loading...

アクティブラーニング こんなのどうだろうNo.1

ロシアでは、「1年生」という学年が2学年ある。

2015/11/27

「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」スタート(倉成)

電通総研に立ち上がった「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」
名前の「こんなのどうだろう」に表されるように、アクティブラーニングについてさまざまな角度から提案を行う予定です。このコラムでは、ラーニングのアクティブ化に活用できそうなメソッド、考え方、人物などを研究所のメンバーが紹介していきます。

第1弾は、6カ国で教育を受けて育ち、The Directory Big Won Rankings 2014のコピーライターランキングで世界第1位に輝いたキリーロバ・ナージャのコラム。他国での経験から、日本の教育へのヒントを探ります。

日本の小学生1年生とロシアの小学生1年生

ロシアの小学校教育は、日本と少し違います。(ナージャ)

「あなたは、何歳から学校に行ってるの?」。日本の小学校で友達にそう聞いたことがある。友達は、「えっ?」という顔をして、質問の意味が分からなかったようだ。わたしはさらに自慢げに「ちなみにわたしは6歳!」と言った。友達はますますポカーンとした。せっかく自慢しようと思ったのにまったく理解されなかった。

ロシアではこの質問、よくあること。全員6歳で小学校に入学する日本と違って、子どもの発育や個性に合わせて入学の年齢を決めることができる。標準は7歳。でも、それより早く学べるこどものために6歳からのクラスもある。つまり、6歳のための「1年生」、7歳のための「1年生」と、同じ「1年生」でも2学年あるのだ。早く始める分、少しゆっくり学ぶことができるし、集中力を維持するために1時間の「昼寝」タイムだってある。7歳クラスは、4年生を飛ばして3年生から5年生に上がるので、4年生を飛ばさない6歳クラスと5年生になるタイミングで合流する。

6歳または7歳からというルールはあっても例外がないわけではない。8歳から入学することもある。精神的についていけないなら、勉強を始めても意味がないからだ。入学が遅れたからといってその後の人生に響くわけでもない。スロースタートから学者などになる人もいる。

逆に特に早熟な人は、5歳から入学することもある。もう入学できる能力があるなら無駄に1年間を保育園で過ごすことはないからだ。でも5歳となると頭脳よりも精神がまだ追いつかないことがあり、ときには途中で脱落する子どももいる。でもまた来年入り直せばいい。

学年の区切りも曖昧だ。9月入学であるが、1月生まれくらいまでは前の学年に入るということもしばしば。日本のように4月1日生まれと4月2日生まれの間にどうにも超えられない学年の溝はない。結果、クラスには少し年齢が違う同級生がいることが普通に起こる。だからといって変な上下関係が生まれるわけではなく「年下なのによくやるなあ」と能力が違う人が世の中にはいることを学ぶのである。

後から、日本には飛び級がないことや小学生で留年がないと知ったが、これも驚きだった。小学校入学前から読み書きや計算を教えたりするから、小学校に入学したら簡単すぎてつまらなくならないか。逆にどれだけさぼっても進級できることも勉強に対する責任感が生まれないのではないか。

でも年齢が一緒だからこそ生まれる日本の「同級生」の結束力は後の人生においても続き、初対面の人ともすぐに打ち解けるなどさまざまな力を持っている。とても不思議である。

個人の「能力」に応じて学びを変える欧米と「能力」ではなく「年齢」で学びを区切る日本。実はスタートラインから教育に対する考え方は大きく異なっているのだ。