電通を創った男たち #11

電通電波ビジネス黎明期の牽引者

木原通雄(10)

  • Okada
    岡田 芳郎

ジャーナリスト経験を生かし、巧みなリードで司会

 

「電通週報」に掲載された座談会

昭和29(1954)年あたりから電通は、「電通週報」で商業放送の啓発のため関係者を集めて座談会を行うようになった。電通側の代表として司会をつとめるのはいつも木原通雄だった。

昭和29年3月26日、4月2日の上下2回にわたり、「電通週報」は「NHKと商放の在り方」というタイトルで座談会を行った。出席者は、NHKラジオ局長・春日由三、NHKテレビジョン局長・吉川義雄、ラジオ九州専務取締役・金子秀三、日本文化放送常務理事・利光洋一、ラジオ東京業務局長・今道潤三、日本テレビ放送網編成局長・久住悌三の6氏、司会は電通ラジオテレビ局次長・木原通雄である。

ページの冒頭にこの座談会の骨子が要約されている。「NHKと商業放送の在り方は、戦後の放送界にとって最大の問題として議論されている。とくに放送法の改正問題が国会の論議となっている今日、あらためて各方面の注目を浴びている。そこで本紙では放送の担当者六氏を招いて、NHKと商放との相異、協調点を語ってもらった。この日の座談会の結論は、NHKはあくまで公共放送に徹し、商放は健全なコマーシャリズムに立脚、この国の文化的、経済的発展に寄与すべきものだと意見の一致を見、今後の協力を相互に約した。」とある。

また4月2日号の座談会記事(下)の前に「前号のあらまし」が載っている。「商放は健全なコマーシャリズムに徹して全放送時間を売るのが理想的である、いわゆる『ウエル・バランスド・プロ』を商放に求めるのは妥当でない(今道氏)、NHKは占領下の影響である聴取率尊重主義を是正して、商放との競合観念を捨て、教養番組に重点をおいてゆくべきで、それによってNHKと商放の二本建の制度を生かすべきである(春日氏)、という点で意見が一致した。聴取者の最近の傾向として、選択聴取の傾向が強く、また聴取者の趣向についても、たとえば勤労層の中からクラシック音楽への関心が高まっているなど、従来の『低俗』の観念にとらわれて判断してはならない(金子氏)。また現在の放送設備の貧困が話題となったが、日本の商放は大資本の支持がないので経営は苦しく、老朽機械の更新も思うようにならない。しかし一面、資本の制肘を受けない利点もある(金子氏、今道氏)。NHKもこの施設の更新難は同様だと(春日氏)、共通の悩みについて意見が交換された。」

そして(下)の見出しだけを拾ってみると、「聴取料は流用出来ぬ NHKテレビに資金難」「商放にも同じ悩み」「中継ものが福の神 意外なほどの好調 日本テレビ半年の歩み」「一緒にセット普及を」「商放NHKはよい協力者 世間は誤解している」「共通の広場に立って」となっている。木原はニュートラルな立場でNHKと商業放送の両方の現状・問題点と在り方を巧みに引き出す。ジャーナリストの経験がいかんなく発揮され、座談会をリードしている。

昭和29年11月26日、「商業放送の新段階を語る=スポンサーとステーション」と題して、稲生平八氏(森永製菓常務取締役)、今道潤三氏(ラジオ東京編成局長)、司会・木原通雄の鼎談が「電通週報」に掲載された。

記事の前に前置きがある。「商業ラジオが三年以上も経ち、全国で三十九の会社が出揃った点と、東京地区では大阪と異なりラジオ東京が殆んど独走のような形で来ていたが,ニッポン放送も開業し、文化放送と並んで五十キロステーションらしい活動をとってきた。一方、日本テレビが商業テレビとしてのたった一つの存在だったが、ラジオ東京がいよいよ確実に来年の三月にテレビを出すことになった。このような三つの意味で、商業放送全体が新しい段階を整えたと思われる。ラジオ・テレビ面で有力なスポンサーである森永製菓稲生常務にスポンサーの代表という意味で、商放の代表的な存在であるラジオ東京の今道編成局長と、ざっくばらんにお話しを願いたい」(木原電通ラジオテレビ局次長の挨拶から)

鼎談は、まずスポンサー側から急成長する放送媒体の使い方についての考え方を示すと、放送会社側からは国民のものである電波使用の在り方・使命が語られた。これまでの新聞の編集とラジオ番組の違いやプロデューサー・システムによって責任ある制作体制をつくることなどが示され、コマーシャルやカラーテレビの準備まで話は縦横にはずんだ。見出しだけをピックアップしてみる。「全国に拡がるラジオ網 来春はラジオ東京テレビ発足」「強いラジオの宣伝力 地方ネットの魅力は大きい」「編成にほしい新しい世界観」「新聞社の編集と混同しては困る」「ラジオは新聞よりも大衆的」「編成局と制作の問題」「広告は番組の一部 プロデューサー制の確立に期待」「一つのテスト・ケース」「電通プロダクションがあってもいい」「テレビで新方式 ラジオにも移す」「人が多すぎはしないか」「もっと欲しい制作費 街にプロダクションが出来る道」「生活と結ぶコマーシャルを」「素晴らしい新設備 カラーテレビも予定」

木原はアメリカ体験もふまえ、的確な問題提起によって二人から突っ込んだ話を引き出している。木原の見識、経験が読者に伝わってくる。

座談会

昭和30年1月1日号の電通週報は、「国際舞台にでる日本広告界=ICC(国際商業会議所)東京総会を前にして=」と題する座談会の記事を掲載した。出席者は、ICC日本国内委員会議長・渋沢敬三氏(国際電信電話社長)、全日本広告連盟会長・藤山愛一郎氏(日本商工会議所会頭)、電通社長・吉田秀雄氏、(司会)電通ラジオテレビ局次長・木原通雄である。

座談会記事の前に前置きがある。「今年の広告界は五月に開かれるICC総会を迎え、国際的な関心が注がれる。世界各国の一流事業家が来朝して相互の経済的繁栄策を協議するが、その重要議題として広告の向上、発展がとりあげられている。その意味でICC東京大会は日本の広告界にとって一つの画期的な飛躍をもたらすことになる。この歴史的な国際会議を前にして、ICC日本国内委員会議長渋沢敬三氏、全広連会長藤山愛一郎氏、電通社長吉田秀雄の三氏に語ってもらった。」

この日本で開かれるICC総会は「エーシアン・プロブレム、ワールド・プログレス(アジアの問題、世界の進歩)」をスローガンに、アジアの繁栄が世界にとって重要であることを謳っている。座談会の見出しは「アジアの経済復興」「重視される広告部門 アジア各国の参加を期待」「広告の倫理化を強調 日本人は消極的すぎる」「啓蒙運動が不足 報道機関の協力を待つ」「激しい誘致運動 ホテルに悩む東京」「このチャンスを活用 商店街をICC一色に」「少なすぎる予算 一人当たり約十万円」であり、アジアの問題が重視されること、広告の重要性と倫理性の強調、東京での開催に関する課題や態勢などが話し合われた。木原は司会者として財界の大物に対して率直に問いかけ、読者に分かりやすい内容にしている。

 

(写真上)「電通週報」に掲載された座談会「NHKと商放の在り方」。写真右手前が司会を務めた木原
(下)「国際舞台にでる日本広告界」と題した座談会。右から吉田秀雄、渋沢敬三、藤山愛一郎、木原通雄

(文中敬称略)

プロフィール

  • Okada
    岡田 芳郎

    1934年東京都生まれ。早大政経学部卒。56年電通入社。コーポレート・アイデンティティ室長、電通総研常任監査役などを務め、98年退職。著書に『社会と語る企業』(電通)、『観劇のバイブル』(太陽企画出版)、『日本の企画者たち~広告・メディア・コンテンツビジネスの礎を築いた人々~』(宣伝会議)など。

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