電通スマプラ #19

聞いてみた!スマホ世代の若者たちの、リアルなスマホライフ【前編】

こんにちは、電通スマプラの世津です。前回では、スマホの普及がもたらした消費に関わる“視点”の変化について分析を試みました。今回はスマホ世代の消費において実際にスマホがどのように関わっているのか、生の声をもとに考えていきます。
関西学院大社会学部・鈴木謙介ゼミの皆さんにご協力いただき実施した、鈴木ゼミ×電通スマプラでの共同ワークショップの模様を2回にわたって紹介します。


ワークショップでは、20前半のリアルなスマホ世代の皆さん19人に、普段自分たちのお買い物について振り返ってもらい、お互いにインタビューし合う形で、各人が実際にたどった消費行動のプロセスや実態を引き出してもらいました。


そこから見えてきたのは、これまでの広告マーケティングが捉えてきた消費行動とは全く違う、新しいツールとしてのスマホの使い方でした。では、スマホ世代の若者達が、実際にどのような消費行動をしているのでしょうか。

あらゆる商品の購入や検討の際に、スマホが活躍している

鈴木ゼミの皆さんは、日頃から社会学やマーケティングについて研究し自分の行動や意識に対してよく思考をめぐらしていることもあり、単に同じ年代の方に尋ねただけでは引き出すことのできない面白い消費事情を教えてくれたり、自分たちの気持ちについても深く掘り下げてくれました。家・旅行といった高額なものから、ダイエット用プロテインバーや洗顔用ネットといった比較的気軽なものまで、様々なお買い物事情について、議論は盛り上がりましたが、その中でも印象的だったケースを取り上げてみます。また、皆さんのお買い物から得られた発見や気づきを、各ケースの後ろにざっとまとめてみました。

「疑似体験を楽しんでから、リアル体験を検討」【ライブ】Mさん(21歳)

音楽好きなMさんは、いい音楽を知りたくなって、YouTubeで新しいバンドを探します。気になったバンドのTwitterアカウントを見つけ、PVやライブ映像などを楽しみながら、リアルのライブ情報も同時にチェック。場所などを検索しているうちに、行きたいと思うようになります。そこで誰か同伴してくれる人を見つけるべく、ソーシャルメディアで興味のある人がいないか軽い気持ちで投稿したところ、なんと長らく会っていない大学の先輩が反応してくれました。先輩と直接LINEで連絡をとり、一緒にライブに行くことになりました。


確かに今では、お金を出さなくても体験できることが増えました。無料で楽曲をフルに聴けることも多いし、臨場感のあるライブ映像やPVでも鑑賞できるものがいっぱいあります。バーチャルで楽しんだうえで、ちゃんとお金を出してリアルな体験をしたい、と思うようになる気持ちのプロセスをスマホでつくることが今後ひとつのポイントになります。
一方で、例えば今回のケースで言えば、CDではなくライブに価値を感じているということを把握することも大事です。改めて、バーチャルな体験の、その先で提供されるリアルな価値=売るべきモノとは何かについて、今一度立ち止まって考えておくべきでしょう。

「欲しいものは、すかさずマーキング!?」【アウトドアブランドのリュックサック】Hさん(20歳)


男子学生のHさんは、ふらっと立ち寄ったあるアウトドアブランドのお店で、リュックサックを発見。すでに黒のものは持っていたが、今回はポケットやサイズ感や素材がよくて、欲しいと思うように。
そこで彼は帰宅しながら、スマホで商品の画像を保存しました。後に何度かその画像を見返してじっくり考えました。彼はそうやって画像を見返すことで、自分の中で「欲しい気持ちを熟成させていた」と振り返ります。しかし、その行為は犬の「マーキング」のようにある程度“所有した気分”になり満足感を得てしまったこともあり、いまだに購入にはブレーキがかかっている状態だそうです。ずっと欲しい、今でも欲しいと思うにもかかわらず「映画とかラーメンの方が、優先順位が高くなってるんですよね」と分析してくれました。


Hさんがマーキングだけで満足して終わらずに、ちゃんと購入してくれるよう背中を押してあげよう、というところに課題とチャンスがありそうです。例えばマーキングするユーザーに対し、SNSを通して1to1でメッセージを届ける、あるいはさらにリアルな体験を提供するといった仕組みのプロモーションが考えられそうです。

「納得したいからスマホで徹底的に、欲しい!を高めます」【スーツケース】Sさん(21歳)


テレビ番組「アナザースカイ」で二階堂ふみさんを見て、同ブランドのスーツケースが欲しくなったというSさん。しかしそのブランドのサイトを見たところ、価格が高かったため断念。今度は「女子大生 おすすめ スーツケース」で検索。ヒットした「MERY」の記事で、ドラマ「失恋ショコラティエ」で紹介されていたスーツケースに引かれ、そのブランドを突き止めました。ネックとなっている価格で、安い順に探した商品を実際に店舗で確認しようと思ったところ、在庫がなくその日は断念。最終的にはZOZOTOWN のセールで購入。いまや、もはやセールスマンのようにそのスーツケースの魅力を語れるほどになっていたSさんなのでした。


確かに、「あの人が愛用しているから」とか「デザインが人気みたいだから」とか、あるいは価格や機能なんかについて、調べていくうちにどんどん情報が蓄積して、とても詳しくなってしまうことってありますよね。Sさんもまた、スマホを通して商品の多面的な魅力を知ることができて、「スーツケースが欲しい」の気持ちがどんどん大きくなっていったようです。

「3回“欲しい”と思ったら本気の証し」【Kindle】Wさん(20歳)


Wさんは、「流行ものはすぐ欲しくなるので、欲しいものは3回の波が来たら買う」というルールがあるそう。最近購入したKindleを手にするまでにも、実際3回の波があったと振り返ります。
1回目は、“なんだか話題らしい”とネットやテレビのニュースで知った時。2回目は、街で持っている人を見かけて、電子書籍がかっこいいと思った時。そして最後に欲しい気持ちを高めたのは、又吉直樹さんの芥川賞受賞を知り読書不足を解消したいと思った時。そこから比較サイトで価格をチェックし、「欲しい!」の気持ちをさらに高め、さらにPCサイトに移行してじっくり比較・検討して、最終的にそのままデスクトップで注文しました。


冷静に情報の取捨選択をしていても、違う文脈で複数回同じ商品にたどり着けば、これは自分にとって必要なのだ、という「欲しい」の気持ちが生まれるみたいです。このことを踏まえたコミュニケーションデザインが不可欠になります。商品に関連する文脈の情報を、多様な媒体からタイミングよくばらまき、気持ちの「山」を複数つくる。そしてこの「山」のつくり方に関しては、従来のコンタクトポイント設計と同様に、商品カテゴリーごとのパターンがありそうです。

「信頼できるお手本はInstagramにあり」【ダイエットプロテインバー】Kさん(21歳)


ダイエットを決意したKさんは、まずInstagramを活用しました。「#ダイエット」で検索すると、たくさんのダイエット関連のアカウントがヒット。毎日の食事や運動内容、鏡の前の自撮り写真が上げられています。ちゃんと痩せている経過が分かるので、まさに信頼ができる“生の成功例”を見つけることができます。Kさんは、自分がフォローして参考にしている投稿者がオススメしていたあるダイエットプロテインバーが気になって、比較サイトで価格をリサーチ。輸入ものなので比較的高価な商品でしたが、安く売っているオンラインショップを発見し、そこでの購入を決めました。


信頼できるロールモデルを見つけ出し、写真などを通してリアルな使用イメージや過程を知ることで、「欲しい」という気持ちを確認しながら高めていく。そんなことも、スマホによって簡単で当たり前のことになってきています。第三者的な人が、詳細な過程を包み隠さずに、リアルタイムで見せてくれると、効能や価値に対する信頼や期待がぐっと上がります。実はこれって、ダイエット商品のような機能性訴求を重視するものだけではなくて、スマホが普及した今では、もっと違う市場でも共通して使える戦い方なのかもしれません。

「実はスマホで超堅実・超理性派な買い物してます」【スニーカー】Kさん(20歳)


Kさんは、スマホを駆使して、とても賢い買い物をしています。少しでもリーズナブルな値段で購入したいので、実店舗とEコマースサイトを何度も行き来して最終的な決断をしているようです。最近の賢い買い物は、部活用も兼ねたスニーカー。ウェブで調べた後、店頭で試着してサイズや着用感をじっくり確認、そしてAmazonで価格が最も下がったタイミングを見事に見極め、購入に至りました。


スマホがあれば、リアルタイムで値段の変化もチェックすることができる。Kさんのように、これをもはや日常的な消費行動として行っている人も少なくありません。機能性やSNS映えといった要素で「欲しい!」が高まっても、最後のお得感の一押しは絶対に必要。もちろん、単なる値下げにおける後押しではないやり方もあると思いますが、損していない、賢い買い物をしたという感覚を最終的には必ずどこかで付与することが大事です。

「記事のオススメもうのみにしません。人のホンネはTwitterで見抜く」【化粧水】Kさん(20歳)

さらにKさんは、高級化粧水を買おうとして今もいくつかの候補の間で揺れ動いているといいます。彼女は「困った時にはMERY」といっており、これは他の女子からも賛成の声が飛んできました。
しかし、日々スマホで大量の情報をさばく彼女たちは、記事の書かれ方にも敏感です。MERYのようなキュレーションサイトやレビューサイト、それから街頭でのサンプリングイベントで情報や商品に接触しても、必ずしも欲求が順調に高まっていくわけではありません。
実際、慎重派のKさんは、キュレーションサイトをチェックした際、そこに書いてあることが「売り」を意識した内容であることに違和感を感じたそうです。そこでとった行動は、Twitterでのツイート検索でした。
「なんだんかんだいって、Twitterが、一番本音が書かれてるんだよね」。スマホ端末からその瞬間の、個人の本音が書きこまれている、と指摘します。


Kさんは確かに情報リテラシーがとても高い人といえますが、決して珍しい存在ではないように思えます。 今の若者はうまく複数のコミュニティを使い分ける、とはよく言われますが、単に友達とのコミュニケーションだけでなく、お買い物などの情報を調べるのにも最適な場所を選べるようになってきています。
例えば、ウェブのしかるべきところにちらばっている生々しい本音を、あえて逆手にとりプロモーションに生かしていくような仕掛け方があります。媒体と文脈は変わっても、今後もこうした情報リテラシーが高い人たちの意識や行動を踏まえた取り組みって増えそうですね。

「スマホで広がる『少し未来の自分』への妄想」【ニューヨーク旅行】Yさん(21歳)


Yさんは、ニューヨーク旅行の後押しとしてスマホの役割を紹介してくれました。当初は大学生にとって決して安い買い物ではないので尻込みしたそう。しかしそこで彼女の目に飛び込んできたのは、友人がSNSにアップロードした、NYで撮った一枚のかっこいい写真でした。「SNS映えするやん!と確信」して、絶対に行きたいという気持ちになったそうです。「スマホは、想像力を広げてくれたんです」とYさんは振り返ります。


SNSでは周りの友人知人の姿をヒントに、その商品やサービスを利用している未来の自分を、リアリティをもって想像することができる。これは前回の記事でも触れたように、「なかま」視点をより意識することが多いスマホ世代ならではの能力です。Yさんのように、そこから「欲しい!」の気持ちが一気に高まることがあります。未来への確証をわかりやすく伝え、自分ならこうかな、と想像を働かせることのできる余地を与えることが大事です。

いかがでしたか。イマドキの若者が、いかにスマホを巧みに活用しているか、実例をもとにご想像いただけたでしょうか。現役大学生と議論を交わして、私たちもたくさんの新しい発見や気づきを得ることができました。次回は、学生の皆さんが挙げてくれた消費行動におけるスマホの役割について、考察をより深めていきたいと思います。どうぞお楽しみに!

 

プロフィール

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    世津 洋子
    株式会社電通デジタル

    2011年電通入社。16年から電通デジタル。ストラテジックプランナーとして自動車や製薬、食品、レジャー、玩具など様々な業界のクライアントを担当。ターゲットの心を動かし、売りにつなげられることを第一に、メディアニュートラルなコミュニケーション戦略をデザインしている。

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