コンテンツマーケティングの現場から #23

日本の企業はコンテンツマーケティングと相性がいい?

  • Aoki keigo pr
    青木 圭吾
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員
  • Alex
    内藤 敦之
    電通デジタル・ホールディングス シンガポール リージョナルダイレクター

コンテンツマーケティング時代の購買行動の新しい捉え方として、電通デジタル・ホールディングス(DDH)シンガポール支社の内藤さんが発見した「DECAX」モデル。前編に続き後編では、日本企業との相性などについて議論しました。

※「DECAX(デキャックス)」は、発見(Discovery)→関係作り(Engage)→確認や注意(Check)→行動(Action)→体験と共有(eXperience)という、コンテンツマーケティングのモデルです。
(左から)青木さん、郡司さん、内藤さん
(左から)青木さん、郡司さん、内藤さん

郡司:内藤さんは、東南アジアのクライアント向けに事業開発をする際にDECAXモデルという新しい思考フレームの必要に迫られたわけですが、これは日本でコンテンツマーケティングを実施している方にも当てはまると思いますか。

内藤:実は、東南アジアでも日本のマーケターと接触する機会が少なくありません。日本でも当てはまると思います。日本と事情が異なるのは、「コンテンツマーケティング≒ステマ」みたいな誤解を持つクライアントはいません。ちゃんとしたコンテンツを作り込み、求めている人に、ちゃんと届け、その結果として生活者がハッピーになるようなことをしていかないと、依存症のようなことになってしまう。ここは気を付ける必要があるでしょうね。

郡司:同感です。コンテンツでどんなに持ち上げてもしっかり確認(Check)のプロセスで見破られてしまう。ユーザーにとって誰が発信しているかはとても重要で、コンテンツ開発者はそこを意識する必要があると思うんです。

広告では、企業が主役になって発信すると売り込み色が強くなるので控えたほうが良いと考えがちなのですけれど、広告だけでなく企業からの情報発信全体として生活者から見た時、企業はその領域の専門家としての信頼性があります。だからその立場から発信すれば説得力が増すのです。ここがコンテンツマーケティングと広告の大きな違いと思っています。

青木:ニールセン社が2013年にアメリカで「信用される広告とは」という調査をしているのですが、人が一番信頼する広告というのは、当たり前ですが、知っている人からの口コミ。で、2位にあるのが、企業の“ウェブサイト”なんですね。ここはしっかり押さえておく必要があると思います。結局、生活者は情報の発信者とその内容に信頼がおけるかどうかを見極める力は備わっている。いたずらに不安をあおって注意を引かせようとするものは怪しいと感じていて、正々堂々と自分の名前を出して情報を発信しているかという発信者の姿勢も含めて見ようとしている。それが2位という結果を導き出しているのだと私は考えています。

郡司:そう。情報だけでなく、情報を出す姿勢も見られているんです。

日本企業の商品は、コンテンツマーケティング向きだ

郡司:コンテンツマーケティングの作業をやっていて分かってきたことなのですけれど、実は生活者は企業が発信することを知りたがっていると思うんです。前編で内藤さんが話していた自動車会社のブランデットコンテンツは典型ですけれど。

内藤:クリエーティブサイドの仕事をしていた時の話なのですが、日本のオリエンって技術の話が中心になることが多い。宣伝担当者と一緒に技術者の方の説明を聞くわけですが、実はこの瞬間が一番面白かったりするんですよ。それを社内に持ち帰り検討を開始し始めると、「当然15秒では伝わらないよね」というところから議論が始まり、「伝わらないよりも伝わった方が良いから、面白いものを作ろうか」となる。

郡司:あ。そういうこと。私も過去クリエーティブにいたとき何度もありました。

研究所にヒアリングに行ったり、開発者の話を聞いたりすると、なんて素晴らしい会社!なんて素晴らしい商品!って、すごく感動しちゃうんです。でもテレビCMで伝えきれない。いつももったいないなあと思っていて、その15秒で収まらない部分を冊子にしたり、雑誌広告での展開にして提案したりしていました。でもコンテンツマーケティングなら、そういう企業活動のエピソードや技術のすごさ、技術者の思いなどが届けられるのですよね。

内藤:そうです。コンテンツマーケティングを使って技術訴求をするべきだと言っているのではなく、僕らはフォーマットに合わせるために、知らず知らずのうちに面白い情報を削いでいる事も少なからずあったのではと。でも、そこは従来の広告では仕方がなかったんですよね。

郡司:そう。「情報として面白いか」よりも「広告として目立つかどうか」が優先されていました。

内藤:従来の広告フォーマットはアテンションを前提に設計されていましたからね。

郡司:生活者がパーセプションチェンジをしやすいネタを出せるのが、コンテンツマーケティングの一番の意味かもしれませんね。

青木:同じ話を何度か内藤さんとしている中で、コンテンツマーケティングって日本企業に向いているね、という話をよくしています。語るべきものをたくさん持っているのですから。

内藤:日本企業は、マーケターというより、マニュファクチャラーが多いので、商品の裏側に面白いストーリーがいっぱいある事が多いと思います。コンテンツマーケティングでは、主語はブランドではなくて、生活者を中心にしたコンテンツを作らなくてはならないと叫ばれていますが、結果的に生活者が満足するコンテンツであれば、その限りではないと思います。特に海外では日本企業ならではの、裏話コンテンツが受けそうな気がします。

郡司:そういうコンテンツを、生活者に見つけてもらえるように準備しておくということが大事ですよね。

内藤:いっぽうで僕らはマスを相手にしているのでスケーラビリティーも求められますよね。個人的な体験談としての「あるある」話が果たしてマス単位の規模でも働くのか。このサイズ感の捉え方が、実はコンテンツマーケティングに取り組む際に一番難しい。でも、一つの点を大量に積み重ねてマス化するのは、コンピューターサイエンスの最も得意とする領域だし、データで裏付けする事も出来る。そここそ僕らが次にやっていくべき領域と思っています。

郡司:広告の役割がたぶん二極化していて、マスメディアで大砲をド~ンとぶっ放すような方法も残っている一方で、アウトブレインなどのコンテンツディスカバリープラットフォーム上においてコンテンツをターゲットに主体的に見つけてもらってエンゲージしてもらう、みたいな方向も始まっています。

内藤:広告の仕事はどこまで行っても、マス単位の人の心を動かす事で、物を動かす(売る)事だと思います。コンテンツマーケティングの考え方や、そこで使われているテクノロジーはその課題の本質に取り組んでいるという意味で、私は将来性を感じています。

DDH内藤さん

DECAXには、コンテンツマーケティングのチーム課題を解決する力もある

郡司:コンテンツマーケティングのチームには、従来のクリエーティブなどのメンバーに加えて、データ計測の専門家や、デジタル広告の専門家なども加わって運用されていきます。この混成チームは実は成り立ちや価値観が全然違って、ともすると同じ言葉を使っていても示していることが違ったり、かなり異文化コミュニケーションなのですが、ここでみんなが共通認識を持つためにもDECAXのような捉え方は重要になっていきますよね。

青木:当然ですが、いわゆるデジタル広告で求められるのはシンプルにパフォーマンスだと思います。キャンペーンにおける目的はユーザーの獲得であり、その効率化を最大化するためにさまざまな施策を行います。ただこれは私の個人的な感覚かもしれませんが、デジタルマーケティングの成長に伴って従来の「広告」とダイレクトマーケティングつまり「直販」が一緒くたに語られてしまうことが多いと感じますが、そもそも広告と直販施策の役割はケースによっては異なってくることもある。ありていにいえば「広告=通販」じゃないので、キャンペーンの目的や役割によっては、ダイレクトマーケティングの世界における感覚とそれ以外とでは距離がある場合もあります。

郡司:ダイレクトマーケティングの刈り取りのやり方で、人の心を動かすのはなかなか難しいですよね。

青木:たとえばスーパーマーケットやコンビニでの売り上げの拡大が主戦場のクライアント担当が、商品の価値を分かりやすく紹介する動画コンテンツを用意して、まずは潜在ターゲットに商品特性を理解してもらうことを目指そうとする際に、ダイレクトマーケティング的な発想で、「その施策におけるKPIは?」と聞いても、「えっ、KPI? 動画再生数かな」みたいになる。で、そこのKPIを突き詰めるあまり、ランディングページの回遊数とかいろいろと数値化を試みるんですけれど、どうにも目指すところとずれるといいますか、座りが悪い結果になることもあります。

内藤:そうですよね。「生活者のデジタル情報消費の増加に合わせて、予算もデジタルシフトしなくては」という議論は、従来チャネルとの効率比較以上の議論には発展していないですよね。AIDMAモデルが有効だった時代は、認知率が全てでした。アメリカの先進的なマーケターが、商品が同じ割合で棚に並んでいた時には、一番認知率が高いものが手に取られ、買われるという方程式を編み出していたから。つまり、単なるオンラインメディアの接触時間が増えてきたから予算もシフトという話ではなく、メディアビジネスモデルそのもののデジタライゼーションを見越した上で、認知以外の指標も作って行かなくてはならないですよね。

郡司:ブランド好意度のような態度変容の部分をどう計測して、サイト行動と合わせてみるか。私たちも試行錯誤しています。

青木:はい。ですから、なんでもかんでも同じように計測するのではなくて、特にコンテンツマーケティングの世界においてはDECAXのような捉え方のフレームが大事だと感じるのです。DECAXのどの場面においてブランディングないしはダイレクト的施策が有効なのかをきちんと計画して進めていけば、郡司さんのおっしゃっていたチーム内のコミュニケーションの問題も解消されると思います。

郡司:もちろん、ダイレクトマーケティングをはじめとしたデジタルの世界の人たちが培ってきた方法論に良いところはたくさんあるので、どんどん一緒にやっていきたいと思っています。

青木:先日アウトブレインの幹部が来日した時に話を伺ったのですが、質の高いユーザーを獲得するためにはまずエンゲージにフォーカスしろ、ということでした。ただその際に何度も強調されていたのは、「エンゲージ=コンバージョン」ではないこと。コンテンツマーケティングにおける最初のステップはブランディングを通じたユーザーからのエンゲージの獲得であり、それを成し得たあとに初めてコンバージョンを求めるべきだということでした。このあたりの整理は、グローバルでも混同されているところがあるのかもしれません。

内藤:ちょっと盛り上がりすぎて時間がなくなってしまいましたが、今回は生活者の情報行動という視点でDECAXを紹介しましたが、様々なグローバルのプラットフォーム事業者と会話すると、このモデルのどこかのプロセスに当てはまるソリューションだったりするんですよね。それでこのモデルはそれなりに体系的な説明力があるのではないかと思い至り、更にはこのモデルを使って統合的な解決策を提供していかなくてはと思っている状況です。このグローバルパートナーのソーシングは、BCCと連携を取りつつ進めていますので、詳細はお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。


【Gunji's eye】

生活者がブランドと出会い、エンゲージメントしていく新しいモデル「DECAX」について二度にわたってお届けしました。ブランド系、デジタル系、分析系、アート系・・・多様な出自の人材が必要になるコンテンツマーケティングでは、チームみんなが共通認識、共通目的を持っていくためにも役に立つのではないかと思います。

とはいっても、DECAXは2015年のこの時点におけるモデルに過ぎません。いまはメディアやプラットフォームがどんどん変わっていく時代。それに合わせて生活者の行動もまた変わっていけば当然、行動モデルも変わっていきます。一つの捉え方にとらわれず、どんどん変化していくこと。これもコンテンツマーケティングにおいて重要なポイントだと思います。

プロフィール

  • Aoki keigo pr
    青木 圭吾
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1998年電通入社。中部支社、新聞局中央部、地方部を経て、プラットフォーム・ビジネス局、ビジネス・クリエーション・センターで主にデジタル領域の事業開発に携わる。現在は、デジタルコンテンツ流通事業の推進とアプリ開発支援、メディアのデジタル事業コンサルティングなどに加えて、国内外の有望な新興企業との新領域開発を主な業務とする。

  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1992年電通入社。クリエーティブ局で、広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。現在は、日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティ向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行っている。
    2014年「コンテンツマーケティング27の極意」(翔泳社)、「エピック・コンテンツマーケティング」(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は、2013年、2014年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internasionalなど。

  • Alex
    内藤 敦之
    電通デジタル・ホールディングス シンガポール リージョナルダイレクター

    1998年電通入社。プラットフォーム事業を志して入社するも、新卒配属された関西支社で家電メーカーを担当し、ブランディング戦略立案・コミュニケーションプランニングにどっぷりハマる。その後、一念発起してグローバルに路線変更。現在は、シンガポールでデジタル領域の事業開発・パートナーシップ開発を担当。

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