DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ #47

所有からアクセスへ―共有経済の時代を考える

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    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

今回の書評は、アメリカの文明評論家であり、ドイツや欧州委員会で経済のアドバイザーを務めるジェレミー・リフキン氏が、未来の経済に関する論考をまとめた『限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有経済の台頭』(NHK出版)を取り上げる。

『限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有経済の台頭』(NHK出版)

資本主義が終わる!?

本書は、「資本主義は今、跡継ぎを生み出しつつある」という一文から始まるが、筆者は、資本主義というシステムは、その性質上どこかで終わることが宿命づけられており、限界費用がゼロに近づくにしたがって、経済は新しいパラダイムに変わっていく、ということを繰り返し主張している。

どういうことか?

筆者によれば、資本主義とは、基本的に市場での競争を通して「より良いものを、より安く」提供する企業が生き残る、という原理で動いているが、実はこの「より安くする」という競争が限界までいき、あらゆるものがタダで提供されるようになったら、まるで熱力学の法則のように企業の利益が上がらなくなり、システムが終わらざるを得なくなる、というのだ。

筆者は、自らの原稿の例えで説明する。

市場交換経済では、利益は利鞘の形で得られる。たとえば、私は作家として自らの知的仕事の成果を出版社に売り、前払い金と、将来は印税を受け取るのだが、原稿が本となって最終的な買い手に行きつくまでには、外部の原稿整理編集者や製版業者、印刷業者、卸売業者、運送・倉庫業者、小売業者の手を経る。この過程に携わる者がそれぞれ、自らの仕事に見合うだけの利幅をコストに上乗せする。

だが、書籍の製造と流通の限界費用がほぼゼロまで急落したらどうだろう? じつは、これはすでに起こりつつある。しだいに多くの作家が、出版社や編集者、印刷業者、卸売業者、運送・倉庫業者、小売業者を迂回して、作品をインターネットにアップし、非常に廉価で、あるいは無料で、入手可能にしている。一冊一冊の販売と流通のコストはゼロに近い。コストは、作品を生み出すのにかかった手間と、コンピューターを使用してインターネットに接続する料金に限られる。電子書籍は限界費用がほぼゼロでの製作・流通が可能なのだ。(P.13-14)

すべてがタダになる社会?

こうした例えは、既に消費者も感覚的に分かる話だとは思うが、本書はこうしたフリー化の波が、IoTの時代になり、コミュニケーション(情報産業)のみならず、エネルギーコスト、輸送コストすらも、ほぼ無料にしていくであろうと予測する。

例えば、エネルギーの世界でも、太陽光発電の技術的なイノベーションが起こり(コンピューターのムーアの法則と同じように、指数関数的に技術的なイノベーションが起こっている中で)、中央集権型の大規模発電ではなく、インターネットと同じように、ピアトゥーピアで、分散型・水平展開型の共有が可能になるという。そうすれば、エネルギーを各家庭で生産しシェアできるようになり、事実上、電力がタダに限りなく近くなるという。

さらに、輸送のコストについても、Uberに代表されるようなサービスの浸透や、自動運転技術の進歩によって、コストも限りなく安くなるだろうとする。今、バズワードになっている、ドイツの「インダストリー4.0」はこうした考え方がベースになっている。

(ちなみに筆者は、インダストリー4.0については否定的で、IoTは決して第四次産業革命の表れではなく、第三次産業革命のスマートインフラの構築によって、社会全般にデジタルテクノロジーを普遍的に応用することでしかない、としている)

では、資本主義に代わるパラダイムとは何か?

協働型コモンズが支える経済

本書では、資本主義の先に共有経済(シェアリング・エコノミー)が誕生し、それを協働型コモンズが支えるとしている。コモンズとは、封建時代のヨーロッパの農村で、農民たちが共有した牧草地や水車小屋などを語源にした言葉で、国でもなく、私企業でもなく、同じ価値観を共有した市民・ユーザーによる協同組合的な組織のことだ。

新しい時代は、新しいテクノロジーでつながった「コモンズ」が、分散・水平展開型で、モノや情報、エネルギーをシェアしていくという。

私たちは何をシェアできるか?

本書は、筆者の理想が書かれているあまり、現実にはまだ分からない点が多々あると思いながらも(例外はたくさんある)、大きな流れとしては、共有経済の存在感が増していくだろうということは理解できる。

資本主義・貨幣が担保する価値が、次第に相対化し、変わっていきつつある中で(オルタナティブな考え方も出てきている中で)、われわれ広告人も、「どう(お金を)もうけるか?」「どうモノを売るか?」「どう告知するか?」ということのみを発想するのではなく、「どう、コミュニティーに貢献できるか?」「私たちは何をシェアできるのか?」という視点を持って、価値観を再定義していくことが必要なのかもしれない。

プロフィール

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    2009年に電通入社。企業のソーシャルメディアの戦略的活用コンサルティングから、デジタル領域における戦略策定、キャンペーン実施、デジタルプロモーション企画、効果検証を担当。社内横断組織「電通ソーシャルメディアラボ」「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」などに所属。著書に『SHARED VISION』(宣伝会議)。

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