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デジタル活用で成果を出すにはNo.11

ROAS120%増の秘訣をリターゲティング広告の中の人が解説

2016/03/07

運用型広告に強みを持つネクステッジ電通。今回は、戦略策定などを担当する伊勢田健介さん、現場の運用を担当する齋藤優さんに、最新のリターゲティング広告の動向や事例について話を聞きました。
※株式会社ネクステッジ電通は、2016年7月1日付で「株式会社電通デジタル」となりました。
ネクステッジ電通の齋藤優さんと伊勢田健介さん

離脱する95%は誰なのか。その分析からリターゲティングは始まる

──まずお二人の業務内容を教えてください。

伊勢田:私は運用型広告の戦略、運用マネジメントを担当しています。さらに必要に応じて、事業戦略・課題解決など、デジタル広告以外も含めた施策案を提供することもあります。

齋藤:私は現場での運用を担当しています。運用型広告の進め方、どういったメニューを実施するか、最大化するための施策などを提案、実施しています。特に今回のテーマであるリターゲティング広告については、広告成果を最大化し、クライアントの事業を成長させる上で、特に重要な施策として取り組んでいます。

──デジタルマーケティングの世界では、「来訪者の95%以上が離脱する」といわれているそうですが…。

伊勢田:そうですね。 95%がなぜアクションをせずに離脱するのか、離脱した人たちはどんな人たちなのか、一方で5%のアクションしている人たちはどんな人たちで、どんな行動をとっているのかということを分析して、離脱した人を呼び戻すためのリターゲティング広告施策を立てることに意味があると思っています。

──分析というのは、どのようなことをするのでしょうか?

伊勢田:アクセス解析で、サイト内の回遊行動と離脱ポイントを見たり、第三者のデータと付き合わせて、どういう人が来訪しているのかを検証します。

第三者のデータというのは、匿名化されたデータで、データを持っている媒体や企業から提供を受けています。サイト内行動の追跡を許可しているユーザーの匿名データや、あるいはアンケートのデータとウェブ上の行動をひも付けて提供を許諾しているユーザーのデータなどがあります。こうしたデータからは、ユーザーの属性や行動など精度の高い情報が得られます。

その他には、Yahoo!、Googleなどが推定したユーザーデータがあります。どちらの場合も個人特定はできませんが、デモグラフィックデータ、興味・関心などのデータとして分析に利用しています。

──最近のリターゲティング広告の傾向について教えてください。

齋藤:少し前のリターゲティング広告では、主に2点を重視していました。一つはどういうページを訪問したのか、トップページなのか、商品ページなのか、というページの深度ですね。もう一つが訪問してからの時間です。一般的に訪問当日が最もコンバージョンに結び付きやすいのですが、3日後、7日後、30日後と期間が変わったときの最適化をどう図るか、ということです。

最近の潮流としては、手動でセグメントを設定して広告を配信するよりも、ターゲット、広告の入札金額、クリエーティブも自動化していく傾向があります。

データフィードから自動生成したクリエーティブの効果が高い

──クリエーティブの自動化というのは、バナーなどを自動的に生成するのでしょうか。

齋藤:バナーというよりも、商品の画像、価格、商品名、説明などのデータフィードを使って自動的に広告クリエーティブを生成します。実際に成果につながりやすいので、クリエーティブの自動化が潮流になっています。

──なるほど、さっき見ていた商品が広告として配信されるようなタイプの広告ですね。具体的にはどんな手法があるのでしょうか。

伊勢田:自動クリエーティブに向いている業種の一つが、多商品を取り扱うECサイトです。直前に見ていた商品を広告として表示するだけでなく、もう少し複雑なアルゴリズムのものもあります。

ECサイト内では「この商品を買った人はこれも買っています」とレコメンドが表示されますよね。このレコメンドと同様に、いろいろな商品をまたいで見ている人に対して、その人の興味がありそうな商品を選定してクリエーティブを動的に生成する、ダイナミックリターゲティングと呼ばれる手法があります。

──効果が高いということですが、再訪率、コンバージョンの点で一般的なリターゲティング広告と比較してどのくらいの差がありますか?

齋藤:再訪率の比較は難しいですが、広告費用の回収率であるROAS(Return On Advertising Spend)で見ると、通常の広告と比較して、平均120%くらいの効果が出ています。自動化の潮流があるのは、効果が高いという点にあります。

ネクステッジ電通の齋藤優さん
広告費用の回収率であるROASで見ると、通常の広告と比較して、平均120%くらいの効果が出ています。

──特にどういった業界で使われていますか?

伊勢田:多商品を取り扱うECサイト以外では、旅行や賃貸不動産などでも主流になっています。特定の商品を探しているユーザーがいて、それと類似する商品を多数そろえている業界がマッチしています。

例えば賃貸は物件がたくさんありますから、各物件のクリエーティブを手動で作るよりも、すでにある画像を使って組み合わせて表示した方が分かりやすいし、商品の訴求がしやすいんです。

あとは単価が安いもので、購入頻度が高いものや、検討期間が短いものなどは、CVR(コンバージョン率)が高く出ていますね。日用品というと少し意外かもしれませんが、特にお米や水など重たい物などはネットで購入するユーザーが増えていて、リターゲティングとしても効果が出ています。

なお、自動化についてはクリエーティブだけでなく、ターゲットユーザーの設定に対しても使われていますが、自動化に頼り過ぎると危険なこともあります。

広告効果は最大。しかしその設定をやめた理由

──自動化の危険性とは具体的にどんなことですか?

伊勢田:広告媒体として、特にGoogleはターゲティングの最適化が進んでいて、コンバージョンしやすいように出稿の設定ができるんです。そうすると、広告の表示がリピートしやすい人に集中してしまい、すでに顧客化している人ばかりに偏ってしまうことがあります。

クライアントの事業成長という視点では、1~2回買っただけのお客さまに定着してもらう必要がありますが、自動でターゲティングしていると、こうしたお客さまにメッセージが届かなくなってしまう。広告効果として高い数値が出ていても、分析してみると、新しい顧客の定着には結び付かないケースもあります。

ですから、まだ定着していないユーザーには、自動化ではない手法を使ってメッセージを届けていく必要があるんです。

ネクステッジ電通の伊勢田健介さん
広告効果として高い数値が出ていても、新しい顧客の定着には結び付かないケースもあります。

──固定化していないターゲットに向けての広告配信とは、どのような手法でしょうか。

齋藤:自動最適機能の設定を細かく使い分けることもありますし、手動で初回行動、2回目の行動をうながすクリエーティブを作ってリーチさせることもあります。

──どのような頻度で、効果測定と見直しを行うのですか?

齋藤:広告の見直し頻度は、早いところでは1週間、隔週で分析レポートを出すこともあります。一方で顧客の定着などの分析は、月、四半期などの少し長いスパンで分析しています。

──後半は、クライアントのニーズと、それに対する手法について聞いていきます。

後編へ続く