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コンテンツマーケティングの現場からNo.27

コンテンツは、課題をあぶり出してくれる

2016/02/26

コンテンツマーケティングは、「オウンドメディアから情報発信すること」「要はウェブマガジンを作ること」という理解が進んでいることもあり、これまでのマス広告の代わりあるいは補完として始まるケースがあります。
「自社でメディアを持ってそこからどんどん情報発信していこう!」 「若い人たちには、テレビCMだけではなかなか届かない。デジタル上から面白いコンテンツをどんどん発信して拡散させよう!」といってスタート。
ひと月、ふた月たったところで、PV・UU、シェアなどの指標を見て、何人が来てくれた、何人が最後まで見てくれた、何人がシェアしてくれた、良かった、悪かったと総括して次の新しい施策を考える。(あるいは、キャンペーン予算の消化とともに終わってしまう)といったタイプの仕事です。

けれど、ここで終わってしまうと、本来コンテンツマーケティングから得られるはずの果実が手に入らないままになってしまうと思います。
なぜなら、コンテンツマーケティングがやろうとしているのは、「デジタルで発信すること」という以上に、「デジタルで発信することによって、既存顧客や潜在顧客の行動を促すこと」であるから。つまり、ウェブ上で「既存顧客や潜在顧客の行動を促すこと」を継続することでデータがストックされ、そのデータをきちんと読み解くことができれば、マーケティングコミュニケーションや事業における課題をあぶり出だしてくれるのです。

データの推移、蓄積からわかること

コンテンツプラットフォームに、コンテンツを定期的に発信し続け、そのことが皆に知られていくと、いろいろな人がこのプラットフォーム周辺で行動するようになっていきます(ちなみに何もしないと、人は普通離れていきます)。これらを定点観測しながら、同時に半年や1年をめどに蓄積されたデータを分析する。場合によっては、アスキングの調査など補足データを取りながら分析を進めていく。そういったことを続けていくと、キャンペーン期間の情報発信だけでは分からなかったいろいろなことが見えてきます。

例えば、以下のようなことです。

・どんなテーマや切り口、コンテクストを人々は望んでいるのか
・ユーザーのニーズは、本当はどの辺りにあるのか
・3カ月前、半年前、1年前と比べて、顧客のブランドに対する気持ちはどう変わっているのか

これまでならクリエーティブの直感でしか説明できなかったり、一部のグループインタビューでしか証明できなかったりと、なかなか社内上層部を納得させづらかったような内容が、客観的なデータで説明できるようになっていきます。しかも、数週間での少ない数字よりは、数カ月でのまとまった数字の方が信頼性も増してきます。

私が関わった例では、ある教育産業で「正しいやり方」を教えるコンテンツを半年ほど発信し続けたところ、ユーザーニーズの高いポイント、逆にうまく人を集められないテーマなどが発見され、この事実と、ソーシャルリスニングなどで得られた定性データ、営業現場で起きていること、などを掛け合わせて議論した結果、クライアントの事業の強み、これから強化していかなければならないポイントが、あらためてクリアに浮かび上がってきた、ということがありました。

コンテンツマーケティングは、広告クリエーティブとは違う

コンテンツの企画制作はお金がかかるものです。ウェブマガジンを続けるには量も労力も必要になっていきますし、やがては続けることに息切れして、投下予算との兼ね合いを問われたときにこれ幸いとやめてしまう、といった例もしばしば見られます。けれど、そうすると結果的にそれまでためてきたデータを無にすることにもなりかねません。
継続することによって見えてくる事実から、今後に役立つポイントをどういう方法で獲得していくか。そこを考えていくコンテンツマーケティングは、外から見ると広告クリエーティブととても似ているようでいて、実際は全く違うものなのです。