新明解「戦略PR」 #33

CSRなんて意味ねーんじゃね!?(ウソ)

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

ハロー、エブリワン! さて、そろそろエイプリルフールのタイミングじゃないかな? 今年はみんなどんな大ウソをつこうと計画しているのか、とても楽しみにしています。明るく笑える大ウソを一発かましてほしいなぁ。もちろん私は今年こそ、ウソをつかない毎日を過ごせるよう宣言するつもりです(既にウソ♪)。

「ソーシャルグッド」ってなんですか?

昨今、「ソーシャルグッド」な取り組みをしたいという相談がクライアントから寄せられるんですよね。で、みなさんにとっての「ソーシャルグッド」ってなんすか? みたいなこと聞くと、「そうねー、ほらあれでしょ。一昔前にあったCSR的な? 最近だとCSVとか?」っていう回答が返ってくるわけですね。いやー、結局この辺って曖昧なままなんですよね。そして「ソーシャルグッド」とか、新しい言葉が出るとなんか気になって使ってみたくなる、みたいなのが繰り返されている気がします。

そこで非常に私的な捉え方かもしれませんが、私なりの整理をしてみたいなと。いや、ほんとかなり勝手な解釈なんで、この辺りに一家言ある!みたいな方はムカツクかもしれないんで、読み飛ばして欲しいなぁ、できれば。ってな、弱気な姿勢から今回もイッテミヨ!!

CSRもCSVも、根本は全部一緒なんだよ

一応CSRの定義をば、みなさんお使いのWikipediaから抜いてみましょう。ま、ここは時間短縮ということでご容赦のほど。

“企業の社会的責任(きぎょうのしゃかいてきせきにん、英語:corporate social responsibility、略称:CSR)とは、企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。”

企業の社会的責任 ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典

 

概要部分のみ引用。だって、先を読めば読むほど混乱しちゃうんだもん。リンダ困っちゃう…ってことで。まー、要はビジネスやってると、消費者や投資家やら、社会全体にポジティブもネガティブも含めて影響及ぼしてんだからさ、きちんと責任もってよね! ってなことなんじゃないかなと。

ただこれも、人によって理解の仕方がまちまちなわけですよね。「みんな違ってみんないい」って誰かが言ってたけど、例えばある人は「株主のことを考えればビジネスの存続が重要であって、企業活動をいかに永続的に続けるかを考えてコーポレートガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)みたいなところに注力すべき」と言うし、また違う人は「企業活動が永続的に続けられるよう現在の課題を解決すること、すなわち未来への投資がCSRだ!」と言う人もいるんですよね。

ちなみに日本では「社会貢献活動」と捉えている人が一番多いのではないでしょうか。「金儲けてるんだからさ、企業市民として少しは社会に還元とかすべきじゃね?」みたいな言いっぷり。だって「企業の社会的責任」だからね。「責任とってもらうわよ!」みたいな強い視線が多数の人からグサグサくる感じに、ついつい「いや道路の掃除とかもしますし、献血とかもしますから、なんとか勘弁してもらえませんかねー。いやホント申し訳ないと思ってますんで…」ってなっちゃうんですよね、企業の方も。あ、そこの方、経験おありですね? ため息がすっげー深いもん。

企業活動ってそんなに悪いことなの?

そりゃー、私だって、産業発展のためだからって、むっちゃ環境に悪いことしてて知らんぷりされたら「そりゃーないんじゃないの?」って腹も立ちますわね。

かわいがってる盆栽が枯れたり、散歩途中の飼い犬(ラブリー・チワワです)がセキをしたら、「もしかして!!」と犯人捜しをしたくもなろうってものです。でもね、そもそも企業が経済活動を継続していけるのは、そこから生み出される何かが社会に必要とされているから、生活者の役に立っているからなんですよ(基本的には、ですよ。例外もあります)。となるとですよ、慈善事業的なことを無理やりやったりするのって、やっぱ筋が違いませんか? と思うわけです。

もちろんそういう人は居ていいし、ありがたいことなんですが、みんながみんなそういう方向性だけでやらなくてもいいのかな、と。いやね、自分ところの経済活動で発生したゴミをきちんと環境被害に結びつかないよう処理するとかは必要なことだと思うんです。それは当たり前の責任ですよね。もう一歩踏み込みたい。

例えば、そのゴミが発生しないような技術を開発してはどうでしょう? さらにその技術が自社のみならず社会において開放され、誰でも使えるようになったらそれはありがたいですよね。もしくは、そのゴミ自体が何かに役立つ材料に生まれ変わるとしたらどうですか? 資源の副次的活用ということで、これもとても社会において有用なものとなるはず。すなわち自社の事業の延長線上で、社会に対する新たな価値を生み出していくにはどうすればいいか、を考えればいいのではないでしょうか。それはモノでもサービスでも、あるいは知識でもいいはず。それはどの企業でもチャレンジできるはずなんです。

CSVは、社会課題に自ら寄り添う姿勢でようやく見つかる

私の尊敬するマイケル・E・ポーター先生が唱えるCSVですが、まさにそういうことなんだと思います。CSV=Create Shared Valueとは、一緒に共有できる価値をつくっていきまっしょい! ってことですよね。双方にとって価値あるものをつくっていければ、お互いに利益相反が起こらず、永続的に良い関係性を維持できるはずです。ええ、私も常にそういう生き方をしてきましたから(ウソ)、敵はどこにもいませんし(ウソ)、いまだに生き永らえることができているのです(微妙)。そして、この社会や生活者が共感してくれることこそが「ソーシャルグッド」と呼ばれるものだと思うのです。

「ソーシャルグッド」の視点は普遍的なものではありますが、人それぞれの見方がありますし、また常に「社会に良いことってなんなのか」についての見方は揺れ動いているものだと思います。つまり人々が「良いこと」と思うことはたくさんありますが、人によって重きを置くところが違うだろうし、またそれは時代背景、社会環境によっても変化していくはず。

ですので、常に社会の共感を得る接点を作っていくには、今度は企業側がその変化に自社の活動をアジャストしていく必要が発生するのです。「うちはこれがウリなんで、これ一本でいくよ!」みたいな頑固一徹なのもいいですが、より広い層に共感され、受け入れてもらうには世の中に寄り添っていくという姿勢も大切ですよね。イマイマの社会課題として生活者の関心が集中しているのはどこなのか? そして、そこに対して自社が寄与できそうなことはなんなのか? そのマッチングを常に考えておくことがこれからは必要になってくるのだと思います。

これからの情報発信は、相手に寄り添うファクト抽出から

そして、この姿勢は今後の情報発信のやり方にも大きく関わってくると思います。今、私は戦略PRの各種プランニングの中で、「企業にあるファクトをいかに生活者にとって関心のあるものに見せていくか」という情報加工に工夫をしているわけですが、一方で「今の生活者の関心に合わせて、いかにファクトを組み立てていくか」という逆の情報発信手法も大切だなと思うわけです。自分の都合で押しつけるばかりではなく、いかに相手に寄り添っていけるか、そんな視点や姿勢が重要な時代にきているのではないでしょうか。まさに、これまでの情報発信の仕方を根本から検討し直すステージと言えるでしょう。

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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