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【調べてみた】テレビとスマホって本当に相性いいの?

2016/04/01

スマホ時代に効果的なテレビCMとは?

テレビCMと検索は、マーケティングに携わられている方からすると、古いテーマかもしれません。テレビCMを検索行動につなげようとする試みは、10年以上前から行われてきました。

今回、電通はテレビCMが検索に与える影響を Google 協力のもと、検索データを用いて定量的に調査しました。出稿量と検索数の単なる相関関係ではなく、放送された作品それぞれの影響を検索データから検証してみました。

本稿ではその概要を紹介しつつ、とりわけ近年重要になりつつあるスマートフォン向け施策を見据えた際に、どのようなテレビCMが効果的なのかを考察していきます。

調査方法

調査対象は、2014年12月から2015年5月までの半年間に放送された5商材23キャンペーンのテレビCMです。対象とした商材は、飲料・自動車・化粧品・旅行代理店・スマートフォンアプリの5つです。

調査で具体的に利用したデータは、テレビCMの出稿データ(東京・大阪・名古屋それぞれのスポットとタイム)と、Googleの検索データ(スマートフォン・タブレット含む)です。

調査では、まず前者のデータを用いてテレビCMが放送された全時間帯を分単位で特定し、その上で後者のデータを用いてテレビCM放送前5分間と放送後5分間を比較。Google上でどれだけ指定したキーワードの検索数が増加するかを検証しました。今回は、キャンペーン対象ブランドが所属する業界名・企業名・商品名・起用タレント名(キャラクター含む)・その他の広告表現に関するキーワードを集計対象としました。

整理すると、調査のイメージは下記の通りです。

テレビCM放送後に検索数が最大20%増加

最初に、調査結果の概要を説明します。全23キャンペーンを平均すると、テレビCMの放送前後で指定検索キーワードは9.2%上昇していました(上図②)。個別のキャンペーンごとに見ると、多いもので20%以上の上昇が見られました。業界ごとの傾向以上に、個別のキャンペーンによって差が大きく出る結果となりました。

ここからは主に①検索デバイスと、②キーワードのジャンルの2つに焦点を当てて分析を行います。

「テレビで見たら、スマホですぐ検索」

今回の調査における最も興味深い結果のひとつが、デバイス別に見た検索増分です。平均すると、スマートフォンからの検索が87.8%、デスクトップが6.5%、タブレット5.6%という結果で、検索増分のほとんどはスマートフォンによることが明らかになりました。

今回は対象とした検索行動の時間幅を5分間に限ったため、スマートフォンによる検索の比重が大きく出やすい点は留意すべきです。ただそれでも、この結果は現在のメディア環境の特徴を表していると考えられます。特に若い世代を中心に、テレビと携帯端末を一緒に見るマルチスクリーン視聴が広がっているといわれますが、この結果もそういった視聴形態を反映しています。

テレビCM放送後はスマートフォンで検索されやすくなることを念頭に置きスマートフォン向けサイトの設計はもちろん、スマートフォン向け検索連動型広告や、検索連動広告内のディープリンクを活用した関連アプリへの誘導などの受け皿を用意しておくことが効果的といえるでしょう。

CMにはタレントを起用した方がいい?

次に、検索キーワードごとの結果を見てみましょう。作品ごとに訴求している内容が異なるため一概に比較することは難しいのですが、ここではまずA:タレント起用あり、B:タレント起用なしの2種類に分けてみていきます。23キャンペーン中、Aに該当するキャンペーンは16、Bに該当するキャンペーンが7つありました。検索増分のうち、冒頭に整理した5つの検索キーワードのジャンル別の割合は、以下の通りです。なお、このジャンルは、いずれもそのジャンルに含まれるキーワードが単一で検索された場合を指します。複数のキーワードを組み合わせて検索された場合は、「複数キーワード」に該当します。

Aの場合、商品名とタレント名がそれぞれ3割以上を占める結果となりました。一方、Bの場合は、企業名が半分以上を占め、次に商品名が多い結果となりました。なお、いずれの場合でも、単一キーワードが9割以上を占め、テレビCM放送後の検索増分の中で、複数のキーワードを組み合わせて検索される割合は非常に少ないことも分かりました。

では、タレント起用の有無で、そもそもの検索増分は変わるのでしょうか? ここではA:タレント起用ありを、さらにA1:タレント新規起用とA2:起用タレント変更なしに分けて分析しました。A1に該当するキャンペーンは16中7つ、A2は9つです。

検索キーワード全体の増加分は、新規タレント起用の場合は平均11.5%、起用タレント変更なしの場合は8.1%と差が生まれています。タレント起用なしの場合は、平均8.4%と、起用タレント変更なしの場合よりも増分は大きくなりますが、それでも新規タレント起用の場合に比べ低くなります。タレント新規起用時には、検索キーワードに占めるタレント名のシェアが特に増加し、これが全体の検索増分を押し上げていると考えられます。このことから、新たにタレントを起用した場合、タレント名をフックに検索が増えていることが分かります。テレビCMでタレントを新規起用した場合には、事前にタレントと作品をひも付けるようなウェブコンテンツを作成し、検索からの導線を準備しておく施策が有効といえるでしょう。もちろん一方で、タレントを起用することで、企業名・ブランド名といった他の検索キーワードで検索される割合は相対的に低下します。キャンペーンの目的に沿った起用が重要です。

ジングル=企業の顔?

最後に、企業ジングル(CMの冒頭もしくは末尾に、企業ロゴと音声を掲出)に着目してみます。調査対象の23キャンペーン中、企業名ジングルがある10キャンペーンと、ジングルがない13キャンペーンを比較したグラフが以下です。

テレビCM放送前後で、企業名の平均増加分は2.7%でした。企業ジングルがある場合、増加分は平均3.1%になり、企業ジングルなしの場合に比べ検索数が増えています。ただし、今回の調査ではキーワード全体の増加率は、企業ジングルなしの方が高くなりました。

企業名(企業ロゴやサウンドロゴ)をテレビCM内で強調することで、企業名の検索増加が期待できることが明らかになりました。コーポレートブランディングも見据えた際には、企業ジングルを入れておくことがよいと考えられます。

まとめ

ウェブ施策を見据えたテレビCMに関して、今回の調査で得られた知見をまとめると下記になります。

①テレビCM放送時には、特にスマートフォン上の検索導線に引っかかるような準備が効果的。
②タレントを新規に起用したテレビCMでは、タレントと作品をひも付けるようなウェブコンテンツを事前に準備しておく。
③企業ジングルは、企業名の検索増加が期待できる。

今後は、CM放送時間帯を極力そろえた精緻な比較分析や、調査対象となる放送前後の時間をより長くすることで、デバイスをまたいだ検索行動や、業種ごとの購買行動の違いも分析できると考えています。

今回、検索データを抽出した Google の Quantitative Marketing Manager である レモ ストルニ氏は、以下のようにコメントしています。

「今回、テレビCM が、企業・タレント・商品などについて『知りたい!』と思うきっかけになり、検索行動、とりわけモバイルでの検索がその受け皿となっていることが、検索キーワードの増加という形で確認されました。同様の傾向は他の国でも確認されており、 モバイルに注力するGoogleにとっても心強い結果だと思っています。このデータが、テレビCMを多用する企業にとってモバイル対応を後押しするきっかけとなれば幸いです」

テレビCMで検索を促す取り組みは、購買行動プロセスモデルのAISASにならって言えば、AI(注意・関心)からSA(検索・行動)をつなげようとする試みです。マス広告とスマートフォン向け施策を組み合わせることで、購買行動プロセスに沿った、より効果の高いコミュニケーションを実現できると考えています。