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電通グループが見たCESNo.3

没入感とコネクテッドデバイスがOOHに変革をもたらす

2016/01/28

世界の電通グループのメンバーの視点からCESを紹介するシリーズ。3回目は、OOH(屋外・交通広告)領域を専門とするグローバルネットワーク・ブランド、Posterscope(ポスタースコープ)USAの戦略担当副社長、ジェフ・タン氏です。


今年のCESでは、コネクテッドデバイスがまさに百花繚乱。広告業界にとっては、データマイニングをよりスケールアップしたり、Out-of-Home(OOH)メディアで没入感の高いパーソナルな体験を提供できる、大きな可能性を示唆した。特にOOH領域の視点から、広告業界にとって関連が深いと思われるテクノロジーを紹介したい。

ウエアラブルテクノロジー

まさに今、爆発的な拡大を見せるカテゴリーで、次の5年間で毎年20%の成長が見込まれている。ウエアラブル製品はさらに品質が高まる一方で低価格化が進み、スマートフォンをインテリジェンス機能のハブに、より生活者と結びつくだろう。

インテルが開発した「Curie」は、幅広いプロダクトに搭載できるボタンサイズの小型プロセッサーで、マス製品への使用が前提の価格設定となっている。さらに、同社の「Memory Mirror」では、ユーザーは鏡の前で動くことなく自分の姿を360度の角度で確認でき、着替えることなく以前試着したものを映し出せる。インストア体験に革新をもたらすことが予測される。

サムスンの新しいスマートウオッチは、スマホを介することなく直接ネットワークとつながる機能を備えた。また、Fossilやスワロフスキー、タグ・ホイヤーはファッション性を前面に打ち出した、ハイエンドのスマートウオッチを発表した。

ウエアラブルテクノロジーの浸透でますます豊富な消費者データが得られることによって、従来型OOHとデジタルを駆使したキャンペーンの双方において、より良い結果を導き出せるようになるだろう。現にPosterscopeでは、ブランドのKPI(重要業績評価指標)が200%向上するなど、目覚ましい成果が見られ始めている。

動画録画用デバイス

一般ユーザー向けの動画録画用デバイスでも、さらに品質が高まる一方で低価格化が進み、モバイル性が向上した。

GoProの出現でディスラプト(変革的破壊)されたポラロイドが、今度はGoProをディスラプト。ポラロイドの立方体のHDカメラ「Cube」は、一辺がわずか35ミリの小型サイズで、何にでも取り付けることができ、高品質、堅牢、軽量で、防水性も兼ね備える。

リコーのデジタルカメラ「RICOH Theata S」では、2つの魚眼レンズで全天球イメージが撮影できる。テレビリモコン程度のサイズで、誰にでも容易に360度高画質動画の作成を可能とするものだ。

これらの新しいデバイスで、驚異的なクオリティーのUGC(ユーザーによって制作されたコンテンツ)が生み出され、広告主はそれをモバイルやOOHなどあらゆるスクリーンに対応させ、キュレーションできるようになるだろう。フルモーションのデジタルOOH は、ブランドからの発信とユーザーの参加を可能にするコンテンツプラットフォームになり得る。

高い没入感:VRとAR

高い没入感を提供するVR(仮想現実)とAR(拡張現実)に関連した、新たなプロダクト群がにぎわいを見せた。

マス市場に向けては、サムスンGalaxyのヘッドマウントディスプレー「Gear VR」が、VR世界への手頃な入門編だ。オキュラスリフトはいよいよ今年満を持して発売される。他にも、Leap MotionやARの巨頭Magic Leap、マイクロソフト「HoloLens」など注目の新製品がめじろ押しだ。

これらのテクノロジーはエクスペリエンシャルマーケティングにおいて、双方向で没入感の高い、インパクトあふれるストーリーテリングを可能にする。Posterscopeでは、傘下のエクスペリエンシャル専門エージェンシーpsLIVEが、英ロンドンでオキュラスリフトを使ったキャンペーンを実施。通勤客は駅に居ながらにして美しいリゾートパークに「瞬間移動」、高所に張ったワイヤを滑り降りるスリリングな空中冒険を楽しんだ。

スマートカー

CESの会場は半自動運転のショーケースと化した。展示の核を成したのは、高速無線規格のLTEでつながったスマートディスプレーと、表示されるコンテンツのパーソナライゼーション。車は今や、消費者行動データを収集するコネクテッドデバイスであり、情報を発信するメディアでもある。広告業界にとって、車をデジタルメディアの新たなフォーマットとして捉える時が来たようだ。

グルーポンとシボレーは、位置情報技術を活用したグルーポンのナビゲーションシステム「OnStar」を通じて、運転中のドライバーに近くのグルーポンの特典をタイムリーに提供する。

車から生み出される消費者データで、広告主はターゲティングの精度を高めることができる。特にドライバーが今まさに通っているロードサイドのOOHにおける可能性が広がると思われる。

広告業界への示唆

CESではOOH領域に向けて、大きく3つの示唆があった。

1つ目はユーザーが、室内屋外にかかわらず高品質の体験を期待するようになってきたため、OOHのエコシステムにおいてVRの重要性が高まっていること。2つ目は、ウエアラブルが広告主に多様で幅広いデータポイントを提供すること。最後は、今や我々の想像を超えるものがデジタルメディアになり得ること。車から更衣室に至るまで、何もかもが高没入感を伴う体験となる。

従来のフォーマットにとらわれることなく、あらゆるものを生活者とつながる機会としていくべきだ。