中国発★孤児たちに玩具と愛をスマホで「スライド」 NFC技術で新しい寄付の仕組み

中国では36年にわたる一人っ子政策の結果、子どもたちは大切に育てられてきた。両親や4人の祖父母からの愛情と期待を一身に受け、特に都市部においてはまるで「小さな皇帝」のような扱いだ。

その一方で、実は孤児の数も増加傾向にあることはあまり知られていない。2014年にはその数は54万人に達しており、温かい家庭で何不自由なく育つ子どもたちとの格差が際立つ。

世界50カ国以上で事業展開するドイツの大手玩具メーカー、ハペ社がこの夏行った、中国の孤児たちに目を向けたキャンペーン「スライドネーション」(スライドさせてドネーションする、という意味の造語)が話題になっている。

ハペ社の天然素材などが使われた玩具は比較的高価格帯だが、中国でも人気だ。子どもにいいものを積極的に買い与えたいと考える親たちと共に、子どもたちは店舗を訪れる。

スライドネーションでは、子どもにおもちゃを買う、まさにその瞬間に孤児の存在を思い起こさせることで効果的に寄付を促進できるのではと考え、特別なカタログを用意した。

そのカタログの各見開きの右ページには玩具の写真、そして左ページにはその玩具を受け取るかもしれない孤児が写っていて、その手の辺りはちょうど玩具のシルエットに空白になっている。ページにはNFC(近距離通信)技術を駆使したチップが埋め込まれており、右ページの上にスマートフォンをかざすと画面に同じ玩具の写真が現れ、そのままスマートフォン画面を左に「スライド」すると、孤児の手の空白の部分にその玩具がぴったり重なる。次に現れる購入画面でクリックすれば、玩具が孤児の元に届けられる仕組みだ。玩具を受け取った孤児からお礼の動画メールが届くインタラクティブなコミュニケーションの仕組みも用意され、またハペ社のサイトでは他の孤児たちのメッセージを読むことができる。(下記の画像をクリックすると別サイトで動画をご覧いただけます)

slidonation

新しい寄付の仕組みに興味をかき立てられる形で、来店者の8割近くがスライドネーションに参加。販促にもつながり、カタログに掲載された20個の玩具の売り上げは52%、全体でも28%増加。多くの孤児に笑顔をもたらしたその取り組みは、メディアで中国全土に伝えられ大きなムーブメントとなった。

キャンペーンを手掛けた一人、北京電通CDCの津布楽一樹エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターは「セールスとCSRという、ともすると相反する活動をどう両立させるか、裕福な子どもと恵まれない子どもをどうつなげるかというのが、今回の挑戦でした。何よりこのような活動に取り組んだクライアントに感謝の気持ちでいっぱいです」と語る。

同キャンペーンは10月、中国国際広告祭とエフィー・アワード中国で最高賞に当たるゴールドを、11月にはワンショーでもメダルを獲得した。

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