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百田尚樹氏「面白さには、どの世代も惹きつける力が必ずある」第2回

2013/11/20

面白さは、広い世代に伝わってこそ本物

物語として伝えようとするとき、その「伝える力」が作家には問われます。「伝える」ために、僕が何よりも大事にしているのは、とにかく面白くなければならないということです。テーマが重要だとよくいわれますが、僕からすれば、それ5番目、6番目あたりの問題です。反戦だけをテーマにするなら、何も500枚も600枚も書かなくてもいい。愛が大切だと言いたいなら、その一言を書けばいいだけです。

小説に向き合うというのは、時間を忘れるほどに読む作業です。感動も大事だし、読者にいろいろ考えさせることも大事でしょうが、その出発点になければならないのが面白さだと思っています。


では、面白さとは何か。それは、一言ではなかなか言えません。10人いれば、10通りの面白さがありますからね。

ただ、一つだけ言わせてもらえば、限られた世代にしか伝わらない「面白い」は、僕はそれを面白いものとは思いません。10代の少年少女も、50代のおっちゃん、おばちゃんも、70代のおじいちゃん、おばあちゃんも面白がれるもの、それが面白い作品だと確信しています。だから、先ほど言った本の売れ方は、僕にとってはとてもうれしいことでした。

テレビの場合は、視聴率がありますから、面白さについては、おのずと広く構えます。できるだけ多くの人が面白いと思うほうに軸足を置きます。それに対して、小説は想定する読者層がかなり狭い。なぜか、それが許されてきた。2万部、3万部売れれば御の字というところでしょう。割合でいったら、まぁ、5千人に1人、「面白い」と言ってくれたらそれでいいという世界です。

それは、とてももったいない話だと思います。なぜ、せめて千人に1人は面白がらせようと思わないのか。不思議でなりません。せっかく、1冊千何百円出して買ってくれるわけですから、もっと広く構えてもいいのではないでしょうか。ただし、その分、書く側は緊張もするし苦労もします。それは当然の話です。

普遍的なテーマを追い掛けようなんて大それたことは考えませんが、書くからにはとことん面白いものを書き続けたいと思っています。この先、小説は衰退するとしても、私は自分の信じるものを書き続ける。もし、みんながみんな「もう小説は読まない」という時がきたら、そのときは、潔く書くのをやめるだけの話です。(談)

< 完 >