世界のクリエーティブ・ディレクターに聞く2016年、 広告コミュニケーションの針路と挑戦 #02

クリエーティブの力がブランドの使命を明確にする

  • Marton jedlicska 2016
    Márton Jedlicska
    マールトン・イェリチュカ
    アイソバー・ハンガリー クリエーティブ・ディレクター

加速度的な進化を続けるテクノロジー。生活者と企業を取り巻く環境変化は、今年も続くのだろう。同時に広告クリエーティブの使命も、クライアントの根本課題へのコミット、ストラテジーとの一体化など、統合ソリューションに向け変化の過程にある。その一方でテクノロジーは、瞬時に国境を超える。広告祭では新興国の受賞が相次ぎ、業界の世界地図は拡散化した。電通イージス・ネットワークの各地域を統括する3人のクリエーターに、“統合”と“拡散”の時代のクリエーティブと、2016年におけるチャレンジを聞く本連載。2人目は、デジタル先進国、東欧ハンガリー広告界の若き旗手。アイソバー・ハンガリーのクリエーティブ・ディレクター(CD)、マールトン・イェドリチュカ氏に答えてもらった。

広告の仕事にこそファンタジーを

―マールトンさんは若くして頭角を現し、東欧のみならず世界的にも気鋭CDとして注目を集めています。デジタルクリエーティブ領域のバックグラウンドと、アイソバー・ハンガリーでの現在の役割を教えていただけますか?

私自身のバックグラウンドはアート分野にあり、古典的な教育を受けてきました。アイソバーに入社して5年になりますが、デジタルクリエーティブ領域は仕事を始めてから学び、今ではどっぷり浸かっています。デジタル系なのかトラディショナル系なのかは、特に意識していません。自分自身では、デジタルツールを使うのが好きなだけ。典型的なクリエーターだと思っていますよ。
私の役割は、広告の仕事にファンタジーを加えることだと考えています。入社以来、より高いクリエーティブのスタンダードと環境をつくろうとしてきました。クライアントは欧州全土から集まっており、中にはグローバル企業もあります。

―アイソバーの東欧拠点の一つ、アイソバー・ポーランドは、300人ものプログラマーを擁するアイソバーネットワークのテクノロジーセンターだそうですね。東欧のデジタル環境は、どのような状況なのでしょうか?

おっしゃる通り、ポーランド拠点はアイソバーの開発分野で大きな役割を果たしており、とてつもなく急激に成長しました。そもそも東欧ではデジタル領域が非常に進んでおり、大成功しているスタートアップやエージェンシーも多数あります。エンジニアの育成への注力と、起業家精神が根付いていることが理由だと思いますが、それに加え、皆とにかく努力していますね。

 

クライアントと理解し合い、ブランドの代弁者であれ

―デジタルビジネスの競争が激しい中でも、マールトンさん率いるチームは多くのビジネスを獲得しているのですね。東欧や欧州におけるクライアント課題をどう捉え、どのように向き合っていますか?

私は常にクライアントをパートナーとして捉え、達成したいゴールやアジェンダの理解に努めています。理解し合うことが、成功の鍵です。それはどんな地域でも同じでしょうが、東欧のような小さな市場では特に大事だといえます。
加えて、クライアントへ最新のイノベーションや流行に関する情報を提供したり、定期的にワークショップを行ったりして、彼らが知識を得るためのサポートにも力を入れています。こうしたことは、仕事を進める上でとても役立っています。
クリエーティブは、ブランドのメッセージを魅力的に伝えて“売る”ことができます。ですが最近は、ブランドの役割とは何かを明確にするという、より大きな使命も担うようになっています。私たちは、ブランドの代弁者であるべきなのです。

―では、“ブランドの代弁者”であるために、どのようなことを信条にしていますか?

私たちは常に、クライアントから提示されるブリーフを通して見えてくる、彼らの本当のビジネスゴールは何かを理解しようとしています。ブリーフ内容に疑問を持ったら、たとえブリーフ通りにしていた方が当社の利益になるとしても、うのみにして進めることはありません。
代わりに、彼らの真のゴールに近づける、実際にうまくいくと確信できる策を提案します。
数年前、こんなことがありました。ある大手企業から新作アプリのローンチ作業を依頼されたのですが、そのアプリのままでは明らかに失敗するだろうと思われました。そこで、十分なリサーチを経て、コミュニケーション提案に加えて、アプリの改善案も提示したのです。
残念ながらその提案は受け入れられず、別のエージェンシーが受注しました。ところが結果は、懸念が的中。クライアントはその後、私たちのところに戻ってきてくれました。ローンチという大きな仕事は逃しましたが、強い信頼を獲得できました。今では私たちのトップクライアントになっています。

 

ハンガリー最強チームでアイソバーを“業界基準へ”

―ブリーフをある意味リジェクトして代案を提示するというのは、よほど自信がないとできないことだと思います。アイソバー・ハンガリーの強みを、どう捉えていますか? また、その強化策は?
私たちの強みは、人材です。最も優秀な人を迎え、尊重し、同時に彼らを鍛え続けます。今では当社のチームは国内最強だと自負しています。私はハンガリーで若手クリエーターの協会「Young Hungarian Creatives Association」や、業界最大のイベント「Portfolio Night Budapest」の創設・運営に関わっています。こうした活動は、業界の成長を促すだけでなく、才能ある人材と常に接点を持つことに役立っています。加えて、アイソバーネットワークの一員としては、私たちのネットワークが誇りとするサービスデザインとUX(ユーザーエクスペリエンス)チームも、私たちにとって大きな強みです。スペシャリストたちが集まり、コンセプトやベストソリューション策定のために協働していること、これこそがアイソバーネットワークの最大の武器だと思います。

―では最後に、2016年の目標を教えてください。
クリエーターとしては、最低五つのカンヌ・ライオンを受賞し、業界でグローバルに認められること。アイソバーとしては、当社を業界の基準となる主導的地位へと成長させたいと思っています。目下、日本を含む電通グループのさまざまな拠点と多くのプロジェクトを手掛けています。そのうちに具体的なことが分かると思いますよ。お楽しみに!


アイソバー・ハンガリーの事例紹介

 

ハンガリーテレコム「The Cake Test」https://www.youtube.com/watch?v=nqXknzMRQP0

数人の幼稚園児に内緒だと言って大きなケーキを見せる実験。たちまち皆に伝わる様子を通して「人生とは共有すること」とのメッセージを発信。動画は2週間で50万視聴を記録、同国で最も成功したオンライン広告に。

 

ハンガリー赤十字社「#LIKEF♥RLIFE」

心臓病の発症率が高い同国で、心肺蘇生法を知る人は10%。インスタグラムで「♥(いいね)」をつけるのにダブルタップをすることを利用し、動画のダブルタップを促して“人命救助”を体験させた。

プロフィール

  • Marton jedlicska 2016
    Márton Jedlicska
    マールトン・イェリチュカ
    アイソバー・ハンガリー クリエーティブ・ディレクター

    10代で広告業界のキャリアをスタート。アイソバー・ネットワークで(おそらく現在でも)最年少のクリエーティブ・ディレクター。マイアミ・アド・スクール卒業後、ベルギー、米国を代表するクリエーティブ広告会社数社で経験を積む。13回の引っ越しの末、ハンガリーに帰国し、結婚。アイソバー・ハンガリーを国内はもちろん、「銀河系で一番尊敬されるエージェンシー」にしようと日夜奮闘している。国際広告賞、地域広告賞の受賞多数。ユニセフはじめ公共広告でも優れたキャンペーンを数多く立ち上げ、評価されてきた。

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