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祝うより、挑め!新しい周年事業のつくりかた。

2016/01/05

明けましておめでとうございます。電通CDCの尾上です。

年が明けて、「今年は○○周年!派手にやりましょう、ガハハハ!」なんて話がそこかしこで発生していることかと思います。
周年事業は、その商品や会社が長いこと愛されてきたことをアピールできますし、分かりやすいので各所から予算も集まりやすい。
周年はお祭りです。

でも、ちょっと待てよ。と。
そもそも周年って、消費者からしたらあまり関係ない。
隣人が、わたし30歳になりました。とか言ってきても、あ、はい、としか言えない。隣人でさえもなんだから、広告はなおのこと。
といったことに気づけたきっかけが、かまぼこ900周年事業「KAMABOKO ROAD TO 1000」でした。

かまぼこがバズったとして、どうなるの?

クライアントは、全国かまぼこ連合会(全かま連)。
「平安時代に藤原氏の文献にかまぼこが初めて登場したのが1115年、今年は900周年なんで、かまぼこでバズらせてください!」っていうのが全かま連さんのオリエンでした。900年て。

チームで話し始めの頃は、かまぼこを爆速で飛ばして、女子高生がそれをパルクールで追いかけたらバズるよね、なんて。
ふ〜って吹いたら、お店の雰囲気が変わったりなんかする板もいいな、とか。

でも、すぐ思いとどまりました。
そうなったとして、かまぼこ大丈夫か?

かまぼこは、最近では消費が下がり続ける一途。
小さい子どもたちは、かまぼこが何からできてるか知らない、なんて話すらあります。
それをどうにかする、というのが本当なんじゃないか。
一過性のバズでどうにかなる課題なのか?(もちろん、それが向いている商品もありますが)

素晴らしい1000周年を迎えよう。その頃には生きてないけど。

よく考えたら、900周年は中途半端。
1000周年のときの方が派手なお祭りに向いている。
そこで、「900周年を、1000周年に向けた100年のはじめの1年。」と設定することにしました。
100年後こうなっていたい、っていう業界の総意をつくって、皆で同じ方向を向き始めようと。

例えるなら絵本の『スイミー』です。
それぞれがバラバラにプロモーションするより、同じ目的に向かってちょっとずつでも進んだ方が強い。
素晴らしい1000周年を迎えるためには、変なアニメやグッズを作るのにお金をかけている場合じゃないのです。

KAMABOKO ROAD TO 1000

最初にやったのが、全国のかまぼこ職人さんアンケート。
現状、何が不満で、将来はどうなっていたいか。
という項目を埋めてもらって、全かま連の皆さんと全員で目を通しました。
そこから、かまぼこのファクトに立脚していて、かつ現実にありえなくもなさそうな100年後の目標を設定。
「かまぼこは地球を救う」とか、「かまぼこはハリウッドで人気」とか。
無理めを設定した方が、職人さんたちも燃えるってものです。

同時に、これはインナー向けでもあり話題化狙いでもあります。
なので、かまぼこが頭おかしいことを言いだした、って笑われるくらいが丁度いいとも思いました。『ワンピース』のルフィも最初は笑われていましたし。

とはいえ、目標を掲げているだけでは地味。
なので、チームメンバーの友人でもあり、偶然かまぼこフリークだったシシヤマザキさん(パルコやプラダなどから引っ張りだこのアーティスト)に、かまぼこ好きなだけあげるんで、とお願いしてサイトのアニメーションを制作いただき、こうなったら音楽もないと寂しい、ということで、これまたチームメンバーの知り合いのUKRさん(OMAKE CLUB一押しのトラッカー)に。
職人さんにとっては、見てるとやる気が湧くし、そうでない人でも癖になる。そんなサイトを作りました。
制作はライデンさん。皆、かまぼこ愛に満ちた素晴らしいチームでした。
(電通からは、記事冒頭に登場した4人がプロジェクトに参加しました)

KAMABOKO ROAD TO 1000:http://kama1000.jp/
※音をオンにして、スマホがオススメです。

ローンチは、かまぼこが初めて文献に現れた7月21日。
同時に、藤原氏ゆかりの京都で当時のかまぼこをレシピから再現するイベントもやり、テレビやウェブメディアで取り上げられて広がっていきました。

作ってみました。夢のかまぼこ

次に仕掛けたタイミングは、かまぼこの日である11月15日。

目をつけたテーマは、未来のかまぼこ。
業界全体の課題として、カニかま以来ヒット商品がありません。
オリーブオイルで食べるかまぼこ、かまぼこカツ、日替わりかまぼこなど色々と挑戦はしているものの、かまぼこ業界を揺るがす存在は出てきていません。

未来に挑むため、これまでに無いかまぼこの作り方をするために、全国の小学生の力を借りることにしました。
全国の小学校から夢のかまぼこのアイデアを募集。
なんと集まったのは、1万通以上。
その中から、意外性やオリジナリティー、話題になりそうかどうか、といった視点で選定。実際に職人さんに作ってもらいました。
つくってみました。夢のかまぼこ:http://kama1000.jp/yumekama/

「飲むかまぼこ」「かまぼこロボ」「かまぼこバラン」「ドライかまぼこ」「キャンディかまぼこ」と、普通じゃないものばかり。
特に、ソーシャルでの反響は「飲むかまぼこ」と「バラン」が大きかったです。

飲むかまぼこ


ほぼPRをしていませんが、子どもの夢かなえたろ系の強さ故か、多くのメディアに取り上げていただきました。なぜか、ラジオにも数局。

なにより、子どもたちが喜んでくれたこと。そして、職人さんたちが「こんな発想なかったよ」「いつもと違うことをやってみると、こんな反響があるんだ」と、これからに意欲的になってくれたことが大きな意味を持つ取り組みでした。

100年間かかる周年事業へ

なんといっても、100年かかる周年事業。今後もあれこれやっていきます。
「100年後のためになること」というルールのもと挑戦を続ければ、いつかホームランが出るかもしれません。みんなの目線も自然と未来に向かいます。一過性のバズに身をゆだねる余裕なんて無いのです。

周年事業は、お祭りでもいいかもしれません。
でも、せっかくだから、周年事業を未来をつくるチャンスに。
そんな取り組みです。
あ、そういえば正月なので、かまぼこ食べてください。
よろしくお願いします。

文:尾上永晃


「KAMABOKO ROAD TO 1000」
尾上永晃:電通 CDC/プランナー・イラストレーター
秋田勇人:電通 第3CRプランニング局/コピーライター
碓井達朗:電通 第3CRプランニング局/アートディレクター
早坂尚樹:電通 第3CRプランニング局/コピーライター