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変容する、「話題」の生まれ方・つくられ方No.1

変容する、「話題」の生まれ方・つくられ方

2015/11/20

SNS全盛の現代。話題は日々、瞬時に生まれ、瞬時に消えていく。話題はどうつくられ、マーケティングにどう関わっているのか。Twitter Japanの渡辺英輝氏と電通・iPR局の石田茂氏が、イマドキの話題形成を事例とともに考察する。


イマドキの話題は、ボトムアップでつくられる

石田:PRのゴールは世の中にコンセンサスを形成することであると考えています。そのきっかけとして、話題になることは大切な要素です。しかし、SNSの時代になって話題のつくられ方が変わってきました。そこでイマドキの話題形成について考えてみたいと思います。Twitterでも話題にしてほしいとクライアントから要望されることが多いでしょう。

渡辺:一番期待される部分ですね。Twitterは、話題のランキングが数十分ごとに変わっていくのが特徴です。それを見れば、この瞬間のトレンドが分かる。そこに載ると企業にとってはインパクトがあるわけですから。

石田:直近の例でいうと?

渡辺:例えば映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。2015年10月21日は、Part2で主人公たちがタイムマシンのデロリアンでたどり着いた未来でした。その日が現実にやって来て、かなり盛り上がりました。それに合わせて映画のボックスDVDが発売され、ナイキは、同作でマーティ(マイケル・J・フォックス)が着用した “自動で靴ひもが締まるスニーカー”を「THE 2015 NIKE MAG」として16年春に発売すると発表した。こうした、世の中のモーメントに企業が乗っていくケースは最近の動きだと思います。

石田:話題のつくられ方が昔と全然違ってきています。マスメディアも、SNSで話題になったものを追い掛けるという逆のケースが多くなってきた。情報の流れ方、パターンが複雑になってきていますよね。

渡辺:トップダウンではなく、ボトムアップで話題がつくられるのが、ここ数年の傾向ですね。

賛否両論の論争が起きると、人は態度変容・行動変容に移る

石田:世の中にニュースが流れ、それが話題を形成したとき、当然、マーケティングにも影響を与えるケースが出てくるわけですが、Twitterではどう考えていますか?

渡辺:それは社内でも分析していまして、認知と態度変容・行動変容を分けて考えた方がいいのではないかと。企業やクリエーターがつくったコンテンツをSNSで広げるのはあくまで認知です。その先、態度変容・行動変容に影響を与えるのは賛否両論があるときなんです。「好きだ」「嫌いだ」という論争が起きると、「自分で確かめてみよう」という行動につながる。

石田:なるほど、その通りですね。マスメディアでも、ポジティブ、ネガティブの両面から取材は入りますが、SNSでの両論とは違った意味合いですからね。でも、日本でのSNSの特性だと、どちらか極端に偏ることもあるので、両論になるように持っていくのは難しいですよね。

渡辺:当社としては、ツイートする理由を設計し、会話を始めさせる。このとき、企業マーケティングでいうと、ポジティブとネガティブ、両方出た方がいい。もちろん企業はポジティブを望むと思いますが、もう一歩が必要な時代になっている。

石田:賛否両論があるから、関心が高まる。一番避けたいのは、スルーされること、つまり無関心な状態です。否定するのも関心があるからで、マイナスな文脈は、プラスに変換することが可能です。しかし、なかなか企業はそのような思考にはならないのが実態です。

渡辺:そうなんですよ。「いいですね」ばかりだと、話題にもなりません。

話題が臨界点を超えたとき、一瞬にしてメジャー化する

渡辺:ムーブメントの起こり方も変わってきました。例えば「カープ女子」は長い時間をかけて育ちました。去年あたりから世の中化し始めましたが、Twitter上ではその2年ほど前から出ていた。起点はカープファンの女子を描いたマンガです。Twitter上にはマンガ好きも多い。これをきっかけにプロ野球を見始めたら、イケメン選手がいるじゃない!(笑) 瞬間的な話題とは別に、こうしたムーブメントがじわじわ起こっています。

石田:われわれがつくったコミュニティー分析ツールで解析すると、関連するファンコミュニティーは複数存在することが多いのですが、ファン同士のやりとりが、あるきっかけで臨界点を超えたときに、コミュニティーを超えて伝播(でんぱ)していき、一瞬にしてメジャー化するケースがあります。

渡辺:しかし、それを仕掛けられるかというと難しいですね。

石田:仲間や世の中の関心ごとになるのは、マーケティングにおいては非常に価値のあることですが、マスメディアとSNSが世相を反映する時代になって、話題の形成のされ方が大きく変わってきています。将来においても、進化し続けるでしょう。話題を追い掛け続けることがわれわれの仕事であって、大きな役割だと思っています。