Experience Driven Showcase #54

人が集う「演劇という場所」をつくる:藤田貴大(前編)

  • 藤田 貴大
    マームとジプシー主宰/演劇作家
  •      2
    藤田 卓也
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 プランナー

「会いたい人に、会いに行く!」第4弾は、劇団「マームとジプシー」の主宰者で、作・演出を手掛ける藤田貴大さんに、電通イベント&スペース・デザイン局の藤田卓也さんが会いに行きました。北海道で暮らした子ども時代から“演劇まみれ”で育ってきたという藤田貴大さん。象徴するシーンのリフレインを別の角度から見せる映画的な手法や、さまざまな分野のクリエーターとのコラボレーションが、演劇界以外でも大きな注目を集めています。

取材・編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局
(左より)藤田卓也氏、藤田貴大氏
 

「マームとジプシー」立ち上げの発想は、屋久島のある小さなカフェから

藤田卓也(以降、卓):今日は、演劇というメディアでメッセージを伝えている藤田さんから、人々に物語を伝えるノウハウについて学ばせていただきたいと思います。いきなり根源的な話なのですが、いろいろ表現手法がある中、どうして演劇という手法を選ばれたのですか。

藤田貴大(以降、貴):僕は10歳のときから演劇をやっていて、子役のときから関わりが始まったのですが、ずっと習い事みたいな感覚で、ただ毎日演劇をするという生活だったのです。その後、北海道から上京して大学に入っても、演劇だけで生きてきた。演劇がもう当たり前の状況としてあったのですが、20歳ぐらいのときに作り手に転向しようと思いました。

演劇というすごく小さなカテゴリーの中で自分の身を立てていくときに、自然と作家の媒体である役者という立ち位置ではなくて、自分自身が作家になってどうやって演劇を稼働させていくか、演劇の可能性を考え始めました。

演劇というメディアは生身の人間が舞台に立っていて、それをお客さんが見に来るというものなので、それはどういうことなのかなと考えながら、日本のいろんなカフェを回るという作業を20~21歳のときに集中してやりました。そのころは古民家を改装してカフェにするみたいな、小さい喫茶店が日本中に点在していて、はやっていた時期でした。

屋久島に、夫婦だけでやっている「ときどき滝がみえる」というカフェがあって、本当に時々滝が見えるのです、バルコニーから。屋久島に滞在しているときは毎日そこに行って、考えごとをしていた。そのときにいろいろ考えたことが、今の劇団「マームとジプシー」の活動につながっています。

その夫婦は、夏の暖かいシーズンのときには屋久島に来てカフェを経営しているけど、ふだんは鹿児島でコーヒー豆屋さんをやっている。夏の間だけ屋久島に来て、そのコーヒーをお客さんに直接手渡す、その行為がすごく興味深かった。ある意味これも空間芸術だなと思った。しかもそこには、ちゃんと「ときどき滝がみえる」というタイトルまである。

卓:それって店の満足度が滝次第、ということですよね。

貴:そう、滝次第で(笑)。たしか一湊(いっそう)というところにあるんです。今は「一湊カフェ」と名前を変えたと思うけど、当時は「ときどき滝がみえる」というカフェだった。そういう「空間づくり」みたいなことから自分も始めてみようと考えました。演劇で何かメッセージを社会に言いたいとかいうスタートじゃなく、「人々が訪れる、場所をつくりたい」というのが思いついた初めのことだったのです。

「マームとジプシー」をつくったのは21歳のときです。初期のころは10~15人ぐらいのお客さんしか見られないような小さい古民家の喫茶店でずっとやっていて、とにかくミニマムな形、完全に自分の目が行き届いて自分の世界を獲得できる空間で、しかもお客さんにもきちんとサービスするような気持ちも込めて、そこに演劇がぽつんと在る。

その方がもしかしたら演劇の内容なんかより重要かもしれなくて、喫茶店に来たことそのものの体験が、2000~3000円払う価値のあるチケット代になるのかもしれないと思った。20歳代前半にそんな仕掛けをぽつぽつつくり始めていきました。そのことで自分の世界を、空間そのものと一緒に獲得していった感じですね。

卓:藤田さんの演劇を観て、ボーダーレスというか、ステージと客席のボーダーがないのもそうだし、フィクションとノンフィクションのボーダーもぐらぐらと曖昧にしている感じが、すごく面白いと感じました。

 

ヴィレッジヴァンガードに勤めながら、本を空間にキャスティングしてみた

貴:その後やはり演劇だけじゃ食っていけないから、22歳で大学を卒業した後、ヴィレッジヴァンガードに勤めました。3年ぐらいそこでアルバイトしながら過ごしていたのですが、今思えば大切な3年間だった。それは大量に本を読んだ3年間でもあったけど、置く本をどこに何を配置するかということを、すごく真剣に考えたんです。

本を店という舞台にキャスティングしていくみたいな。あと、ヴィレッジヴァンガードが面白いのは作者順に本を置かないところで、だから連想ゲームですよね。例えば寺山修司の本の横に、穂村弘の短歌の本を置いておくと、寺山修司の短歌で引っ掛かった人は、穂村弘の本も拾う。穂村弘の横に何か絵本を置くと、穂村弘の短歌じゃない仕事につながるとか。その置き方は書店員次第なので、どこまでお客さんの興味が続いていくかとか、どこに何を配置して、お客さんにどういうルートで歩いてもらえばいいかを先輩の店員さんたちに教えてもらって、たっぷり考えることができたのです。

そのとき自分の演劇も、いろんなフックがあるのはいいことなんじゃないかと思った。ついで買いをどんどん狙っていく。演劇を見に来たという人が、演劇じゃない発見をして帰るというのも、ちょっと面白いと思ったのです。

藤田さんに見ていただいた「書を捨てよ町へ出よう」も、寺山修司が好きで見に来てもいいし、寺山さんに興味持って見に来た人が、衣装のミナペルホネンの服が買いたいなと思って帰ってもいいと思う。「客席の状況」をどうつくって細かく見ていくかということだと思うのです。例えば、何%演劇そのものを見に来ている人がいて、何%が服のことに興味があり、何%が好きな役者のことだけを見ているというような微妙なバランスを。

客席の中に演劇ファンだけがいるという状況に演劇はなりがちだけど、東京の中で演劇を毎月4本以上見る人というのは多分1万人もいないので、その1万人未満のお客さんだけをぐるぐるさせているだけじゃないかという状況を、変えていきたいんです。

毎年ワンピースを5着買う女子が1着減らして、1着減らした分のお金を演劇のチケットに使うというのは、今までの演劇とは結構違う意味を持つ行為になる気がする。そこを狙った仕事がしたいと最近は考えています。

上記写真はすべて、東京芸術劇場で公演(2015.12.5-27)した「書を捨てよ町に出よう」の写真
撮影:井上佐由紀
※後編につづく

 

<公演情報>
「夜、さよなら」「夜が明けないまま、朝」「Kと真夜中のほとりで」
作・演出 藤田貴大
2016.2.11-2.28/彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/3387

 

チャレンジふくしまパフォーミングアーツプロジェクト!「タイムライン」
2016.3.26 sat/福島県文化センター(福島県福島市)
作・演出 藤田貴大 音楽 大友良英 写真 石川直樹 振付 酒井幸菜
出演 福島県の中高生 主催 福島県 
http://www.fukushima-performingarts.jp

 

LUMINE0オープニングイベント レパートリー作品三作同時上演
2016.4.28 thu - 5.8 sun/LUMINE0
「カタチノチガウ」 2016.4.28 thu – 4.30 sat
「あっこのはなし」 2016.5.2 mon – 5.4 wed
「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。」2016.5.6 fri – 5.8 sun
http://mum-gypsy.com

 

プロフィール

  • 藤田 貴大
    マームとジプシー主宰/演劇作家

    1985年生まれ、北海道伊達市出身。桜美林大学文学部総合文化学科で演劇を専攻。
    2007年マームとジプシーを旗揚げ。以降全作品の作・演出を担当する。ほぼ2ヶ月に1作という驚異的な数と質で作品を発表し続けている。11年以降、さまざまな分野の作家との共作を積極的に行う。10年6月、坂あがりスカラシップ2010対象者に選抜される。11年6~8月に発表した三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で第56回岸田國士戯曲賞を26歳で受賞。また、演劇以外の活動としては、共作漫画「mina-mo-no-gram」(秋田書店)や「cocoon on stage」(青土社)などを出版。また、初の短編小説である「N団地、落下。のち、リフレクション。」(新潮社)など、活動は多岐にわたる。

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    藤田 卓也
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 プランナー

    2003年4月電通入社。入社以来、イベント・スペース関連部署に所属。
    イベント・スペース領域に加え、マーケティング、クリエーティブ、プロモーションなど領域にとらわれないプランニングを実践。

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