コンテンツマーケティングの現場から #20

どうやって、生活者に向き合っていくか

コンテンツマーケティングでは「良質なコンテンツ」の必要性がしばしば語られますが、良質であるために最も重要なのは「生活者に向き合っているコンテンツかどうか」という点でしょう。

コンテンツマーケティングの教科書でしばしば書かれている「ペルソナを設定する」という作業。ここで必要なのは、ターゲットオーディエンスを決めることと、そのターゲットを深く理解することの2つです。コンテンツとは、「相手にとって有益で説得力のある情報」であるため、良質なコンテンツをつくるには特にこの2つ目が重要になります。

広告キャンペーンの場合は、ターゲットを決めた後、定量調査、グループインタビュー、そこからのインサイトを深く掘り下げるなど丁寧に分析していくことが普通です。

けれど、コンテンツマーケティングの場合は広告と違って24時間365日運営されていくもの。コンテンツ企画のたびにこれだけの調査分析に労力と時間をかけることがなかなかできません。そのため、日ごろの運用作業の中に生活者と向き合う仕組みを組み込んでいくことがひとつのポイントとなってきます。

例えば、オウンドメディアの中にユーザー同士が会話できるコミュニティーがあったり、コンテンツに対するフリーアンサーのアンケートがあったりすれば、恒常的にユーザーの声を聴けるようになります。それによって、この声が企画の起点になったり、自分たちが発信しようとしている情報がユーザーに受容されるものなのかどうかを確認したりすることができます。また、毎日(あるいは毎週)ソーシャルリスニングを行って生活者の声を聴くという方法もあります。実際、このように世の中の声を日々聴き続けていくと、自分たちがどんな相手に向かってコンテンツを発信しようとしているのかが肌感として身についてくるのもまた不思議なところです。

この「ターゲットを深く理解する方法」、コンテンツマーケティングにおいて最も重要なポイントで、海外のコンテンツマーケティング関係者はどんなやり方をしているのでしょうか。

米国content marketing instituteのブログに、興味深い報告がありました。(http://contentmarketinginstitute.com/2015/08/personas-audience-wants/
今年9月に開催されたContent Marketing World2015のスピーカーらコンテンツマーケティングのオーソリティーに「ターゲットが本当に欲していることをどうやって探しているのか」をインタビューした記事です。

皆さんがどんなふうに答えているのか、ちょっとのぞいてみると、

「オフィスを出て、顧客に会いに行く」
「ユーザーに聞いてみる」
「ペルソナを脇に置いて、見込み客にじかに会いに行く。フラペチーノを買って」
「ターゲットと話す時間をつくる」
「いつでも、どこでも、どんなやり方でも、顧客と話せる方法を探す」
「ターゲット自身になってみる」

など、基本的でアナログな方法が思った以上に多く語られていました。
いっぽうで、「データから学べる。どの記事を何人がクリックしたか、もしまた同じような記事を彼らに届けたらどうなるか。似たような記事をクリックするか。他の記事をクリックするか。個人レベルで見ていく」という意見もありました。

「私はソーシャルリスニングの大ファン。インターネットは巨大なエスノグラフィーだと思う」と語っていたのは、クラフト・ハインツのシニアディレクター、ジュリー・フライシャー(Julie Fleischer)氏。

SEOコンサルティング会社Mozの創始者であり、コンテンツマーケティングのインフルエンサーでもあるランド・フィッシュキン(Rand Fishkin)氏は「リアルな顧客と話をする。彼らの不満を聞いたり、コミュニティーやソーシャルメディアをウォッチして何が共感されていて、何が議論されているかを見たり、自分自身が顧客の世界の一部になってみる。同じ悩みや同じ気持ちを感じてみる。そういう経験が、ペルソナ以上にターゲットを理解するための感覚を磨いてくれる」とのこと。

同じくコンテンツマーケティングのインフルエンサーである、NewsCredのマイケル・ブレナー(Michael Brenner)氏は、「ビジネスに必要なのは、消費者を理解すること。でも、プロファイリングから始めるとターゲットが何に興味があるか、見方が限られてしまう。人々がどんなキーワードを使って解決方法を探しているか、どんな質問をしているのか、どんなコンテンツをシェアしているのか、どんなサイトを情報源として活用しているか、どのインフルエンサーの話をよく聞いているのか、から始めるのがよいと思う」と語っていました。

コンテンツマーケティングの最先端を行く人々も私たちと同じように、日々地道な作業を続けているのですね。ターゲットを深く理解するのに効率的な特効薬はなく、こつこつと、そして恐らくは、直接話すようなアナログなやり方で続けるのが確実だということ。良質なコンテンツをつくって、マーケティング課題の解決に一歩でも近づいていくためには、この地道な作業に力を入れていくことが今の時点では実は早道、ということだと思います。

プロフィール

  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1992年電通入社。クリエーティブ局で、広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。現在は、日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティ向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行っている。
    2014年「コンテンツマーケティング27の極意」(翔泳社)、「エピック・コンテンツマーケティング」(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は、2013年、2014年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internasionalなど。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ