新しい東北に向けて #02

被災地に芽吹く、明日への動き(後編)

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    新しい東北に向けて
東日本大震災から5年。さまざまな課題に向き合う被災地では、今も復興に向けた取り組みや模索が続いている。被災地では多様な分野で、新たな動きも芽生えてきた。その勢いに弾みをつけ、真の復興を目指すため、今こそ被災地と共に〝未来をつくる”姿勢が求められている。数多く生まれている新たな動きの中から一部を2回に分けて紹介する。

 

ふくしまプライド。

安心・安全でおいしい
福島の誇りが詰まった農産物を発信

原発事故が発生した福島県では、根強く残る風評が、現在も農林水産業をはじめ、観光業、商工業などあらゆる方面に大きな影響を及ぼしている。農産物については、農地の除染や米の全量全袋検査など検査体制が強化されているが、市場価格や販路は震災前の水準に回復していない。
このような状況を打破しようと福島県はさまざまな施策を通じて野菜や果物、米など農作物の安心・安全、おいしさを全国へ発信している。2012年からは TOKIOが出演するテレビCMやポスターなど、安全性やおいしさを訴求する広告を展開。また15年からは生産者の思いやこだわりにも着目し、「ふくしまプライド。」をキャッチフレーズに掲げ、キャンペーンを実施している。これには「たくさんの手間とたっぷりの愛情を注いで育てた、おいしくて安心・安全な 食材一つ一つに福島の誇りが詰まっている」という思いが込められている。ウェブサイト「ふくしまプライド便。」を通じて福島県産の旬の食材や加工品を購入 することもできる。

桃生産者の鈴木家の皆さん(ふくしまプライド。ウェブサイトfukushima-pride.com/ テレビCM&WEBムービーから)

福島県の農産物流通課主任主査・遠藤崇寛氏は「皆さまに応援を継続してもらうためには、理解し、共感してもらうことが大切。人 の心に訴える力がある、このフレーズを通して、品質の高さや生産者の思いを届けていきたい。特に企業の方々にはこれからも福島に関心を持ち、その魅力に触 れる機会を少しでも多くつくっていただければ」と期待を寄せた。

 

「あすびとトマト」

先進的菜園で農業経営者を育成
福島県南相馬市

福島県の南相馬トマト菜園が初出荷を迎える。同菜園は、ヨークベニマル、カゴメ、電通など出資の南相馬復興アグリが運営する養液栽培の最新式トマト菜園だ。 収穫されたトマトはカゴメを通じて出荷され、南東北・北関東を拠点とするスーパーのヨークベニマルではプライベートブランド「あすびとトマト」として、ま た他の地域では「ラウンドトマト」の名で、この3月に店頭に並ぶ予定だ。あすびとトマトというブランド名は未来の福島の農業を担う人材への期待を込めて命 名された。面積1.5㌶の温室で約2万8000株のトマトが栽培されている。この大トマト菜園は、国の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を 受けて建設された。

3月、赤く熟したトマトを初めて収穫。年間の出荷量は、震災前の同市生産量の半分に相当する660㌧を目指している。

社長の半谷栄寿氏は「最大の目的は農業経営者の育成。農業への愛情に加え、マーケティングやブランディング、キャッシュフロー も視野に入れて経営できる人材が農業を復興し、さらには成長産業へとつなげていく」と語る。地元を中心に正社員5人、パートタイム社員50人を雇用し、雇 用創出の機会も提供している。
「大震災から5年、風化が懸念されているが、産業の本当の復興はこれからだ。地域には実績や力のあるリーダーがいる。自分たちだけでは難しいが企業と組むことで、新しい価値を生む可能性が広がる。ビジネスを通じた企業の役割と価値創造はますます必要となっている」と 訴えた。

菜園でたわわに実っているトマト

 

「カケアガレ!日本」
「防災・減災スタンプラリー」

産学協同で取り組むプロジェクト

「カケアガレ!日本」は、震災の経験や教訓の継承と、避難行動の習慣化を目的に2012年9月に宮城県岩沼市で初めて行われた。東北大災害科学国際研究所と河 北新報社、電通グルーブで構成する企画委員会を中心に、自治体や地域NPO団体、メディアなどが連携。「津波避難訓練+ワークショップ」を基本スキーム に、地域特性に応じたプログラムが国内外で展開され、国連防災世界会議でも紹介された。

高速道路路側帯の避難階段を避難場所に設定した宮城県岩沼市での「カケアガレ!日本」2012年

また、東北大災害科学国際研究所と学際科学フロンティア研 究所、シヤチハタは「防災・減災スタンプラリー」を共同開発した。設問に対し答えのスタンプを押しながら進み、全てそろえるとゴールの避難所に到着する仕 組み。設問には正解はなく、自分の回答傾向や友人との比較を通し、防災・減災を楽しく学べるのが特徴だ。スタンプラリーの台紙は「紙」「バッグ」の2種類 があり、バッグは日常使いすることもできる他、災害時には防寒・防塵(ぼうじん)フード、腕をけがしたときにはスリングにもなる。

訓練参加後も日常的に使うことで防火意識を高めてもらうことを狙っている。

東北大災害科学 国際研究所所長の今村文彦氏は、今後について「企業にも参画いただき地域や学校と連携し、災害から安全を確保するユニークな取り組みとして展開していきた い。楽しく学べるという発想を取り込み、新しいコンテンツや技術開発にも期待ができる」と意欲を見せている。(了)                                         

 

プロフィール

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    新しい東北に向けて

    東日本大震災から5年。さまざまな課題に向き合う被災地では、今も復興に向けた取り組みや模索が続いている。企業も発生直後から多様な支援を続けてきた。そして支援の形や方法は各地の事情や復興過程によって変わる。企業は今後、どう向き合い、関与し、支援していけるのか。そこで取り組む人々の声からヒントを探った。

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