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コンテンツマーケティングの現場からNo.30

コンテンツマーケティングと広告は、似て非なるもの

2016/04/27

先日、私たちのチームが関わっている仕事で、「新年度に始めたいと思うこと」をユーザーから募集したところ、1週間ほどで1万2000人近い応募がありました。
という話を聞いたとき、皆さまはどう感じられるでしょう?

「たった1万2000人?」でしょうか。
「え? 1万2000人も?」と感じられるでしょうか。

量がとれれば安心?

マス広告出身の人間は、微妙な数字を提示されるとついそれで大丈夫なのだろうか、と思いがちです。マスキャンペーンのように10万、100万単位の数字を獲得することはさすがに難しいと分かっていても、なんとなく不安になってしまい、普通はどれくらい来るんだとか、競合他社でやるとどれくらいなのだ、と比較対象になる数字を求めたくなります。
大事なのは、施策の目的に照らし合わせて数字を見ること。

「より多くの人に応えてもらうための施策」だったのか。いっぺんに多くの人を取り込むのではなく、少しずつ確実に足元を固めていく「自社にロイヤルティーを感じてくれる人を徐々にでも確実に増やしていくための施策」だったのか。

前者の場合は広告など比較するベンチマークが既にありますが、後者の場合は業種や企業によってもまちまちです。そのため、一度で判断するのではなく何度か施策を実施することで、自分たちのユーザーがどれくらい反応してくるのか、ノーム値を持つことが重要になります。

数字が増えることは安心だし、うれしいことではあるけれど、コンテンツマーケティングの仕事は広告のように、期間限定、終わりがあるものではありません。だから例えばある瞬間に「会員登録数が100万を超えた」といううれしい結果を得ることはできても、すぐその先で「ではその100万人をどう活用するのか。そもそも会員のうち何人が自分たちのビジネスに貢献してくれているのか」といった課題が浮上してきます。

一時的な数字の評価では安心できない、といっても社内を納得させるための数字とロジックは必要になってくる。そこが、この領域の難しいところでもあります。

ロイヤルティー!?

コンテンツマーケティングの目的の一つに、エンゲージメントを高める、ロイヤルティー向上をめざす、があります。ここを目標にしていく際のコンテンツ戦略は、広告戦略とは違うものと考えてやっていく方が、迷わずに済むように思います。

つまり、マスキャンペーンのように量の確保を目指すこととも違う、デジタル広告のように行動データだけでカウントすることとも違う、ということです。

ロイヤルティーは意識の問題が入ってくるのですが、好意度の高さと行動の頻度は必ずしも一致しないところがあります。そのブランドがとても好きだけど、忙しいからそんなに頻繁にサイトチェックしていられないとか、そのことを他人に広く伝えたりする趣味はないとか、そういう人たちも実際世の中には存在します。ロイヤルティーが高いから、自分たちが望むような行動をしてくれているとは限らないのです。

しかも、商品によっては短期的な結果につながりにくいケースもあり、分析は複雑になります。サイトの解析やアスキングの調査だけでは捕捉しきれない部分をどう捉えていくのか。それ以上に、出てきているファクトをどう組み合わせてどう読み解くのか。文字通り、分析の力が問われるところであり、広告のようなシンプルなストーリーが成り立ちにくい部分があります。

広告の代わりか。マーケティングのためか。

コンテンツを発信する、みんなに見てもらう、という部分は広告と同じですし、コンテンツマーケティングが広告の役割を担う部分もあるので、この二つはしばしば混同されがちです。

広告の代わりにコンテンツマーケティングをやると考えた場合、目的は「できるだけ多くの人に知らせる」ということになっていきます。

一方で、コンテンツマーケティングは、究極的にはお客さま一人一人に、それぞれにとって価値のある情報を届けて、何らかの行動の喚起を目指すものです。そのためには本当は量よりも質、つまり一人一人の状況を見ていかなければなりませんし、その質の時間軸による変動も見ていかなければなりません。

コンテンツマーケティングを、広告の代わりとしてやるのか。もっと広く捉えて、マーケティングに貢献することをめざすのか。始めるときに一度整理してみるとよいのかもしれません。それによって、費用や労力のかけ方も変わっていくのだと思います。