リアルリテールの新しい潮流 #02

「RETAIL'S BIG SHOW 2016」レポート(後編)

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員
「RETAIL 'S BIG SHOW 2016」レポート後編

電通「人の流れラボ」研究員の秋元です。米国最大級のリテールコンベンション・NRF「RETAIL 'S BIG SHOW 2016」のレポートの後編です。今回は屋内測位を中心に書きます。前編はこちら

なんで屋内測位なの?

インターネット上では閲覧者のさまざまなアクションがログとして記録され、閲覧履歴に応じた商品レコメンドといったかたちでマーケティング活動に活用されています。一方、実店舗ではデータ収集がうまくいかず、売り場の最適化や1to1マーケテーティングの面で、Eコマースサービスに対して大きく遅れていると言われてきました。ここ数年のスマートフォンの普及状況やWi-fi・Bluetoothなどのテクノロジーの進歩が後押しとなり屋内測位技術が身近になったため、米国のリアルリテールを中心に屋内測位がホットトピックスになっています。屋内測位によってリアルリテールのデータドリブンマーケティングが一気に進む可能性を秘めており、注目を集めています。

Real-time Store Monitoring

Real-time Store Monitoring

Real-time Store Monitoringという領域のサービスで特徴的だったものを幾つかご紹介します。「店内の消費者の人数や位置を把握するための機能」「大まかな性・年齢や訪問頻度などの属性を把握する機能」「クーポンやメッセージの配信機能」の3つを併せ持つ、統合的なサービスが数多く展示されていました。画面撮影NGだったサービスについてはウェブサイトのキャプチャーを載せておきます。

RetailNext

RetailNext:

この領域のリーディングカンパニーです。大きなブースを構えており、洗練されたイメージを醸し出していました。サービスとしての実績も豊富で、頭ひとつ抜き出た存在だと思います。Wi-Fi、Bluetooth、 ウェブカメラを使って消費者の位置を把握し、リアルタイム計測やアラート発信、アプリへのプロモーショナルな配信が可能になっています。POSデータや店員のシフトデータ、天候データなどを加えることで、より高度な分析や予測モデルの構築も行います。単に分析するだけではなく、改善のためのコンサルテーションもメニュー化されており、ワンストップでフルサービスを提供しています。

Aislelabs

Aislelabs:

こちらも同様にリアルタイム計測やアプリ配信が可能なプラットフォームです。無料プランを用意しているところが特徴的で、RetailNextほど高性能な機能が必要ない場合は選択肢に上がってきそうです。

Coursa Retail

Coursa Retail:

RetailNextやAislelabsを用いて精度の高い測位を行うためには、それなりの台数の外部機器(Wi-Fi・Bluetooth・カメラなど)を設置しないと機能しませんが、Cousa Retailは端末に内蔵されたチップと地磁気によって位置を把握するため、スタート地点さえBluetoothビーコンなどで測位できれば、後は外部機器なしで測位できるとうたっています。Coursa Retailの親会社のInvenSenseは、iPhone 6以降のiOSデバイスとSamsung、 Motorola、 BlackBerry、 HTC、Acer、 LG、Nintendo Wiiにデバイスを提供しており、比較的新しい端末であれば、対応するチップが内蔵されているとのことでした。

IndoorAtlas

IndoorAtlas:

こちらは統合的なプラットフォームではなく、地磁気を使った測位技術にフォーカスしているユニークな会社です。会場外の場所で運良くデモを見ることができました。不安定な挙動が多く、時おり固まったり位置が飛んでしまっていましたが、スムーズに動くときは正確で、フロアの上下も識別できるため、今後に期待が持てるサービスでした。頻繁にバージョンアップを重ねており、Wi-FiやBluetoothとのコンビネーションで精度を高めていく、とのことです。

ご紹介した以外にも、数多くのサービスベンダーが存在しています。ガートナーによると、この領域は成長期にさしかかり5~20%の市場浸透度だそうで、米国では導入が進んでいます。

その他の注目株

CognitiveScale

CognitiveScale:

Consumer Centric Merchandisingという領域のサービスで、屋内測位・RFID測位・POS・ウェブ履歴などの各種データを元に、機械学習の力で消費者へのレコメンドパターンの最適化を行います。エンジンにはIBMのワトソンを搭載しており、数多くのテクノロジーメディアで注目株とされています。

東芝テック「RIZE」

東芝テック:

POS機器で世界的なシェアを誇る東芝テック。会場外でも独自カンファレンス「RISE」を開催するなど、力のこもった活動をしていました。ウォルマートアプリに見られるような商品スキャニング機能の他、クーポン機能や決済機能のデモもあり、人だかりができていました。

トライアルカンパニー

トライアルカンパニー:

同じく日本勢のトライアルカンパニー。スマートフォンが設置されたスマートカートの展示をされていました。Wi-FiとBluetoothを組み合わせてリアルタイムに位置を把握し、クーポンを配信するソリューションになっています。

テクノロジー+コミュニケーションデザインの両輪が必要

今後ますます消費者との接点がスマートフォンにシフトしていくといわれており、アプリの出来次第で勝敗が決することになると思います。会場内でさまざまなアプリを見聞きしたため、実際の店頭での利用状況はどの程度なのだろうと思い、現地の方に話を聞いてみたのですが、「あまり使っていない」という回答が返ってきました。ブランド・流通各社がそれぞれアプリをリリースしているため、選ばれるためのハードルは高そうです。加えて「自分と関係のない広告やクーポンが常時来るので煩わしい」という話も出ました。

そんな中、評価の高かったのが「Uber」と「スターバックス」と「ウォルマート」のアプリです。「UXの設計が見事で、便利さを実感できる」という評価に加え、Uberとスターバックスはデザインの評価も高かったです。消費者から評価の低かったアプリには、テクノロジーを使いこなそうとするあまり、不必要な機能やコミュニケーションが発生していて、かえって評価を下げてしまったようです。オンラインサイト並みにさまざまなデータを取得できるようになりつつありますが、UXの観点で成功しているリテールはいまだ少ないものと思います。

テクノロジーとコミュニケーションデザインのプロセスフロー

レポート前編にも書きましたが、「Customer Centric」「Customer Experience」の重要性が改めて確認されています。消費者のインサイトを探りコミュニケーションをデザインしていくことが生業の当社には大きなチャンスが広がっていると感じました。テクノロジードリブンから「Customer Centric」に思考を変え、テクノロジーとコミュニケーションデザインの両輪を具現化できたプレーヤーがリテールの新しい勝者になりそうです。

 

お問い合せ先:電通 人の流れラボ
contact@hitononagarelab.jp

プロフィール

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員

    大手自動車メーカーのマーケティング子会社を経て2001年に電通に入社。
    以来、多様なクライアントに対してデータドリブンなマーケティングサービスを提供。
    「Samurai Purchase」「DecoMarket」「;Dcloud」の事業開発を経て、
    13年から「人の流れラボ」に参画。
    位置情報ビッグデータなど各種データを組み合わせたソリューションの開発に挑戦している。

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