カンクリ通信 #05

新聞大会×商店街ポスター展【前編】

  • Sekousan
    世耕 石弘
    学校法人 近畿大学  広報部長
  • 日下 慶太
    株式会社電通 マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター
  • Hoshihara
    星原 卓史
    株式会社電通 関西MCプランニング局

新聞界の1年に1度のビッグイベント「新聞大会」が10月15日に29年ぶりに大阪で開催されました。それに合わせて新聞広告の可能性をより感じてもらおうと、商店街ポスター展を仕掛けてきた電通の日下慶太率いる5チームが近畿大学国際学部の15段広告(全面広告)をそれぞれ制作。新聞大会当日の中央5紙朝刊に、各紙異なるクリエーティブの広告が掲載されるという電通独自の企画を実施しました。今回はいつも「攻めの姿勢」で大学広報の先をいく近畿大学広報部長・世耕石弘さんと、この企画の発起人の日下慶太、星原卓史の鼎談を前後編でお送りします。

(左から)世耕石弘さん、日下慶太、星原卓史

(左から)世耕石弘さん、日下慶太、星原卓史

商店街ポスター展のやり方で新聞広告をする

星原:文の里商店街のポスター展を見たときから、「これは絶対新聞とも相性いい!」と思って、新聞につながる企画を考え続けていたんですけど、いざ実行してみようと思うと難しくて。特に掲載前にクライアントのチェック無しという商店街ポスター展のルールはハードルが高いんですよね。

日下:そうそう、広告内容をすべてお任せしてしまうというポスター展のノリを新聞でやるって、広告主にとってはめっちゃ勇気いると思います。どうして近大さんは今回の企画に乗ってくださったんですか?

世耕:僕も日下さんのポスター展のことはもともと知ってて、毎回めっちゃ笑わしてもらってました。だから、まぁこれは新聞でやっても間違いなく面白いことになるやろうなぁと最初から確信してましたね。

日下:事前チェックも何もありませんでしたが、内心はかなり心配してたんちゃいますか?

世耕:過去に自分たちでもいろいろ冒険的な広告やるたびに、大学のトップたちをハラハラさせてきたんですけど。でもちゃんと世の中が反応してきた実績があるんで、だんだん面白い広告にも寛容な感じになってきてまして。

今回もポスター展の過去の実績がはっきりしてましたから、その日下さんと組むって言えば周りは説得しやすかったです。

日下:今回の広告で、新設される国際学部を題材にしたのは?

世耕:国際学部新設が決まったときから、心に決めていたことがあるんですよ。よその大学がよく言ってる「世界に通用するグローバル人材を育てる」みたいな当たり前のことは言わんぞって。うちは1年目から全員留学という特色があるから、それをどう表現すればインパクトあるかなって悩んでいた時期に新聞大会のお話を頂きまして。まさに渡りに船でした。

日下:実際に掲載をご覧になってどうでしたか?

世耕:任せるとは言ったけどほんまに大丈夫やろかと不安もありましたから、ものすごくスリルがありました。そして掲載を見たときの満足感。このゾクゾクはクセになりますね。

星原:僕も実際掲載されるまでは「これ、みんなが面白いと思えるんかな?」と内心不安でしたね。ポスター展では盛り上がったけど、今回は町の商店街に張るポスターじゃなくて万人が見る新聞に掲載でしょ。新聞のメーンターゲットの50~60歳代にも、この面白さ伝わるんかな?って。

世耕:でも僕は新聞だから面白かったなと思ってますよ。掲載前夜に、「明朝これで掲載します」って報告メールをもらいました。僕は出張だったのでスマホの画面で原稿見たんですよ。初めて見る原稿。その時、正直「え…」って思いまして。これ、面白いの?日下さん、ほんとにこれがやりたかったの?って。

日下:え、それヤバいじゃないですか(笑)。

世耕:でも翌日実際に新聞に掲載された原稿見たら、新幹線の中で声出して笑いましたわ。スマホの小さい画面じゃこの面白さは伝わらんかった。手に取れる広告としては新聞て最大サイズでしょ。15段ならではのサイズ感があるからこそ笑える広告もあるんやなと。ネットでも今回の広告見れると思うけど、これはぜひとも新聞実物を見て笑ってほしい広告ですよ。

朝日新聞版
朝日新聞 CD:日下慶太 C:見市沖 AD:松長大輔 D:北山 義浩 P:圓尾 享宏 Pr:久安淳・星原卓史・西原僚

 

毎日新聞
毎日新聞 CD&P:日下慶太 C:石本藍子 AD&D:野村恭平 Pr:久安淳・星原卓史

 

読売新聞
読売新聞 CD&P:日下慶太 C:松下康祐 AD&D:瀧上陽一 マグロ:萩原英伸 Pr:久安淳・星原卓史

 

産経新聞
産経新聞 CD日下慶太 C:倉光真以 AD&D:瀬野尾佳美 P: 増田広大  Pr:久安淳・星原卓史

 

日本経済新聞
日本経済新聞 CD:日下慶太 C:大槻祐里 AD:井上信也 D:木村亮・林元気 P:大瀧卓也 Pr:久安淳・星原卓史・西原僚

 

批判?うれしくてたまらん。

世耕さん

星原:掲載を見た、周りからの反応とか大丈夫でした?

世耕:「こんな広告やったらアカンやろ」っていうクレームの長文メールが2通来ましたね。それがもううれしくて、うれしくて。過去に広告出してきて、一番つらいのって何の反応もないことやって痛感してますから。わざわざメールで細かくクレームを書くほど反応してくれる人がおるって、すごいことやと思うんですよ。

日下:良い反応しか評価されにくいですけど、どんな反応でもうれしく受け止めてくれるのは、この企画に乗ってくださった世耕さんならではの感覚ですよね。

世耕:僕だってね、シュっとしたかっこいい広告やりたいなと思う時もありますよ。でもバンバン広告出せるわけじゃないから、私たちとしては1発掲載でどれだけインパクト与えられるかが勝負。どれだけ話題になるかの方が大事やなと思ってますんで。

日下:世耕さんはかつて鉄道会社の広報にいらしたんですよね? そちらでの経験から、そういう考えを持たれるようになったんですか?

世耕:それはありますね。鉄道広報の広告って、いわゆるマナー広告メーンなので「車内通話やめましょう」といった表現ばっかりで。なんとか面白くやれんかなと案出してみたけど、やっぱり受け入れてもらえなかったですね。

日下:その状況は、世耕さんには相当ストレスでしょうね(笑)。

世耕:鉄道業界と、私大が抱いてる危機感のレベルが違うから仕方ないことなんですけどね。大学の入学者ってほぼ18歳なんですけど、2032年には40年前より18歳人口が半減するんですよ。他の企業さんなら、ターゲット減少してもターゲットゾーンを少し動かしたりすれば売り上げ保つ方法もあるでしょうけどね。でも大学はターゲット18歳って決まってる。なのに、それがたったの40年そこらで半減ってものすごい危機感ですよ。

日下:その危機感ってどこの大学でも持っていて、近大みたいに何かしてるんですかね?

世耕:なんとなく不安を感じてても、何かしてるところはまだ少ないんちゃいますか。だって、他の大学の広告見てみてください。大学が自分で勝手にシンボルやと思い込んでる建物の写真バーンと出して、まぁその大学ではイケてるんやろうなっていう学生の写真バーンと出してニカっと笑わせて。建物の写真見て「あ、ここ○○大学や~、やっぱステキ~」なんて思うの、その大学関係者くらいですよ。そんな広告してたって、肝心のその大学を知らん人に興味も持ってもらえんでしょ?

後編へ続きます

プロフィール

  • Sekousan
    世耕 石弘
    学校法人 近畿大学  広報部長

    大学卒業後、1992年近畿日本鉄道に入社。ホテル事業(海外派遣含め約7年間)、広報担当(約7年間)を経て、2007年近畿大学に。
    入学センター事務長として入学試験の実施や学生募集戦略などを担当し、2013年に新設された広報部の部長代理に。2015年から現職。
    「広報」と「広告」の機能を融合させるコミュニケーション戦略で戦前からはびこる「固定化された大学ブランドの枠組み」をぶっ壊すべく、「知と汗と涙のコミュニケーション戦略」を実践中。

  • 日下 慶太
    株式会社電通 マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター

    1976年大阪生まれ。チベット、カシミール、アフガニスタンなど世界中を旅をして電通に入社。コピーライターとして勤務する傍ら、写真家、セルフ祭実行委員、UFOを呼ぶバンド「エンバーン」のリーダーとして活動している。『商店街ポスター展』を仕掛け、佐治敬三賞を受賞。他、東京コピーライターズクラブ最高新人賞、ゆきのまち幻想文学賞など受賞多数。また、都築響一氏編集「ROADSIDERS' weekly」でも写真家として執筆中。ツッコミたくなる風景ばかりを集めた『隙ある風景』日々更新中。http://keitata.blogspot.jp

  • Hoshihara
    星原 卓史
    株式会社電通 関西MCプランニング局

    2002年電通入社。
    入社以来、新聞を中心に、次世代に向けた新媒体開発や医学会総会などのメディカル分野でのコミュニケーション、復興地向けメディア開発など幅広いプロジェクトに従事。カンヌ、スパイクスアジアなどの広告賞受賞作品へも数多く関与。
    「みんなの未来の充実」を信条に「広告主へのメディアでのお手伝い」を日々の業務にしている。近年は自宅の育児・家事のお手伝いにもアプローチ。

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