電通を創った男たち #07

電通電波ビジネス黎明期の牽引者

木原通雄(6)

  • Okada
    岡田 芳郎

ハリウッドを拠点に、テレビと映画の熾烈な競争

キャピタンTV劇場

「スナップ・アメリカ 4」は、昭和28(1953)年4月3日の「電通週報」に掲載された。見出しは、「テレビ、西へ往くか! 戴冠式に備える映画とテレビ」。「ニューヨーク 木原通雄」と署名が入る。

「テレビ、西へ往く! その意味は、前にも書いたように、主としてタレントの関係と大陸の東西をつなぐケーブル・マイクロウエイブの完成によって、テレビのすぐれたプログラムが今後ハリウッドで作られる傾向を示したものであろう。僕はまだ見ないが、CBSが最近ハリウッドに完成したテレビ・スタジオは文字通り世界一のものだという。ついでにここでNBCとCBSの印象を書くと、この二つの会社はアメリカにおける二つのジャイアントだが、前者が何事にもおっとりとしているのに比べて、後者はいかにもスマートである。日本ではCBSを少し低めに見ていた傾向があるようだが、それは間違っている。例えばニューズものにかけては明らかにCBSが優っているし、色彩テレビの競争でも今のところ一歩を先んじている形である。今後、この両雄がアメリカ・テレビ界に見せる凄まじい競争こそ、どんなプロより興味とスリルに富むものであろう。

テレビが西へ往くということは、たしかにハリウッドの映画資本にとって大きな攻勢には違いないが、映画の方だって必死の打開策にたいして自信を失ってはいない。今年、八十の老齢でなお元気なパラマウントの会長アドルフ・ズーカーなどは、もっとも強腰の一人と云えよう。従って、パラマウントは例の3D映画にも進出する計画だし、他に、電話線によって有料の映画をテレビで見せる『テレメーター』を積極的にとりあげる方針らしい。これはまだ、アメリカでもきわめて一部、パームスプリングというところで試験をやっているに過ぎないが、この技術を劇場に応用する『パラビジョン』の将来と共に、映画界の新分野として注目に値しよう。

もっとも従来通りの映画にしても、大きなスペクタクルものはテレビとはまったく違った範疇に属するし、第一、映画の長さ、約一時間半という基準は永年の経験から作り上げられたもので、その点だけでもテレビとは相容れない。それに質のいい映画は、やはり観客を集めていて、例えばイギリスの『赤い靴』は再び現在ブロードウエイにかかっている。レイモンド・ペイジの作品メトロの『三つの恋』はロックフェラー・センターで封切られたが、傑作の名に背かず満員であるし、日本にもさすがにファンの多い名監督ヒッチコックが、モンゴメリー・クリフトとアン・バクスターを使った『わが告白』も大変な期待を集めている。この世界でも、最後は内容の優れたものが勝ち残るのであろう。テレビと映画と双方にとって、目前最大の命題は、六月のイギリス戴冠式である。パリとロンドンの中継に成功したというテレビも大西洋の波濤は越えられまいから、この勝負は先ず映画に歩があるかもしれないが、テレビが指をくわえて甘んずることもあるまい。お互い、知恵の出し比べというところ。」

「電通週報」の記事広いアメリカでテレビ放送の全国ネットワークをどのように行うかに木原は注目している。ケーブル・マイクロウエイブの完成でタレントが大勢いるハリウッドに制作が集中するという。NBSとCBSの競争に野次馬的関心を隠さない。電話線を使って有料の映画をテレビで見せる方法や、この技術を劇場に応用するやり方はすでにこの時期に構想されていたのだ。テレビと映画は違ったものだが、内容の優れたものが勝ち残るという真理はテレビマンの忘れてはならないことだ。

テレビも大西洋の波濤は越えられないと木原は記すが、衛星を使い大陸を超える中継放送が行われるようになったのは、この10年後の昭和38年だ。その最初の放送がケネディ暗殺のニュースだったのは衝撃的だった。

 

(写真上)ハリウッドにあったNBCのテレビ・スタジオ「キャピタンTV劇場」、(下)ハリウッドの近況報告を伝える「電通週報」の記事

(文中敬称略)

※次回は11月13日に掲載します。

プロフィール

  • Okada
    岡田 芳郎

    1934年東京都生まれ。早大政経学部卒。56年電通入社。コーポレート・アイデンティティ室長、電通総研常任監査役などを務め、98年退職。著書に『社会と語る企業』(電通)、『観劇のバイブル』(太陽企画出版)、『日本の企画者たち~広告・メディア・コンテンツビジネスの礎を築いた人々~』(宣伝会議)など。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ