アクティブラーニング こんなのどうだろう #09

5カ国の小学校のランチシステム。
実は、さまざまだった。

  • 20160526 103
    Nadya Kirillova
    キリーロバ・ナージャ
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 Bチームクリエーティブ

電通総研に立ち上がった「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」。アクティブラーニングについてさまざまな角度から提案を行っていきます。このコラムでは、ラーニングのアクティブ化に活用できそうなメソッド、考え方、人物などを紹介していきます。

フランスの小学校に転校して、初めてのお昼の時間がやってきた。「案内するよ!」と隣の席になったクラスメートと一緒にカフェテリアへ向かった。どんな給食が出るのだろうか。わくわくしながら向かったが、カフェテリアはガラガラだった。とりあえず、食べ始めた。お昼の時間が終わりに近づいていくが、全然人が増える気配はない。みんなごはんを食べないのだろうか?と気になったがフランス語が話せない。身ぶり手ぶりで「みんな何で食べに来ないのか?」と聞いてみた。

すると、しばらくの説明とジェスチャーで、フランスの学校では多くの人は 家族と一緒にお昼を食べに家に帰るということが分かった。「え、家に帰る!?」。私は、信じられなかった。「親は仕事じゃないの?」。しばらくしてどうやら親も同じように長めの昼休みがあって家に帰って食べる人が多いとのことだった。

なるほど。これは新しい。正直なところ学校のごはんはあまりおいしくない。ランチを持ってきてもいいとも言われたけど、この「家に帰って」という、とても魅力な選択肢に引かれて早速、家族を説得してみることにした。説得はうまくいって、数日後から家に帰って親と一緒にお昼を食べるようになった。意外なことに、親がまだ疲れてないからなのか、学校での出来事についての会話と議論が止まらない。あの国の子はこう言っていたけどどうなの?とかいろんな議論を家族とする。

お昼を学校に持っていってもいいシステムは、一つ前に通っていたイギリスの小学校でもあった。食べるのはみんなカフェテリアで一緒だが、給食か自分でランチを持ってくるかを選べる。食べているものは、多くの場合みんなバラバラだった。

ここで面白かったのは、みんなのごはんのバリエーションだ。ピーナッツバター&ジェリーサンドイッチを食べているカナダから来た女の子もいれば、見たこともない料理を食べているインドの男の子もいる。その隣にはのりが巻かれたおにぎりを食べている日本の女の子がいたり、給食のチリビーンズ&トマトを食べている女の子もいるという具合だ。カオス過ぎて、見たことがない食べ物が多過ぎて新鮮だ。

教室ではみんな同じように同じことを学んでいるけど、いざ食事になると、こんなに食生活が違うのだと気付く。でもワイワイ食べることに変わりはない。世界にはいろんな食べ物があるものだ。

ロシアの小学校は日本と同じでみんな給食だ。でも、給食は朝ごはんから始まる。2時間目の後、みんな一緒にカフェテリアで食べる。 朝食の内容は、日替わりでいろんな穀物の甘いおかゆと黒パンが多い。家で朝食を食べた子どもにとってはセカンドブレックファストになる。次に、4時間目が終わったらランチだ。スープとメーン、黒パンという内容。どんな食事でもロシアでは黒パンは欠かせない。

まずくても、好き嫌いがあっても出されたものは全部食べないといけない。食べ終えるまで席を立てない。何だかこれも日本と一緒。でも好き嫌いがある子どもは大体よく食べる子どもに自分の嫌いなものを食べてもらうという技を覚える。身に付けるべきは交渉力だ。

アメリカの小学校はイギリスと似ていて、 朝の出欠をとるときに、「Hot」(給食)か「Cold」(自前のランチ)かを先生に伝える。ここの違いは、みんな事前に配られた給食メニューを見て自分が好きな食べ物が出るときだけ給食にすることができることだ。ピザ、ホットドッグ、ラザニア、タコスなどは人気で給食の人が普段よりも倍くらいになる。嫌いなものや特に食べたくないメニューの日は、家からランチを持ってくればいい。

そして、ここでは誰も嫌いなものを無理に食べさせることもしなければ、残しても問題ない。なぜなら、お金を払ったのはあなた(あなたの親)だからお金を払ったものをどう扱うかはあなたの自由と考えると同級生から聞いた。だけど、「食べ物で遊ばない!」などマナーはかなり注意される。

アメリカの学校のランチタイムで、衝撃的だったのは、多くの子どもがお肉を食べていなかったこと。ロシアではお肉を食べないと大きくなれないと言われて、食べないという選択肢はない。まして、食べないという発想すらない。でもここでは、クラスの半分まではいかないが、かなりの子どもがお肉を食べていない。

理由を聞くと、「あ、私はムスリムで豚がダメなの」「ユダヤ教では、特定のお肉しか食べられない。だから学校の給食ではお肉を食べないんだ」「うちは、ベジタリアンさ!」とみんなそれぞれ理由を説明する。

なるほど、宗教もあれば、主義もある。ここで、お肉を食べないという「主義」があるのを初めて知る。何かを信じるからカラダ的には食べられても、一切一つの食材を断つ選択肢がある。このことはゆくゆくの人生にも大きな影響を与えた。

もう一つは、アレルギーだ。卵、牛乳、ナッツ、小麦粉などいろんなアレルギーを持っている子どもがクラスにいた。だから、食事というのはいろんな選択肢を与えないと食べられない人が出てくるのだ。

日本の給食の面白いところは、給食当番がみんなに給食を配ったり取り分けたりするところだ。子どもでやってもいいのか? 最初かなり違和感があったが、いざ自分でやってみるといろんなことが見えてくる。

そして、カフェテリアがなく教室で食べるというのも新鮮だった。ただ、日本の給食には一つ大きな欠点がある。それは、ロシアにもいえることだが、多様性を許さないことだ。

私は、12歳からベジタリアンになったのだが、そうすると日本の給食で食べられるものはほとんどない。サラダにもハムが入っていたりするし、スープにはお肉系のエキスが、ごはんは鶏の炊き込みだったりする。そうすると、私が食べられるのは牛乳だけ。ほぼ1年間、多くの日、牛乳だけを飲むことが続いた。でも、ベジタリアンは「好き嫌い」と見なされ、ニンジンが嫌いな子どもと同じ扱いをされ、理解されない。食べ物がなければ、諦めてお肉も食べるようになるはずだと担任の先生は信じていた。お弁当を持ってきちゃ駄目だと。これは、なかなかつらかった。でも、信念だから貫いた。

こうして見ると、同じ「ランチ」をとっても国によってさまざまなやり方や考え方がある。みんなで同じ場所で同じものを食べることで一体感を生もうとするロシアや日本。クラスメートよりも家族との食事時間を大事にするフランス。多様性を大事にし、個人の宗教や主義や思想に柔軟に対応するイギリスやアメリカ。1〜2時間クラスメートと一緒にごはんを食べるだけで、こんなに世界のことが学べる。

主義主張、世界の料理、アレルギーとの生き方、どうしてごはんを残してはいけないのか、残してもいいのか。ときどき、日本でもいろんなランチ方法を試すことで、子どもたちに「食べること」を通していろんな「多様性」について考えることのきっかけになるのかもしれない。

5カ国のランチタイム

 

プロフィール

  • 20160526 103
    Nadya Kirillova
    キリーロバ・ナージャ
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 Bチームクリエーティブ

    ソ連(当時)、レニングラード生まれ。6カ国で育つ。電通入社後は、様々な領域に取り組むクリエーティブとして活動し、国内外のプロジェクトを幅広く担当。Cannes Lions Titanium Grand Prix、D&AD Black Pencil、文化庁メディア芸術祭大賞など多数受賞。

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