日本初のフィンテック集積拠点「FINOLAB」大手町に誕生
2016/02/03
金融(ファイナンス)とテクノロジーを組み合わせた「フィンテック」に取り組む企業のためのコワーキングスペース「FINOLAB(フィノラボ)」が2月1日、東京・大手町に開設され、同日、記者・関係者約80人を集めてオープニング・イベントが実施された。
フィンテック(FinTech)とは、金融(ファイナンス)とテクノロジーを組み合わせた造語で、IT技術を駆使したベンチャー企業から生まれる新しい金融サービスを指す。2016年は、フィンテック関連の大きなイベントがいくつか予定されている。その第1弾が、FINOLAB開設だ。
目的は「ビジネスエコシステム」の実現
日本の金融の中心地、東京・大手町の東京銀行協会ビルに開設されたこのスペースの正式名称は「The FinTech Center of Tokyo FINOLAB」。起業家を支援し、投資家へのプレゼンテーションやマッチングの拠点となり、フィンテックのビジネスエコシステム(投資家、起業家など多数がつながり、効率的に共存共栄する仕組み)の実現を目標とする。
現在、日本のフィンテック企業は40~100社あるといわれるが、FINOLAB側から声をかける形で優良なスタートアップ企業を厳選しており、開設段階で参加しているのは6社となる。
運営のハード面は、三菱地所が担当。施設などインフラの運営を行い、ソフト面ではコンテンツ・コミュニティー運営などを電通グループ(電通、電通国際情報サービス)が行う。また、フィンテック業界のプロフェッショナルが、プロボノとして立ち上げた金融革新同友会FINOVATORS(フィノベーターズ)が、スタートアップ企業の相談・指導を行いながら、政府や官公庁などに対する陳情などを進め、新規事業の育成を行っていく。
FINOLABは「部室」
オープニング・イベントでは、スペースを運営する三菱地所の湯浅哲生氏(常務執行役員)が「ここ東京銀行協会ビルは、日本の金融の中心地・大手町にある。その14階に生まれたFINOLABで、フィンテック企業がスタートアップし、日本の金融、経済システムの停滞感を突破してほしい」と、期待を述べた。
続いて、金融革新同友会FINOVATORSの増島雅和氏(代表理事)は、フィンテックエコシステムの実現に向けて講演を行った。
「フィンテックの活動は通常のITとは大きく異なり、金融という規制が厳しい分野で新しいサービスを開発しなければならない。大学を卒業したばかりのITエンジニアが突然始めるのは難しく、それを支える数多くの専門家が必要となる。FINOVATORSとは、『ファイナンス+イノベーターズ』という成り立ちの造語。われわれFINOVATORSは、フィンテックのスタートアップ企業をサポートし、世界に立ち向かう企業にするため、プロフェッショナルが個人として集まった。フィンテックのスタートアップ企業だけでなく、政府、金融・非金融の大企業を巻き込んでエコシステムをけん引していきたい」
続いて、金融庁の神田潤一氏(総務企画局企画課信用制度参事官室企画官)がスピーチを行った。
「金融庁としても日本の金融サービスを進めるに当たり、フィンテックは不可欠なものと考えている。スタートアップ企業がどんどん増え、業界ができてきている中で、新しいビジネスが生まれる『たまり場』がないかと考えていたが、FINOLABの『フィンテックスタートアップ企業のための部室』というコンセプトを聞き感動した」
マネーフォワード取締役兼FinTech研究所長の瀧俊雄氏は、「FinTechエコシステム構築におけるFINOVATORSの意義」と題して講演。
「金融業界でサービスを構築する際に必ず出てくる『これは適法なのか』という質問がある。これまでは、法律家などに気軽に聞ける環境にある人しか解決できなかった。こうした質問に対しては、的確な助言を常にできる体勢を取る。20年後に日本の金融はどうなっているのか。フィンテックはそうした未来を照らすひとつの光だ。とはいえスタートアップ企業は創業した後でとても大変なことがたくさんあるので、われわれFINOVATORSが全面的にバックアップをしていく」
2月25日には国内最大のフィンテックイベントが
東京銀行協会ビルは、2016年末に建て替えが決定している。FINOLABは2016年2月1日~11月30日の期間を「フェーズ1」とし、改善点や事業モデルの内容を検証した後に場所を移して「フェーズ2」へと移行する予定だ。
今年2月25日には、フィンテックの大規模イベントの第2弾として、東京・千代田区の丸ビルにフィンテック企業が集まり、イベント「FIBC2016」が行われる。「FIBC」とは「金融イノベーションビジネスカンファレンス」の略称。フィンテックのピッチ(短めのプレゼン)コンテストを中心にした国内最大規模のイベントで、主催は電通国際情報サービス(ISID)となる。