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セカイメガネNo.40

みんな、自分のことばっかりって、本当?

2015/12/23

みんな自分にだけ関心があるって本当?

インスタグラムで人気のオーストラリアの19歳モデルが、二度とソーシャルメディアに参加しないと発表したことを11月初めに知った。「いいね!」や「フォロー」があふれるデジタル世界で、彼女には60万人を超えるフォロワーがいた。オンラインでの活動でかなりの収入も得ていた。それだけにこの離脱宣言は大胆な決断に思えた。

ソーシャルメディア中毒、自分が創り上げたオンライン人格を維持し続けることの難しさ。それが幸福で達成感のある実生活を困難にしていると考えた彼女に賛同した人たちがいた。一方、非難の声も上がった。上手なPRで自分の価値をつり上げ、将来の活動につなげているにすぎないと批判した。彼女の友人たちも批判に加わった。

こうした出来事がニュースバリューを持つのは近頃珍しくない。メディア創成期は人と人をつなぐことに意味があった。やがて互いを祝福し合い、認め合うことが一番重要なメディアに変化を遂げた。ソーシャルメディアがいかにオンライン人格を形成するか、私たちは知っている。お金持ち、有名人、自力で有名になった人だけでなく、普通の人たちでさえソーシャル空間で生きることに日々プレッシャーを感じるようになった。たいがい現実とは違うもう一つの人生を生きている。他人から「いいね!」をもらい認知されるために一生懸命になり喜びを覚える。

ソーシャルメディアはやめられるのか、やめた後に何が起きるか、疑問だ。1950年のアメリカの「自尊心調査」で、自分を大事に思う16歳男女はわずか12%だった。その数字は最近80%まで上がった。この変化にソーシャルメディアの発達が大きく寄与しているだろう。ティーンエージャーがそこを離れるとき、人格やアイデンティティーの一部を喪失するのだろうか。

話題になったモデルは離脱宣言後、ウェブサイト「変化を起こす人でいよう」を立ち上げた。インターネットをより自覚的に使えるように訪問者を助けるサイトだ。彼女は確かに人格の一部を失ったかもしれない。けれども新たな人格を形成し、人生で追究する目的を見つけたのだろう。

自分のメッセージが誰に到達しどんな影響を持つのか、ソーシャルメディアとの付き合い方を考え直してみることで、もっと大胆な変化がこれから起きる気がする。みんながみんな「自分のことばっかり」というわけではないのだ。

(監修:グローバル・ビジネス・センター)

Wrong Hands
©John Atkinson, Wrong Hands・gocomics.com/wrong-hands・wronghands1.com