電通を創った男たち #06

電通電波ビジネス黎明期の牽引者

木原通雄(5)

  • Okada
    岡田 芳郎

時代とともに変化する米国メディア

スナップ・アメリカ 3

木原通雄はテレビの日本での出発の時期に、広い視野でアメリカのエンターテインメント産業の実態とアメリカ人の生活を見ようとしている。

「スナップ・アメリカ 2」には、「シネラマの魅力 映画資本の新分野か」という見出しがついている。

「アメリカの映画企業を外から脅かしているものがテレビだとすると、それを内から動かそうとしているのが、新しい3・D(ダイメンション)フィルムかもしれない。日本でも立体映画としてさかんに論議されているが、今ニューヨークでやっているのに二つある。一つは、ラジオ解説者、作家、プロデューサー、何でも来いという鬼才ロウエル・トーマスが、フレッド・ウオラーという技術家の発明を抱えこんで作ったものだ。もう一つはアーチ・オブラーという、これは二流の劇作家の作になる。

 『シネラマ』という言葉は特にトーマスが自分たちの技術をうたった名前だが、ともかく珍しいというので大変な人気を集め、ブロードウエイ劇場の普通の席が四月の中旬まで売り切れという有様。しかし駄目だと思って出かけてみると、マチネの切符は手に入ったから、あるいは峠を越したのかもしれない。(中略)

同じ晩にもう一つの方も見たが、これは入り口でくれるセルロイドの眼鏡をかけなくてはならぬ。アフリカの猛獣と戦う俗っぽいドラマだが、ライオンが観客席にむかって飛びかかったり先住民の槍が飛んでくる印象が、新しいといえばいえよう。ところが、この二つの新しい映画は、テレビに押された映画資本が別の分野を拓こうとするところに、本当の意味があるといえる。」

木原は、テレビに対抗するため映画産業が技術革新に拍車をかけている現状を鋭く捉える。21世紀の今話題になっている3D映画は、すでにこの時点で登場していたのだ。またワイドスクリーンのシネラマが新しい映画分野として人気を集めていることをレポートする。

3月27日の「電通週報」に掲載された「スナップ・アメリカ 3」の見出しには「ラジオの圧倒的魅力 スターリン・ニューズに見る鮮かさ」とある。

「アメリカは、少なくとも共和党の政府は、戦争の腹をきめたのではないか、それが来てからの一番大きな印象だった。(中略)

そういうアメリカの空気をひっくり返したのが、スターリン倒る!のニューズだった。三日の夜半、CBSのニューズとコメントを聞いたが、翌日のヘラルド・トリビューンは、見出しこそ大きいけれど、中味はAPの電報、それもソ連政府のコミュニケの説明したものが入っているだけである。ところが、床のなかでラジオのスイッチをひねると、洪水のようなニューズである。それもニューヨークの国連本部をはじめ、ワシントン、ロンドン、パリからの放送が中継され、東京の反響もむろん伝えられている。新聞も正午版になればこの種のニューズを入れることはできるが、どうしてもラジオの持つスピードに敵わないのである。

その上、お昼前のコメディ・ショウ、これは日本でいえば漫才式のプロなのだが、その中に早くもスターリンの病気をふんだんに織り込んでいる。それだけアメリカ人の関心が強いからとも云えるが、やはりディレクターの旺盛な意欲と能力とが、ジャーナリズムと商業主義の結合に成功している証拠であろう。

TV制作体制

テレビの方はどうかと思って、NBCに出かけて見ると、ここでもさっそくスターリンを取り上げてニューズに編成、まず担当のアナウンサーの放送につれて、国連総会におけるロッジとヴィシンスキーの応酬、ヤルタ会談におけるスターリン、古くはゴルキーの棺を担ぐ彼の姿などが写し出される。その後で、ワシントンにいるNBCの特派員でソ連通という男との対談があって、後継者はマレンコフだろうというのでお終いとなる。

なるほど、テレビのニューズの作り方はこんなものかと思ったが、ラジオと違ってこの方は視覚が絶対の条件となるから、アナウンサーの条件はもとよりニューズ映画から各種の写真にいたるまで、広い動員力が必要となろう。テレビが育つためには、社会的に科学的な基礎がしっかりしなくてはならぬことが、しみじみ痛感される。」

スターリンが倒れたことへのマスコミの動きをすぐチェックし、ラジオのスピードに目を見張る。そしてテレビがこのような事態が起きた時に十分な対応が出来るためには何が必要かを観察している。

木原は天性のジャーナリストであるだけでなく、プロデューサーの洞察力を持っている。日本のテレビが最初から心掛けるべき陣構えを頭に描いている。

 

(写真上)「スターリン倒る!」の報への米国メディアの対応を伝える「スナップ・アメリカ3」、(下)当時の電通のテレビフィルム制作体制。総額2000万円にのぼる撮影機材を輸入したという

(文中敬称略)

※次回は11月12日に掲載します。

プロフィール

  • Okada
    岡田 芳郎

    1934年東京都生まれ。早大政経学部卒。56年電通入社。コーポレート・アイデンティティ室長、電通総研常任監査役などを務め、98年退職。著書に『社会と語る企業』(電通)、『観劇のバイブル』(太陽企画出版)、『日本の企画者たち~広告・メディア・コンテンツビジネスの礎を築いた人々~』(宣伝会議)など。

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