)。

満倉: そういう大真面目に取り組んでる姿に、すごく魅力を感じましたね。

サイエンスジャムの目指すところ

神谷: 満倉先生は、最終的にどのような技術を目標にしていますか?

満倉: デバイスは何であれ、思ったことが文字になって出てくるということを目標にしています。例えば「あ」「い」「う」「え」「お」「か」「き」「く」「け」「こ」と、全部の脳波をパターン化して、文字を表示させる。Siriの脳波バージョンです。あとはデバイスがなくても、手でフレームを作って通信するようなシステム。Google Glassだと「付けてる感」があるじゃないですか、だからコンタクトレンズ型のヘッドマウントディスプレーを考えています。

なかの: 先生のおっしゃっているような未来、いまは魔法みたいに聞こえますが、将来的には携帯を使ってるぐらい当たり前になっていくんだろうなと思います。神谷さんはどうですか?

神谷: 僕はもともと理系じゃないんですけど、「necomimi」という変なモノを世の中に出したことで、話題や笑いを提供できた。電通サイエンスジャムでは、これからもいろんな科学を見つけて、世界を面白くしていければなと思っています。

取材場所:電通サイエンスジャム

プロフィール

  • Kamiya
    神谷 俊隆
    株式会社電通サイエンスジャム

    電通コミュニケーション・デザイン・センター(CDC) 次世代コミュニケーション開発部にて、neurowearブランドを立ち上げ、脳波コミュニケーションツール「necomimi」や「mico」のプロデュース及び事業開発を担当。2013年8月に(株)電通サイエンスジャムを設立し、科学者の知性や最先端技術に、電通ならではのアイデアを加えることで、新しい事業開発の可能性に挑戦している。

  • Mitsukura
    満倉 靖恵
    慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科

    1999年より徳島大学工学部知能情報工学科助手、岡山大学専任講師、東京農工大学准教授を経て、現在慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科准教授。2013年8月より電通サイエンスジャム最高技術責任者を兼任。

  • なかの かな
    株式会社電通 CDC クリエーティブ・テクノロジスト/コミュニケーション・プランナー

    インターネット広告会社勤務を経て2009年より電通。
    AR(拡張現実)と位置情報を利用したクーポンアプリ「iButterfly」、脳波によるコミュニケーションツール「necomimi」など、テクノロジーを用いたちょっと未来のコミュニケーション体験を企画している。

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